わたしの永遠の故郷をさがして 第三部 第一章 第九十八回
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ヘレナリアは、こう言い始めた。
「あなたがたの指導者の方々とは、あなたがたの一週間ごとに、会合を持っています。そこには、お二人はお招きしておりませんが、そこはお許しください。指導者のみなさんの、御立場とかプライドとかもありますからね。」
「はい。わたしたちは、小さな食堂の運営者でしかありませんから。」
ヘレナリアは、にっこりとほほ笑んだ。
「まあ、そう言われますとね、ちょっと恥ずかしいのですのよ。この世界がいったい何なのか、について、わたくしは、ほとんど皆様に有益な情報はお知らせしておりませんでした。言いかえれば、有益な情報などは、ない、と言うべきなのかもしれません。あなた方にとって、有益なのは、ここがどこで、どうやったら元の世界に帰れるのか、それとも帰れないのかですよね。」
「そうですが、その前に、なぜここに来たのか、が、すでにもうわかっておりません。」
「そうですね。おふたりには、大きな役割があります。」
「役割ですか?」
「そうです。それは、女王様によって選ばれた、と言うべきでしょう。」
「それは、火星の女王様ですか?」
「はい。そうです。もちろん、あたくし自身は、お会いしたこともありません。これは、ここではじめて言うのですが、あたくしは、女王さまの、回収されていない、遥かに新しい分身のひとつです。」
「そう言われても、さっぱりですけれどもなあ。遥かに新しいとは、なんでしょう?」
おやじさんが、再度尋ねた。
「わからなくて当然なのです。あなたがたの女王様でさえも、もともとは、あたくしのことなどは、知らない事だったのですもの。しかし、未来の女王様から知らされることによって、あたくしの存在を知ることとなりました。」
「余計、わけが分からないです。」
こんどは、のりちゃんがそう言った。
「ええ、まあここは、我慢して聞いてくださいな。この世界は、はるか未来の女王様によって、過去のあなた方や、多くの金星人の方たちの為に作られました。直接的には、金星人の皆様の為だったのですが、そこには、どうしてもお二人が必要だったのです。」
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「意外と、あほらしい提案だな。」
ブル博士がいつものようにいやみを言った。
「ようするに、その少年に、我々の大切な未来を託せ、ということかな?」
もちろん、これがいやみの固まりであることは、誰しも理解するところだ。
しかし、ヘレナ=ビュリアの返答は単純だった。
「そうですわ。」
「ふん! わずらわしい。」
警部2051がそこに来ていたことを、誰も気づいていなかったのは、まあ、無理もなかった。
彼は、直系1ミリほどのゴミのように固まっていたのだ。
しかし、そこで急激に巨大化し、カタクリニウク議長と同じくらいの躯体になった。
「ぼくの知る限り、それはよくある方策ですな。あなた方の場合、誰がトップになっても、無論、争いの種になる。しかし、パル君にはそうした要素が限りなく少ない。もちろん、周囲の人たちには、補佐が求められるが、そのために、より団結する結果が得られる可能性が高いのです。」
「もちろん、パル君は国王として即位するのですわ。しかし、そこに民主制の政府を置く事を、わたくしは期待しますが、そのあたりは、お任せしますわ。わたくしの役割ではない。」
「パル君は、ただのお飾りかい?」
こんどはダレルが皮肉った。
「それとも、あんたが操る積りかな?」
「あたくしは、口は出さないと申しております。タルレジャ教団のみに、あたくしの権限は限定してほしいのです。」
「あやしいもんだ。」
「ふん。いや、しかし、やり方によっては、ありうるかもしれないな。」
ブル博士が珍しく肯定的なことを言った。
「ほう、女王に操られましたかな?」
ダレルが突っついた。
「ばかな、ぼくは不感応だ。」
「なりほど・・・・不感応ね。パル君は、感応者なのかな?」
「この子は、強力な不感応です。」
ベッドの上からウナが言った。
「生まれた時から、わかっていましたから。ちょっと必要性があって、検査しましたから。」
