わたしの永遠の故郷をさがして 第三部 第一章 第八十九回
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ウナは、結構大きなボトルの栓に手をかけた。
ちゃんと、栓を開ける専用オープナ-もテーブルの上に置かれてたのだが、ウナはまったく気にも掛けない様子で、自分の指で、くいっと回した。
なんの障害もなく、栓はすっと回ったのだ。
「おわ! すご!」
マヤコが感心した。
マヤコは、『自分ならできるけどな』、とは思っていたのだが、こう簡単にやられると、いささか拍子抜けだったのだ。
ウナは、無言のまま、その大きなボトルを軽く斜めに抱えて、カップになみなみと注いだ。
『おぎょわ~~である。うんうん。いい酒である!』
『いいさけであるのであるのだったりもする。』
アレクシスとレイミは、注がれながら光を発散していた。
『この、深い味わいというものが、たまらないくよいのであるのである、のである。』
『たまらなかったりもするのだ。』
二人は、カップの上で、いっそう輝いて見せた。
ウナは、そこにアレクシスとレイミが『いる』ことは認識してはいたのだ。
けれども、まったく気にはなっていなかった。
当たり前のことがらであるから。
ウナは、自分が『人類』だ、とは認識していたが、『進化前』の『人間』だとは、もう思っていなかった。
パル君が、自分にとって、大切な存在だという事実も、まったく、気にしてはいなかった。
『おおお~~~。よい、よい。よいお酒であるのであるのであるのである!!』
『よいよい~~~!!』
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「よしっと。準備完了です。アブラシオさん、できたよ。やっていい。バックアップする。こっちのコンピューターと同期させたら、膨大なエネルギーが出せるだろう。吸着物質はできたかな?」
警部2051は、アブラシオに連絡を取った。
『りょうかい。吸着物質の製造は、マニュアルにより行いました。ものすごいエネルギーが必要ですね。まあ、きっと足りるでしょう。いまがチャンス! やります!』
アブラシオは、自分の抱えていたデータの中から取り出した、超太古時代に遥かな宇宙の彼方で考えられたその物質を、指令室の天井に物質化させた。
それから、警部2051の本体と連動させ、猛烈なエネルギーを供給した。
太陽10個分くらいにも相当するエネルギーである。
不思議なことに、マニュアル上は、人体には影響しないとされているが、アブラシオも警部2051も、いささか心配ではあった。
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まったく経験のない事態が、アレクシスとレイミを襲った。
彼らの意識は、瞬時に吸着物質に吸い寄せられたのだ。
そこは、まったく無機質な感じで、何もないが、なにも出来なくなった。
すべての能力が封じられてしまった。
感覚もなく、なにも見えず、考えるということ自体が、もはや不可能になった。
ウナは、一瞬、気を失った。
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『ビュリアさん、作動した! どうなってるのか、よく分からないですが、光の揺らめきがあった!』
「よっしゃよっしゃ。では、もう怖いものなしよ。」
『キラール親衛隊の、ばかでか宇宙船が何かを放射しようとしています。』
「やらせなさいな。そのまま。アブラシオさん。おばかさんキラールのばかでか戦艦を、自分の出したゆがみの中に放り込みなさい。他は、放出!」
『了解。キラール艦、空間歪曲場のセットを始めてます。発射されます。』
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「やれ! 『空間歪曲砲』、発射!」
司令官が叫んだ。
『発射します!!』
キラール親衛隊の巨大宇宙船から、不可思議なエネルギーが発射された。
それは、地球の傍らで爆発すると、その周囲に、ドーナッツの輪のように広がって行く。
「あそこに引き込まれたら、時空のゆがみに落ち込んで戻れなくなるさ。そのままくるんで、ぽいっ!だ!」
通信士官が、大きな声を出した。
『司令官、何かの力に、猛烈な力に引き込まれてます。このままだと、ゆがみに落ちます!!』
「ばかな!! 抵抗しろ。引き返せ!! バック、バック!!」
『だめです。逆らえない。うわ~~~、落ちます! 落ちます!!』
「うぎゃ~~~~~~~!!!」
親衛隊の巨大戦艦は、自らが作り出した空間の深いゆがみに落ち込んだ。
それから、そのまま、ゆがんだ空間に捕縛され、包み込まれ、消えていったのである。
一方、地球の周囲にいた、副師団長や、警部2051の子分たちは、逆に歪みから、はじき出されるように、地球の周辺に散らばっていった。
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