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わたしの永遠の故郷をさがして 第三部 第一章 第九十四回


   ************   ************


「こりゃあ、いったいどこかいな?」


 マ・オ・ドクがささやくように言った。


「う~~~ん。いや~~~、こりゃあ、天国かな、いや、やはり地獄ですかな。」


「先生頼むぜ、おれたちゃ生きてるのか?」


「ぶっちぎり号の生命確認装置では、乗員全員生きてますな。しかし、計器というものは、絶対的なシロモノじゃないですからね。生きていたときの状態を示しているだけかもしれない。」


「・・・んなもん、信用できないじゃないか。」


「そうですよ。実際ね。まあ、ここは、まず観測用の小型衛星を出しましょう。視覚上は、ご覧の通り、なにもありません。まったく何にも見えていませんよね。第9惑星の内部であるとは考えにくいですけど。なぜか周囲からの圧力もない。どこからも引っ張られていない。大気もない。なんにもない。虚無の空間ですな。ならば、天国か地獄か・・・それとも・・・」


「それとも?」


「それとも・・・・女王様のおっしゃる『真の都』かも。でも、ほら、・・・これ、ここですよ。見えた!・・・・・ね、居るでしょう。ほら、ここ。」


「ああ、『えびす号』か。確かにそうだな。」


「そうです、えびす号のお尻ですよ。ね。紙一重の場所ですね。えびす号は、うすーい紙の向こう側にくっ付いていて、ぼくらは、その紙のこっちっかわに張り付いてる感じなんですよ。一部だけ見えてるし、すぐそばのようですが、この紙、ただものではないですね。ここが事象の境界線ですよ。」


「ばかばかしい。やましんの偽SF小説みたいだ。」


「あれは、サイエンス・フィクションじゃなくて、ソフト・フェイク小説らしいですよ。」


「ふん。じゃあ、ここは、ブラックホールの中だとか?そういうことか?」


「ううん。もしかして、なんですがね。その境目ですな。境目には非常に穏やかな環境があると考える学者もいました。そこを観測しようとした火星の探査機は、しかし行方不明になったのですが。まあ、それは銀河系の中心であって、ここではないですけどね。」


「じゃあ、第9惑星の中心に、ブラックホールがあるとな?」


「あり得る事ですよ。繋がってるのかもしれないですがね。」


「それは、もう、海賊の守備範囲ではないよ。まずは『えびす号』に連絡、取れないのか?」


「だめですね。電磁波による通信は成り立たないですね。原因は不明。今、小型衛星を『えびす号』に向けて出しました。どうやら水平方向には動けますね。紙の上をすらっとすべる感じです。この際、さらに接近します。・・・・あらららら。消えた!」


「消えた!?」


「消滅です。なんだろうな・・・観測した感じでは、紙が破れて、ブラックホール内部にちょっとだけ、落ちた感じですな。」


「どっちが?」


「こっちがですね。でも、止まってる。潰れもしない。おかしいな。まあ、もう少し付け加えるならばですね、でも、こりゃあ、脱出もできそうにない。」


「ここまで、来たのにか?」


「ええ、衛星の得たデータから言えば、この空間から脱出することは、ちょっと無理ですね。ここは、特殊な場所です。すべての力がちょうど拮抗していて、なにも起こらない。しかし、脱出するには、とてつもないエネルギーが必要ですが、ぶっちぎり号では無理です。」


「じゃなんで、無事にここまで来れた?」


「さらに、それらを超越する、とてつもない力が働いた。」


「まさか。お嬢か?」


「まあ、他に考えられるものはないですね。我々自身が、ここではすでに超常現象ですな。」





   **********   **********



 「『ポプリスちゃん』と『キラール公』、それから『反乱軍団』と『青い絆』、『もと火星政府』、『海賊さんたち』『金星の遺されし人々』、『宇宙クジラさん』『宇宙警察さん』、みんなひっくるめて、和平協定をしましょう。」


 ビュリアが、なんのこともない、という感じで言った。


「それは、いくらなんでも、無理でしょう。お互いの利害の対立がありすぎです。」


 アブラシオは、非常に懐疑的だ。


 こう付け加えた。


「あなたに敵対的な勢力は、この際、生命自体を壊滅させた方が早くて有効で、将来の為です。」


「ふうん・・・アブラシオさんは、アニーさんより過激派かな。」


「そうでもないですけれど。事実を言っているだけです。邪魔ものは排除するか取り込むか、どっちかですが、ずっと、取り込むのは至難の業です。破壊した方が早い。あなたのポリシーもそうでした。」


「うん。たしかにね。じゃあ、パル君に聞いてみよう。」


「は?」


「この先、わたくしは、パル君に、この太陽系の未来を預けようと思う。彼が、わが王国の国王となり、さらには、遠い将来の地球人や火星人や金星人の統合の要となるようになってほしい。長い時間がかかるけれど、それでも、わたくしにとっては、ほんのディナー・タイムくらいよ。」


「パル君は、人間から、何かに進化すると?」


「そういうこと。ただし、いずれね。すぐじゃあないわ。あなたも、見ることになるわ。アニーさんも、少しずつ回復させる。パル君が大人になるころには、復帰してるでしょ。あなたがたは、パル君を支援し、この太陽系が命をはぐくむ限り、援助することになる。つかず離れずにね。」


「あなたは?」


「わたくしは、ただ自分の故郷に帰りたいだけよ。」


「あなたの故郷は、理論上、この宇宙にはあり得ないと思われます。今のところは。」


「そうそう。1億5千万年後のわたくしからも、まだ解決できないと言ってきた。この宇宙でも、またまた、解決出来ないままになるのかもしれないわね。今まで、ずっとそうだったようにね。そうなったら、またこの宇宙の消滅後に、わたくしは別の宇宙に生まれ出ることになる。おそらくね。またやり直しよ。でも、それでも、努力は放棄しちゃあいけないものよ。努力だけが未来を作るの。これだけは、どんな宇宙に生まれた生き物であっても、共通の事実だから。生物のいない宇宙であっても、わたくしは努力を続ける。孤独でもよ。何百億年も、それ以上も、一人ぼっちでもね。どうやら、わたくしはね、途中で他所の宇宙に完全なお引越しをすることは出来ないらしいのね。のぞき見や、サンプル用のサブ宇宙を創作することはできてもよ。その謎は、解けていない。さて、というわけで、会議を続けなければならないわ。停戦協議が必要だ。関係者をお茶パーティ-に呼びましょう。すでにジニーさんと、マ・オ・ドクさんたちは、会場入りしたんでしょう?」


「はい。」


「じゃあ、残りの人たちも集めて、さっさと話しを付けて。それから総会に戻りましょう。」


「了解です。」






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