わたしの永遠の故郷をさがして 第三部 第一章 第九十七回
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マオ・ドクとデラベラリ先生は、『ぶっちぎり号』から宇宙服を着たまま、外に出た。
不思議なことに、空間に『動く歩道』のようなものが、うっすらと現れた。
「これに、乗れということかな。お嬢もしゃれたことをするものだなあ。」
「あなた、女王のすることは、なんでも全部、良い事にみえるんですなあ。」
「だまれ!先生。」
デラベラリ先生を軽くたしなめておいて、マオ・ドクは、さっさと、その道に乗った。
先生も、首を左右に振りながら、後に続いた。
「おかしな空間ですなあ。船長、ちょっと言っていいですか?」
「なんだ、先生。」
「ここ、宇宙服は不要のようですな。」
「はあ? またまた。先生、ご冗談を。」
「データは、そう言っておりますな。ほら、あれ!」
マオ・ドクは見た。
ジニーが、副官を連れて、宇宙服なしで近づいてきている。
鉄道の本線に、支線が出会ったような感じだ。
やがて、ふたつの軌道が完全に平行に並んだ。
「きさま、宇宙服マニアだったのか?」
「なにを!小娘、分かっているんだ。そんなこと。しかし、海賊はいつも準備を怠らないものだ。」
「ほう・・・・じゃあ、まあご自由に、・・・重くって潰れるかもな。」
「くそお・・・・・」
ドクは、毒づいた。
しかし・・・実際、だんだん重くなる。重力が加わってきている。
「どうなってんだ。ここは、宇宙空間の真っただ中だろうが。」
「さああて、相手が女王だとしたら、何でもありですからな。ドク。」
「まあ・・・そだな。」
やがて、彼らの行く手に人間たちが集合している場所が見えてきた。
おかしな光景だった。
見たこともない、何も無い宇宙空間の中に、まるで床の上にあるように、テーブルが置かれ、いくつもの椅子があり、人間たちが座り込んでいる。
実際には、床も壁もない。
『第9惑星』自体もまったく見えないし、太陽も見えない。
真っ暗な何もないところが、ずっと、はるか向こうまで広がっているが、反対側には、おかしな鈍い輝きがある感じがする。
星は、見えない。
にもかかわらず、その人間たちはくっきりと見えている。
マオ・ドクたちは、まもなくその集団に加わったのだった。
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「さて、役者はそろいました。」
ビュリアが宣言した。
いつのまにか、カシャやアンナも呼び出されている。
つまり、ここには、新しい『王国』の閣僚候補、または、準閣僚候補とされている人たちが、半強制的に集められていた、という訳である。
姿は見えていないが、実は光人間も同席させられていた。
「さて、みなさま、わたくしは、このたびのごたごたも勘案し、いささか僭越ではございますが、ご提案を申し上げます。強制はできかねますが、受け入れていただけない場合は、しばらく、まあ1億年から2憶年くらいとか、は、この太陽系内は混乱状態が続くことでしょう。それは、わたくし、模擬世界をいくつも作って検証してきておりましたから、間違いはございません。もちろん、全てをわたくしが強制するというもう一つの世界があるのですが、それは、どうやら上手くゆくと言う確信が持てなかったので、自ら却下しました。」
「あのさあ。言いたいことがあるなら、さっさと言ってほしんだよね。あたしは、忙しいんだから。」
「まあまあ、ポプリスさまは、常に御多忙ですものね。じっと座っていらっしゃることも、おできにならないご様子ですもの。」
「ふん! いけすかない、やなやつ。」
「おい、お嬢に、おかしなちょっかい出すな。」
マオ・ドクがポプリスを睨みつけた。
「おお、こわ。誰かと思えば、こしぎんちゃくの海賊さんかい。」
「なにお~~!!」
「まあまあまあ。血圧があがりますから。ね、ドク。あとで、温泉にご招待いたしますから。」
女将さんが抑えに入った。
ドクは、女将さんが苦手である。
「ども。では、言います。ダレルさんもおっしゃいますように、地球上に『タルレジャ王国』以外の常設国家や機関、組織を置くことは、認められません。しかし、確かに、王国内にさまざまな団体や、一定の組織が存在することを、頭から拒否することは、あまり意味がないという、シュミレーション結果が出ました。そこで、王国の組織の枠内で行動することを大前提として、皆様方を受け入れることは、可能と判断しました。」
「聞いてないぞお。そんなこと。」
最初に文句を付けたのは、ダレルだった。
「急に言うな。大体あんたの立場は、もう、そういうものじゃないだろう。」
「だ、か、ら。『て・い・あ・ん。』ですわ。それに、あたくしは、地球の地主ですわ。」
また、両手を重ねながらビュリアが言った。
「くそ。あんたが言うと、提案っぽくないんだ。強制に聞こえる。」
「あそ。じゃあ、いいわ。リリカさんにデータ送った。見えるでしょう。お読みくださいませんか?代読というものですわ。」
「はあ・・・・・まあ、いいでしょう、このさい。話が進まないから。じゃあ、ビュリアさんのご提案を代読しますね。おほん・・・・む!これは・・・・」
「どうしたのかな?」
ダレルが覗き込んだ。
「ううん・・・いいわ。行きます。まず『第1提案』です。【地球上には、地球人類が自主的に国家を形成するまで、『タルレジャ王国』のみの存在を容認する。】『第2提案』です。【タルレジャ王国の初代国王は、『パル・タレルジャ』と称することとし、ここにいるパル君がその任に就くものとする。】」
「はあ~~~???」
ポプリスが、まっさきに奇声をあげた。
「つぎ、です。『第3提案』です。【地球上に存在が認められる、タルレジャ王室と、政府、さらに軍、それ以外の各種民間・公共の団体、組織のありかた等すべての必要な事項については、『パル王』を中心にして『政府』と『王室』が検討して決定するものとする。ただし、『タルレジャ教団については、そのすべての権限をビュリアに一任する事。ビュリアは宗教上の事項以外には、一切関与できない事とする。当然、王室と政府の関係については、ビュリアはその企画段階から関与しない事とする。】 です。次『第4提案』【したがって、タルレジャ王国の受け入れ可能な人数についても、ビュリアは当初から一切関与しない事とする。しかし、『タルレジャ教団』すなわち『北島』の受け入れに関しては、その人数を含め、すべてビュリアに一任する。】。『第5提案』【その他のことについては、すべて、『パル王』と『政府』さらに新く出来るであろう『議会』が、また必要ならば『王室』も交えて、協議検討して、決めることとする。】おしまい。」
「要するに、それは、この、パル君に、我々の未来を任せよ、と言う事か・・な・・・・?」
「まあ、そうね。」
「あははははは。そりゃあ、無理だろう。」
ダレルが言い放った。
「いや、パル君に文句、言っているんじゃないんだよ。この。このお姉さんが、どうかしてるんだよ。気にしなくていいんだ。」
すると、パル君が、こう言った。
「ぼくなら、やるよ。別に、良いよ。」
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