わたしの永遠の故郷をさがして 第三部 第一章 第八十四回
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「おや、データが来た。アブラシオさんからだな。なあんだろう・・・・おおお!これこそ『バウル系星団事件』のデータファイルではないか。宇宙警察のデータではない。むむむ。おおおおお、これはなんと、当時の『バラウル大銀河中央政府』の情報省がもっていたデータではありませんか。なんで、このようなものがあるのか? しかも、またなんで、アブラシオさんが持っていたのか。60億年前のものだ。信じがたい。いやまあ、まずは分析しよう。」
警部2051は、そのファイルの内容を精査しにかかった。
「光人間に肉体というものはもちろんないが、『中心となる意識の集合ポイントがある。誰にも見えないが、探知の方策が見つかった。』・・・・・なるほど。そこを隔離できれば、能力の60%から80%を制限可能である。』ふんふん・・・で、その方法とは何か・・・・『光が透過できない物体で、周囲を囲むだけでよい。』 まあ、簡単だな。いやいやあ、まさか、箱を持っておいかけるわけにはゆくまいし。相手は光速で移動する。そこに追いついて虫取り網みたいにえいっ!と被せることが出来るわけがない。『追い込み漁の要領である。』・・・また、嘘のような事を書いてますな。うん? 『忌避物質』? ほう・・・嫌いなものがあるわけだ。『光を吸着させる物質である。』ほう・・・。アブラシオさんが製造可能だとな。・・・ふうん。あのとき、宇宙警察は極めて屈辱的な状況になった。いつのまにか、光人間は降伏し、その後大人しくなった。それと、この太陽系での出来事に関連性があるとすれば、『女王』つながりかな。でも、あの銀河に『女王』はいなかったはずだが。もっとも、『女王』ではなかったことは十分あり得るか。いったい、誰が該当者だったのか。・・・それは、まあ後から考えることにしよう。」
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キラール師団の中心攻撃艦は『ポプリスⅡ型』艦である。
要するに、火星や金星の公式艦とは関係がない。
『ド・カイヤ集団』の製造したオリジナル製品である。
この攻撃艦は、テロ集団や宇宙海賊にも大いに売られていたので、割とポピュラーな戦闘艦だった。
その攻撃能力はもちろん高いが、売りは圧倒的な防御能力だった。
なかなかか落とせないのである。
強力な保護膜が船体を覆ってしまうため、ほとんどの攻撃を受け付けなかった。
もっとも、近年火星軍は、この防護膜をも通過せてしまうエネルギー砲を開発していた。
作ったのは、リリカである。
そこで、『ド・カイヤ集団』は、あまり火星には、歯向かう行動がとりにくくなっていた。
その背後には、もちろん、『女王』がいた。
『女王』には、あらゆる攻撃が無力だろうと、『信じられて』いたのである。
一方、キラール公の親衛隊は、まったく違う戦闘艦を持っていた。
『ポプリスⅢ型』といわれる謎の戦闘艦である。
実戦に使われたことは、まだない。
いま、ここで、初めてお目見えした、という訳である。
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ホマス少佐は、自分の部下8機の『ポプリスⅡ』を率いて、地球の南極側から、親衛隊の『ポプリスⅢ』に攻撃を掛けていた。
ここにいたのは5機の親衛隊機である。
「宇宙ミサイルを発射。」
照準はみな、完璧だった。
「おわ。早い!」
ものすごい速度で、相手はミサイルをかわしてゆく。
「光速とは言わないが、瞬時にその30%は出てるな。くそ。ミサイルより早くちゃしょうがない。全機、ミサイルは駄目だ。エネルギー砲にしろ。」
『了解』
『攻撃! 攻撃! 攻撃!』
『当たりますが、効果なし。』
『先方から攻撃あり。おわあ~~~機関部大破! 防御が及びません。離脱!』
「なに?」
『少佐、相手の、この武器はポプリスⅡの防御を通過します。』
「くそ。全機、いいか、相手のビームに直撃されたらやられるぞ。事前予測モードで回避しろ。80%は回避可能。後ろから推進部を事前予測で狙え。」
『了解。』
『早いですよ。追い付かない。向こうも同じ機構を持ってますから。』
「勘だ勘!直感でいけ!」
『無茶な! くそ、アムル艦攻撃、行きます・・・。やった~~~! 敵方1機離脱。』
「その調子だ。機械に頼るな!」
全体的な士気は、師団の方が高い。
しかし、攻撃艦の能力自体は、親衛隊が圧倒的に優勢である。
副師団長配下の宇宙攻撃部隊は、どうやら、次第に追い詰められそうだった。
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「『ポプリスⅣ』発進させろ。」
キラール公が命じた。
それから。
太陽の影から、巨大な船体が現れた。
アブラシオよりは小さいが、ポプリス艦には十分匹敵するくらいの巨大戦艦である。
「『死神戦艦』ね。動くのは始めて見たわ。ちゃんと、動くじゃないの。」
ポプリスが皮肉った。
「まあね。図体が大きいのには訳がある。こっちは、大方見栄だがね、あいつは、そうじゃないよ。それだけエネルギーが必要なんだ。太陽がなければびくともできないが。地球は格好の活躍現場だ。」
「ふうん・・・」
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『なんか、すっごいのが出て来ましたけれど。あれ、なんでしょうか?』
アブラシオがビュリアに尋ねてきた。
「ふうん。隠れて作ったんだ。昔から、アニメではこういう風な怪物が出てくる仕組みには、なっていましたからねぇ。こいつは『太陽エネルギー艦』ですね。」
『はあ・・・太陽の真っただ中に入っても溶けないとかいう、あれですか。』
「そうそう。宇宙クジラさんたちは、この技術を持っていました。売ったかな? まあ、彼らは商売人でもある。でも、そのためには相当なエネルギーを払ったに違いない。木星1個分とかね。」
『勝手に売れますか?』
「さああて、何か考えてたんでしょうね。彼らには独自の見方があるから。木星と決まった訳じゃないもの。」
『じゃあ、他になにを? まさか、太陽そのものとか?』
「さあてね。あり得なくもないが、わたくしがいることは解ってるから、そこまではしないでしょうね。太陽系外縁天体全部とかね。」
『はあ?』
「宇宙クジラさんは、買ったら無理にでも、自分たちのモノにする能力があるわ。まあ、キラールちゃんは、勝ちに出た。でも、そうはゆかない、光人間の機能を止めましょう。用意は?」
『警部さんには連絡しまして、準備中です。もうすぐ連携行動がとれます。』
「うん。はやいとこアレクシスとレイミを確保しよう。」
『あの、その二人はどこに?』
「あなたのお腹の中よ。」
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