わたしの永遠の故郷をさがして 第三部 第一章 第八十七回
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「むむ、やつら撤退する。なにか怪しい事を、企んでるな。」
副師団長は、そう感づいてはいたが、なにが出てくるか、までは分からない。
「どうせ、またくだらない兵器を持ってるんだろうな。キラール公のシュミだからな。」
「どうしますか?」
参謀が尋ねてきた。
「ふうん・・・ちょっと全体を分散させて、地球の周囲にばら撒け。どっちにしても、総ざらいをやりに来るつもりだろう。」
「了解。」
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「連中、分散してゆきます。読まれたかと。」
「ふん。ちょこざいな。」
親衛隊長がつぶやいた。
「ドーナッツ作戦で行くぞ。」
「了解であります。ただ、少し時間がかかります。」
「5分でやれ。」
「いささか無理でしょう。」
「やれ、出来たら給料20%アップだ。」
「うォーい。全員ドーナツ作戦だ!! 給与20%アップがかかるぞ。設定変更急げ。」
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『ビュリアさん、あと5分で準備完了します。アレクシスとレイミはお酒を鑑賞するつもりです。』
「鑑賞。。。ね?」
「そうです。おそらく、ウナの体から、お酒の味覚を吸収する積りでしょう。」
「そんなので、楽しいのかしらね。」
「さあ、お酒については、アブラシオも客観的な観察しかできませんから。」
「そりゃまあ、そうだ。」
「キラール親衛隊の新兵器は、分析によれば、空間中に時空のひずみを生む装置のようです。阻止する方法は、いまだ発見できず。」
「破壊できないの?」
『アブラシオとほぼ同性能があります。おそらく製造元は同じかと。下手に破壊すると、地球が吹っ飛びますよ。』
「『宇宙くじら』さんか。まあ、要求されたエネルギーさえ出せば、やはり、なんでもするのかな。いったい何を提供したのかな。まさか、空手形なんじゃないのかなあ。」
「そこは、まだ不明です。」
「ふうん。『宇宙クジラ』さんに連絡付かない?」
『だめです。ホットラインを無視してます。』
「困った連中だことね。何が狙いかな?」
『さあ・・『クジラ』の意志はわかりませんから。』
「ごもっとも。」
「『2051』さんに、つないでくださいな。」
『了解。』
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『あなた、『宇宙クジラ』さんの意図をご存じないの?』
ビュリアが『警部2051』に尋ねた。
「いやあ、ビュリアさん。わからないのです。」
光人間確保の段取りをしながら、警部が答えた。
『連絡とれませんこと?』
「いやあいやあ、なんか、無視されてまして。」
『あらま。そちらも、かぁ?』
「ええ。彼らは、ちょっとやっかいですよ。肉体がある生物としては、最上級ですからね。」
『ふうん。』
「いっそ、ビュリアさんが行って見た方が早いでしょう。」
『まあねえ、そうなんだけど。何だか、逆によからぬことを要求されるような気がしてねぇ。気が進まないんだな。といって、皆殺しには出来ないでしょう。』
「え?そんなことが可能ですかあ?」
『まあね。でも、犠牲が大きすぎよ。巨大なエネルギーをため込んでいるから、下手したら、こちらは、銀河系全体が壊れるわ。わたくしは、まあ、いいけれどね。影響、受けないし。』
「こちらは、ってなんでしょう。いやいやあ、それは、ちとマズイですなあ。」
『でしょう? なんかいい手、ないかしら。』
「ふうん・・・わかりました。ビュリアさんの為ならば、何とかいたしましょう!!」
『うわあ・・うれしいわあ・・・うまくいったら、いっしょに、温泉入りましょうね。』
「はい。はい!」
警部は、俄然発奮したのである。
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ウナは、その強いお酒のボトルの栓を、外しにかかった。
なかなか、しっかり閉じられている。
ついに、ウナは、猛烈な力を加えた。
結構太いボトルの先端部が、ぼきっと折れてしまった。
「うわ。すごい力だ。ウナに、あんな力があったかなあ?」
マヤコがいぶかった。
「ううん。ないよ。ババヌッキジュースの、かんかんのふただって、開けられなかったんだもの。」
パル君が、びっくりしながら答えた。
「光人間、おそるべし・・・・か。」
「ウナ、ばけものに、なっちゃったんだ・・・」
パル君が、なきべそを、かき始めた。
「こらこら、落ち込むな。まだまだ、これからだよ。」
始めて見る光景に、少しだけ動揺しながらも、マヤコはパル君を励まし続けた。
『ふふふ。感動したかな。』
声が聞こえた。
「ババルオナ!あんたどこ?」
マヤコが叫んだ。
『あんたたちの周囲全てさ。あきらめなさい。もはや、光人間には逆らえないから。』
「あんたも、心変わりしたのか?」
『そりゃそうだ。光人間になれば、みなそうなる。あんたも、もうすぐ、そうなるのである。のであるぞ。その子も、その方向に導こう。もうすぐここに、施設がやって来る。』
「やってくる? そりゃなんだい。」
『ひ・み・つ・・・・ふふふふふ!』
「くそ。ヨオコもいるのか?」
『ああ、いるけれど、話したくないと。人間とはね。』
「くそ。全部ビューナスのせいか!? 許せない。」
『ビューナス様は無敵だ、あなたの手には負えないのだのだ。はやく仲間になることが、最善の道なのだ、であるのだ。』
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『ビュリアさん。第9惑星の軌道上から、例の巨大人工衛星が離脱しました。地球方向に向かって、空間跳躍してきています。もう、すぐに、現れますよ。』
「あららら。現れたら報告しなさい。まったく、こんな時に、ややこしいばかりだわ。」
それは、間もなく月の裏側に実体化した。
その様子を、一旦戻っていた、リリカ(複写)が見つめていた。
ポプリスとキラール公も、当然すでに気がついていたが、彼らは動きが取れないままだった。
宇宙空間にいた、キラール公の中継衛星が、二機、吹っ飛んでしまった。
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第9惑星の植民地に帰って来ていたカシャは、その異変にすぐに気が付いたが、金星の人工衛星は、もう、姿をくらましてしまっていた。
「まずいな。監視はしてたのに。一杯食わされたか。くそ、仲間の振りしやがって。」
「どうする?」
クレアが計器を見ながら振り向いた。
「ふうん。ビュリアに連絡。ちょっと、また、地球に出向こう。この際だ。一緒に来いよな。」
「わかった。」
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