わたしの永遠の故郷をさがして 第三部 第一章 第九十三回
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「もう一度、侵入角を直角にして突っ込んでみよう。」
ジニーが言った。
「もし、大きな山とかが隠れていたら、ばらばらかもしれないですよ。なにせ、中身が見えない。」
「まあね。でも、可能性は低いわ。このさい、突っ込みましょう。」
「了解。どうせダメならもろともに。」
「そういう、壊滅思想はダメよ。あくまで、楽観的に楽しくゆきましょう。それが、海賊の極意。」
「はいはい。では、行きます。船体直立。最大推進。保護幕最大。ゆけ!~~~~~~!」
『えびす号』は、猛スピードで第9惑星の地表に突っ込んでいった。
「あと、5000メートル。3000・・・1000・・・突っ込みます。・・・・・」
「おわ!!抜けた。」
「逆推進、水平飛行!」
「そう簡単には行きません。あああ、引っ張られてます。おかしいです。」
周囲の光景が、どんどんと流れてしまう。
「こりゃあ、時空を超えてます。」
「ばかな!」
「現在地不明。測定不能。速度不明。角度不明。」
『えびす号』は、消えた。
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「親分、『えびす号』が消えましたぜ。」
通信担当海賊が叫んだ。
「消えた?! なんだそりゃ。」
「文字通り、消えた。探査不能。位置不明。」
「消えた場所は特定できるんだろう?」
「はいな。」
「そこに向かえ!」
マオ・ドクが指示した。
「いいんですか? 危ないですよ?」
「やってみなくちゃ何も得られず! 行け!」
「地獄は紙一重、ですなあ。」
「地獄か天国か、行って見なくちゃ分からない。」
『ぶっちぎり号』は、猛スピードで『えびす号』のあとを追った。
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「おれたち、捕まった?のであるのか?」
「つかまったのであるのですのだったりもする。」
「うそだろう、である。このようなことが起こるとは、想定外であるのであるのだ。」
「想定外も、想定の内なのだったりもする。言わないだけだったりする。」
「これは、誰の仕業か?であるのだ。」
「こんなこと可能なのだったりもするとしたら、『女王』であったりもする。」
「あいつは、滅亡したのだったりもする。」
「しなかったりもしたのだったりもする。」
いずれにせよ、『光人間』たちは動きが取れなくなっていた。
虫取り用のペーパーにくっ付いた『火星ばえ』のような感じだ。
しかし、視覚的には、はっきりとはしない。
「ビュリアさん、うまく捕まえたようです。光子が多量に観測される。」
「ふんふん。ダレルちゃんのやり方より、はるかに確実で間違いがない。さあて、どうしましょうかねぇ。」
ビュリアはつぶやいた。
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「親分、大気圏に突っ込む。」
「よっしゃ! ゴーゴー、ブッチギリ!」
眉根をきっと持ち上げながら、デラベラリ先生が自分の席でさまざまなデータを確認している。
「大気圏突入完了。視覚では何も見えないです。」
「減速しろ!」
マオ・ドクが命じた。
「いや、このまま突っ込みましょう。」
「はあ? 先生、木っ端みじんになるぜ。」
「えびす号は、猛スピードで突っ込んで消えた。同じ速度を出しましょう。」
「だから、それはまずいんじゃないか!」
「いいえ、えびす号は破壊はしていない。」
「証拠があるのか?」
「破壊した証拠がまったくみられません。かけらひとつない。行くべし! 行くべし!」
「あああ・・・知らないぞお・・・」
ぶっちぎり号は高速で急降下した。
「あらら、なんだこれは・・・おかしいぞ。」
「ええ、ですね・・・次元の壁を越えました。」
「じゃあ、どこだ?」
「どこでもない場所です。目印になる星もなにもない。どこでもない場所です。天国とか、地獄とか、そうした種類でしょう。」
「またまた、先生・・・・」
「えびす号発見!」
通信担当海賊が叫んだ。
「え?!」
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ウナの意識が戻った。
「やたああ、ウナ、ぼくだよ。わかる?」
パル君が叫んだ。
「おはよう、ウナ。よく寝たかい?」
マヤコがパル君に次いで声をかけた。
「はあ・・・・寝たという感じじゃないです。アレクシス様とレイミ様の指示が消えました。」
「解放されたんだよ。」
「はあ・・・・抜け殻になったみたい。」
「まあ、良くはわからないけど、とりあえず、元のウナに戻ったんだ。覚えてはいる?」
「いやあ。・・・覚えてます。やってたことは。それが正しい事だったようにも。」
「過去に同じ症例がないので、はっきりは言えませんが、まあ、いくらか後遺症が残るんでしょうな。自分の意思が、再び主体性を確立するまで、少し時間がかかりそうです。」
ロボット医師が言った。
「時間の問題です。体に問題はない。」
「まあ、良かったとしようよ。」
楽観的なマヤコがズバリと言った。
「ウナは、あれこれ気にしないで、しばらく休もうね。」
パル君が優しく言った。
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「幸子さん、もう、台風来ないようにしてよ。」
ぼくが言いました。
「管轄外です。」
お饅頭を頬張り、テレビを見ながら、幸子さんが答えました。
「まあ、言って見ただけですけど。あまりに狙われ過ぎですよ。いつ前の川があふれてもおかしくない。」
「たしかにね~。まあ、自然の行いには、地球の人間は、まだ歯が立たないですから。女王様が言うには、宇宙にはこうした自然現象を、ほぼ完璧にコントロールできた種族もあったそうですよ。大昔には。」
「その技術、欲しい。」
「時空間の差が大きくて、地球人が出会う事はないそうです。」
「じゃあ、いないのと同じだな。」
「あなたと同じです。やましんさん。」
「うぎゃ!」
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