「ほう・・・・・なんで?」
ブル博士が興味深そうに尋ねた。
「個人的な事情です。」
「そこは、それ以上追求してはいけませんよ。金星の個人保護条例に反します。火星の法に照らしても、違法の可能性があります。」
リリカが、その先を封鎖した。
「そりゃあ、どうも。副首相殿。しかし、国王ともなるのだったら、秘密はない方が良いですな。」
「もし、その可能性が高くなったら、お話しましょう。」
ウナが少し苦しそうに言った。
「よろしく。」
「ウナ大丈夫?」
パル君が心配そうに尋ねた。
「大丈夫よ。」
「あ~~~、ちょっと心配しておるのが、光人間どもだ。これは、どうなってるのかな?」
ブル博士が、突然、話題を変えた。
「ご心配なく。光人間の指導者お二人は、ここに来ていらっしゃいます。」
「はあ? どこに?」
ブル博士が、わざと、皆に見せつけるようにあたりを見回した。
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「そいつは、早く分析して、キッチンがやったことを再現してみなくてはならないが、その物質、手には入らないか?」
「ええ。金星の奥深くにしかないもので、採掘されたことはありません。公式には。」
「非公式には?」
「わかりません・・・、この『物質キルファ』・・・そう呼ばれていましたが、この存在が分かったのは、100年くらいはむかしで、ビューナス様の試掘用の温泉内から、ごく少量検出されたからです。そこは、危険なガスが噴出する可能性が高くて、放棄され封鎖されました。まあ、使い道もなかったですし、気にもされなかった。しかし、その大鉱脈があるらしいことまでは分かっていましたが、そこまで掘るには、技術的な問題が大きくて、経費と釣り合わないことは明らかでした。ただ、キッチンの祖先で、異端の科学者だったアンドレア・キッチン博士が、この物質には空間跳躍を引き起こすエネルギーが含まれるという独自の理論を掲げていました。だれも、相手にはしませんでした。しかし、その技術がキッチンに伝わり、何らかの方法で、入手していたかもしれませんな。」
「なんらかの方法って?」
「そりゃあ、もう、『ママ』ですよ。」
「あああ。ふうん。『ママ』・・か。ビューナス様が関わっていた可能性はないの?我々の空間跳躍の技術については、まだ最終的には謎のままだよ。わからないで使っているが。関係があるんじゃないのか?」
「そこは、さっぱりわかりません。」
「組み合わせてみたら、意外と役に立つかもな。それと、ヘレナリアに当たって見たらどうかな?」
長官は、ふと、そう言った。
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「やましんさん、幸子が出てこない。ぷんぷん!」
「ああああ、あの、幸子さん、第4部で出しますから。はい。」
「うそばっか、このごろそっちは書いてないじゃない。ぷんぷんぷんぷん。」
「あああああのあ、・・・ちょっと体調が良くなくて・・・でも、もうすぐまた書きますから。はい。」
「もう、次に出なかったら、女王様たちと一緒に一晩中大騒ぎするから!」
「いやああああ。ご近所にご迷惑なので・・・」
「柿子さんとかも、いっしょに呼ぶ。」
「あああああ、なにとぞ、平和に行きましょう。はい。」
「お饅頭、特注しときます。」
「あああ、このところまたあまいものは、危ないので。はい。はい。」
「はいは、一回。」
「あ、はい。がんばります。」
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『このくらい脅しといたら、出るかなあ~~~~~楽しみ~~~!』
『むむむむ。仕方ない。また、あの手を使うか・・・・』
『なに、ぶつぶつ言ってるんですか?』
『あ、いやいや、はははは・・・』
『このごろ、また、ストレートためてませんか?』
『は。ストレートですか?(ああ、ストレスね。)まあ。そこそこ。」
『じゃあ、やっぱり、どわっ、と行きましょう。女王様に相談しよ~っと。』
『むむむ。やはりここは、隠遁の術が必要か・・・うわ、めまい、来た。まずい。』
本当にめまいが来たので、おしまい。
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