わたしの永遠の故郷をさがして 第三部 第一章 第九十二回
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「アニーさん、聞こえてる?」
ビュリアが尋ねた。
『あ~い。アニーさんですよ~。本日絶滅ナレド、ナーミカワイイ、シロカローニシテ、ゾウモツフカシ、アナタノヤミノソラトオク、サイガイスムトヒトガイウ。完璧!アニーさん復活!』
「はあ・・・・こりゃあまだ、さっぱりだめだな。やはりアニーさんの場合は、一旦壊れると、後が大変ですわね。これは、金星部分がやられただけじゃないな。ふうん・・・やはり『第9惑星』が怪しいか。しかし、あれだけ慎重に植民地を置いたしな、大気圏の内側には、誰も他には、絶対に入れないようにしたしな。あの『意識の壁』を通り抜けることは不可能でしょう・・・。ならば、いったい誰が阻害要因となるのか、よね。他の惑星や衛星には、どうも異常が見られない。おかしい。ふうん。考えられうる事は、『真の都』への通路をあそこに置いたことからくる問題ですわね。『真の都』のなかで、何かの想定できない『異常』が起こったか、『起こりつつ』あるか、というところかな。あそこは、ここの時間とは、まったくかかわりがない。金星の空中都市は、ヘレナリアに任せたから、まあ2億5千万年は、帰れないだろう・・」
ヘレナ=ビュリアは少しだけ、考えた。
「はあ・・・やれやれ仕方がないか。行って見るかな? しかし、もしそうならば、相当に手こずるかもしれないなあ。どうしよう。『分身』をビュリアに残して、お任せしたうえで、じっくりといくかなあ。一旦見て来てから、そこらへんは、改めて、考えるかなあ。でも、手遅れになるのは怖いか。あそこを混乱させるのならば、最低でも『分身』クラスだものねぇ。しかも、わたくしではない『女王』のかも。この間の事態を考えれば、十分あり得るわ。吸収されたらどうなるの? おしまいになるだけね。くそ、いまいましい。わたくしが、『真の女王である』という証が欲しいな。もしくは、新しい方法が有効かどうか。試してみる時かも。まあ、ここはひとつ、やってみましょうか!」
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ビュリアは、意識的には何も変わっていなかった。
内部に入り込んで『ビュリア自身』を操っているのが、『女王本体』なのか『分身』なのか、ということは、事実上、何の意味も持たないのだから。
長い年月の後、女王ヘレナが作り上げた最高の『人類』だと誇ることとなる『ヘレナ=弘子』や『ルイーザ=道子』にしても、そこは同じことである。
ただ、『ヘレナ』や『ルイーザ』は、自分たちがどういう身の上なのかを知っている。
しかし、ビュリアはそうではない。
ビュリアには、『自分』という意識そのものが見当たらない。
女王へレナがその気になれば、そうしたことも可能ではあるけれど、もしビュリアが、将来女王ヘレナから解放されたならば、人生はそこから始まることになる。
もっとも、いくらかの記憶は、残されるかもしれないけれども。
いずれにせよ、彼女は、ビュリアのままであった。
「アブラシオさん、どうなってるのかな?」
『はい。現在、ポプリスさんに『降伏勧告』を出しています。時間は・・・可哀そうだとあなたがおっしゃるので、3時間も与えましたよ。』
「ああ、それでいいわ。無条件降伏よ。条件は最終的にこっちから出すわ。まずは、降伏ね。」
『そう伝えました。』
「よしよし。」
『あの、言っていいですか?』
「どうぞ、なんでもおっしゃってくださいな。」
『あの、海賊の方々が、第9惑星の観測に入っています。特に、えびす号は、大気圏の外郭部から、内部に入ろうとしています。できませんが。』
「できないわよ。あれは、私の『意志』だもの。私が滅亡するか、気が変わるかしないと入れない。」
『ええ。『ぶっちぎり号』の動きが怪しいです。なにか企んでます。』
「あのふたりの意識も、ジニーのも読めない。ダレルと同じで、やな連中よ。下っ端の皆さんには情報が届いてないと来てる。最悪の組織ね。でもね・・・」
『でも・・・・』
「まあ、わたくしには、先が読めている。ね!」
『予知能力もお持ちでしたか?』
「まあね。なんとなあく、中に入れてあげようかなと思ってます。」
『え?』
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女王ヘレナの本体は、『第9惑星』にまで、伸びあがっていた。
『さて、どうするかな。まだしっぽをビュリアちゃんには残しては来ている。分身さんに完全にお任せするかどうかは、ちょっと考えようっと。あらら、ドクさんがいる。デラベラリ先生は大変ね。アマンジャさんに会わせてあげたいけどな。まだ、ちょっと早いでしょうね。ドクさんが、やはり可哀そうだしな。それに、ジニーちゃんがデラベラリ先生を好きな事は先刻承知。デラベラリ先生は、そういうところは超鈍感だし。どっちもアマンジャさんを大切に思っていることも事実。』
ヘレナは、第9惑星全体を包み込んだ。
『しかし、この世で、デラベラリ先生は、アマンジャさんとは添い遂げられない。未来の情報は解っているわ。ジニーさんがデラベラリ先生の子孫を作る。下手なんかしたら、それが変わってもおかしくはない。そうはいっても、『2億5千万年後のあの二人』は、絶対に生まれなくてはならない。そこだけは変わってはならないわけだ。でないと、未来のわたくしが困るらしい。だから、この選択はなかなか変えられない。ふむふむ、ジニーさんがいる。さあて、どうするかなあ。アマンジャさんに会ってもらう手はあるかな。ちょっと、シュミレーションしてみるかなあ?』
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