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わたしの永遠の故郷をさがして 第三部 第一章 第八十五回


  ************   ************



「ウナは、どうなっちゃったんだ?」


 パル君が言った。


「ううん。どうやら、心を光人間に奪われたみたいだねぇ・・・あああ、パル君、御免。」


 マヤコが口をふさぎながら後悔したが、でも、言ってしまったものは返って来ない。


「ううん・・・・ぼく、ウナと話をする。」


「あああ、それはパル君、止めておいた方がいいよ。」


 ウナが制した。


「いや、そのほうがいいよ。物事がすっきりするし、もしかしたら、ウナが目覚めるかもしれないだろう。やってみなきゃわかんないよ。」


 ううん・・・この子はただ者じゃないからな・・・


 マヤコは、そう思ったのだ。


「でもね、ウナがいる場所が分からないよ。この船の中だろうけど、広すぎる。どうやって行くのかも分からないし。」


「それは、大丈夫だよ。きっとね、ね、アブラシオさん。そうだよね。」


 さすがのアブラシオも、ここは返事をせざるを得ないと判断した。


『場所はもちろん分かっていますし、お連れすることは可能ですが、マヤコさんのおっっしゃる通り、あなたが失望する可能性が極めて高く、また、それに見合う効果が上がる可能性はきわめて低く、つまり、お勧めできません。』


「いいよ。それで、まずは実行することが大切なんだから。違う?」


『違う? と質問されたら、違う、と言う回答はできません。』


「じゃあ、そうしよう。」


『はあ・・・わかりました。指令室に送転します。マヤコさんはどうしますか?』


「そりゃあ、行かなきゃならないさ。どう考えたって。」


『了解しました。』


 アブラシオは、その状況を即座にビュリアに伝えた。



  **********  **********



 ババヌッキ社長は、ほぼ、なにもすることがない状況であった。


「パパ、活躍する機会がないね。」


 娘に言われた。


「まあね。今は、経営者が口を出す時じゃない。それは、もう少し先さ。」


「ふうん・・・」


 娘は、やや不服そうだった。


「あなた、パパに無理言うんじゃないのよ。もう若くもないし。冒険家でもない。お金はあっても、今はなんの役に立たないのよ。」


 妻が娘をたしなめたような、感じにはなった。


「む! ちょっと、それは、言い過ぎだろう。ぼくだって、まだ機会があれば冒険も可能だ。」


「むりむり。あなたは、大人しくしていてくださいな。」


 実際、ここでは経済力はモノを言わない。


 ババヌッキ社長の出番はないように見えても、それは当然の事だった。


 しかし、そこに、ビュリアの声が、突如空中からかかったのである。



  ********   ********



『社長さん。うんと、アルコール度の高いババヌッキ酒がないかなあ?』


「は?」


 社長は、いささかびっくりした。


「ビュリアさん、あなたが飲むんですか?」


『まあ、そういうこともあり得ますけれども。でも、とり合えずそうじゃないの。ウナに飲ませるのよ。」


「はあ? ・・・・・・いやあ、よくわかりませんが。」


『実はね・・・今の状況はというと・・・』


 ビュリアは、ウナの置かれた状況を説明した。


「はあ・・・それはまた可哀そうな。パル君が・・・ウナさんもですが。」


『そうそう。ウナの体は、宇宙クジラさんが作ったもので、人知を超えていますけれど、実はね、お酒に弱いのよ。ある程度強いお酒が入ると、活動が停止するの。すぐ死ぬわけじゃないわ。まあ、人間もそうですが、もっときっぱりと止まる訳。あの体は、エタノールにすっごく敏感なようだからね。いま、ウナの体と光人間の本体部分とはウナの体が死なない限りは離れない。うっかり攻撃するとかして、死なれては困る。もし、光人間そのものになったら、人間性がすぐに薄くなってゆくから。一番安全なのは、当面まあ、お酒という訳です。』


「本人が飲まないでしょうに。そんなもの。」


『そこですよ。パル君に飲まさせる。』


「はああ?」


『アレクシスはね、言って見れば、お人好しなのよ。昔からね。しかも、今でも酒樽の中に潜むのが大好きなようなのね。人間だった時の嗜好は、光人間になっても残るみたいなんです。』


 それは、実はレイミもそうだ。


 この二人は、人間だったころから、大酒飲みだった。


 おとぎ話の中の大蛇とか、鬼とか、そうした類である。


 もっとも、実際にお酒を飲むわけではないが。


 彼らのエネルギー源は、光であり、かれら自身は、その反映だ。


 お酒を飲んだりはしない。


 個人的に、『好き』なだけである。


 また、光人間は、そもそも『水』が好きである。


『だからね、お酒には気が緩みがちかなあ、というわけです。まあ、やってみなくちゃ、わからないけど。』


「はあ・・・、そりゃあもう、まるでおとぎ話の世界ですなあ。いや、すっごく強いババヌッキ酒なら、試作品がありますよ。市販はしなかったが、いまも、確か、タイタンの倉庫にあるでしょう。」


『それ、いただけませんこと? つけで?』


「まあ、いいですよ。」


『わたくしも、飲みたいし。』


「あれは、効きますよ。浮世のごたごたなんか、すぐに忘れられる。」


『けっこうですわ。アッと言うまに、回収しますわ。』



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