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良い子は本当に、絶対真似しないでください(神様談)

「くっ!! ら、ラゴット少尉、貴様!?」


「悪いな、アレックス少尉。お察しの通り、俺は銀河帝国パトロール艦隊所属のラゴット・デンバー少尉でありながら、宇宙海賊『人食いラゴット』でもあるのさ!」


 ラゴットはニヤニヤ笑いながら、新入りさん、『アレックス少尉』を見下している。その手にはデリンジャーピストルのような、小さな拳銃のようなものが握られている。あれがアレックス少尉を撃ったのか。銃声はしなかったから、なんらかの光線銃の類いか?


「くっ!!」


 アレックス少尉を守るため立ち上がろうとしたが、まだ上手く立てずに転んでしまう!


「おいおい、文字通り()()()()のクローンが無理すんなよ。お前は後で宇宙海賊お抱えの科学者連中に売り飛ばして、じっくりバラして調べられるんだからな!」


 ラゴットは尚も立ち上がろうとしたオレを蹴り飛ばす。


「ぐがっ!?」


 いってぇ!?

 アバラにヒビでもはいったのか、呼吸する度に激痛が……!

 見た目エルフみたいでも、軍人で尚且つ海賊なだけはある。鉄棒でぶん殴られたかのような衝撃だった。


「やめろ、ラゴット!」


 アレックス少尉はラゴットがオレを蹴り飛ばした隙をついてラゴットに飛びかかったが……


「おっと!!」


「がぁっ!?」


 ラゴットは瞬時に身を翻すと反対側から襲いかかろうとしたアレックス少尉を銃で撃ち抜いた。やはり光線銃の類いなのか、赤い光はアレックス少尉の脇腹に辺り、少尉はその場に崩れ落ちる。


「おーおー、危ねぇ危ねぇ。やっぱり爬虫人類(レプタリアン)ってのは頑丈だな。トカゲ頭なだけに、痛みに鈍感なのか?」


「あっ……いっ……!」


「腹にレーザー喰らっちまったら、もう助かるまいよ。……どれ、どうせならくたばる前に、楽しませてもらおうか。前々から狙ってたんだよ、お前のことは!」


 下卑た笑いを浮かべながら、ラゴットはゆっくりアレックス少尉に近寄っていく。その為に、オレに()()()()()()


 ここだ! ここでラゴットを止めないと、オレもアレックス少尉も終わりだ!

 ラゴットはアレックス少尉を撃ったときとは違い、明らかに油断している。アレックス少尉とは違い、まともに立てもしないオレを驚異とは見なしていないのだ。それも当然だ。オレだって逆の立場ならそう思う。だからこそ、これはオレにとって最大の好機だ。


 アバラの痛みは死ぬ気で耐える。

 足はまだ上手く立てないが、地面を蹴って飛びかかることはなんとかやって見せる。

 軍人であるラゴットと、産まれたて子鹿状態のオレとの身体能力の差は、先程目で行った、仮称『強化魔術』で補う。試してみたら、体が動くようになってから、意識すれば謎の熱量を、体中に巡らせることが出来ると、感じられるようになった。多分これが魔力的な何かであると思いたい。これを先ずは足に巡らせ、スタートダッシュで飛びかかる……!


 集中しろ、集中しろ、集中、集中……

 足に、熱を、怒りを溜めて、陸上短距離のスタートダッシュを、いや、草原最速の猛獣、チーターをイメージして……!


「……ラゴットーーー!!」


「っ!? なっ!?」


 ラゴットは油断し、驚愕しながらもこちらを振り返り、咄嗟にレーザー銃を放つが、今度はオレに当たらず、オレの顔のすぐ横を光が通りすぎる。ラゴットはこちらを振り返ったことにより、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()!

 よし、作戦通りだ!


「ってめぇ!? 産まれたてのクローン風情に、どうしてこんな力が!?」


 押し倒したと同時に、強化魔術の強化を、腕と()に変えて、オレはラゴットの胸ぐらを掴んだ。

 

 普通に考えれば、鍛えた軍人であるラゴットとオレでは身体能力に、そして実戦経験に大きな差がある。そんなオレがいくらラゴットを殴ったところで、たかが知れている。数発殴られた所でラゴットはすぐにオレを振り払い、逆にオレを滅多打ちにするだろう。先程感じた、あの蹴りの威力を思えば、そうなったらオレはラゴットの筋力から繰り出される暴力に為す術もなく殺されるだろう……。


 それがどうした!

 軍人だか海賊だか知らねぇが、ナメんじゃねぇ!!


 こちとら、伊達に中高とそれなりの場数を踏んでるわけじゃねぇんだ!

 相手が自分よりでかく、力が強いからって喧嘩が強いってわけじゃねぇ!

 ()()()()()()()()()()()()!!


 胸ぐらつかんで、脇を閉めて……

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()!!


「うらぁっ!!」


「がっ!? ごっ、ごぁっ!? やっ、くぉっ!? やめっ!? がはっ!?」


 ラゴットが何か言おうとしているが、オレは無視してひたすら()()()を繰り返した。

 人間の鼻付近は骨や筋肉が薄く、どんなに鍛えても絶対に鍛えられない人間の急所の塊である。

 そんなところに、ボーリングの玉とほぼ同じ重さを誇る、人間の頭の最も固い額から頭頂部を連続で当てればどうなるか。その答えがこれだ。


「…………」


 鼻が凹み、血の泡を口から垂れ流しながら、宇宙海賊『人食いラゴット』はピクリともしなくなった。

 ……殺っちゃったか?

 ……一応脈はある。

 ……まぁ、いいか!


 悪漢に御仏の情けは無用!


 海賊の命より、今はアレックス少尉が心配だ。一応ラゴットのそばに落ちてたレーザー銃を拾い、オレはアレックス少尉に近寄った。

主人公補足説明

 冒頭の神とのやりとりからわかる通り、基本的にはオタクですが、中学生時代にその趣味ゆえにイジメのターゲットに。

 引きこもっていたところ、少しヤンチャな祖父に引きずり出され、喧嘩の極意を受け、イジメ主犯たちを返り討ちに。

 しかし、オタクにやられては面子がたたんと、それから高校まで様々な不良に狙われ、不本意ながら喧嘩に明け暮れることに。そんな彼を慕い、何人かの喧嘩友達も出来、それなりに楽しい高校生活でしたが、周りの女子の評価は『オタクでキレれば怖い人』という評価に……。

 不良はモテる? 都市伝説ですよ?

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