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わたしの永遠の故郷をさがして 第三部 第一章 第八十二回



 ************   ************


 ウナはアブラシオの中を散歩しているように歩き回っていた。


 アブラシオは、光人間に対する反応が可能なのか?


 これまでの状況から見れば、どうやら対処できていない。


 ただ、相手が女王となれば、侮ることは絶対に良くない。


 すべてを承知のうえでやらせている可能性だってある。


 ウナの意志は、すでにアレクシスに同調していた。


 アレクシスだけでは、どうにも心配でしかたがないレイミも、しっかり、そこにかんでいるけれども。


 一方で、作り物の肉体に制限されないババルオナと、さらにヨウコも艦内を動き回っていた。


 目標は一つ。


 アブラシオの機能を止めること。


 もっとも、収容されている難民を危険に晒すことはしたくない。


 金星人も大勢、乗っているからだ。


 しかし、この船は難敵である。


 大体、構造がまったく良く分からない。


 三人には、アレクシスとレイミの知識が導入されているから、並の科学者のレベルなどは遥かに超えているが、それでもこの船は未知のままだった。


 エンジンがあるに違いないが、どこにあるのかさえ、さっぱりわからない。


 確かに、航行用の指令室はあるが、結局のところ誰もいない。


 つまり、この船は全く無人で勝手に動いている。


 さまざまな計測機器はあるが、コントロールするスイッチや操作卓のようなものは一切ない。


 要するに、普通の方法では、宇宙でのハイジャックは出来そうになかった。


 ウナは、仕方がないので切り札に出た。


 彼女の体は、宇宙クジラの技術で作られた創作物である。


 その体内には、知られざるエネルギーがある。


 使い方にもよるが、太陽を吹っ飛ばすことも可能なくらいの力もある。


 ウナはそのようなことはもともと、意識してはいなかった。


 宇宙クジラは、いざと言う時の為に、半分冗談で仕組んでおいただけで、使うつもりはなかったのだ。


 しかし、アレクシスとレイミは、ウナの意識の奥深くに沈められたこの秘密をも嗅ぎだしていた。




「アブラシオ様!」


 ババルオナの手引きで、指令室に這い込んだウナが言った。


「聞こえてますか。ここにいることは、判ってますよね。」


 アブラシオは、一般乗客からの呼び出しには、基本的には応じない。


 きりがないからである。


 けれども、この場合は例外と見た。


「ウナさん、聞いていますよ。よくおいでくださいました。なにがお望みですか?」


「航行を中止しなさい。一切の戦闘行為は禁止します。ポプリスさんの命令に従いなさい。従わない場合は、ウナは自爆します。これがどういう意味を持つか、お知らせしましょう。」


 アブラシオは、情報を得た。


 詳しい仕組みはよくわからない。


 宇宙クジラが仕組んだらしい、巧妙な仕組みがそこにある。


 はっきりしたことは、もし、内部でウナが爆発したら、さすがのアブラシオも、ただでは済みそうにない、ということ。


 といっても、その機能を解除できる代物ではなさそうだ。


 ウナの体を船外に放逐することも、なぜか、できそうではなかった。


「ヘレナ様と、ご相談します。」


「どうぞ。制限時間は20分です。」


「過ぎたら?」


「破壊します。」


「パルくんが乗っているのですよ。」


「仕方がありません。」


「・・・そう、ですか・・・・・・」



   **********   **********



 この星の生活が、ぎしぎしと言いながらだが、始まった。


 ブリアニデスは、公表した。


『早ければ、2年後に、故郷への帰還を目指す旅を開始する。到着できる可能性は乏しく、またどの時間に到着するかもわからない。


 諸君の元の生活に戻れる可能性は、ほぼないであろう。ここで、永遠に暮らすことも可能だ。ヘレナリア殿は、その保証をしてくれた。この宇宙が存在する限り、ここで生きることが可能だそうだ。


 はっきり言うが、この宇宙の最後まで、なんらかの事故による不慮の死以外は、死は訪れないという。


 新しい家族を作ることも自由である。失業率はゼロ。食料は必要以上のものが用意される。娯楽も。芸術活動も。ここにはないものというのは、ここ以外には、この宇宙にはなにもないこと。それだけだ。


 1年後に、志願者の募集を始める。取り消しや変更は、いつでも認めるが、よく考えて応募してほしい。

 

 一度出発したら、永遠にここには戻れない。強制は一切しない。また専門の相談機関を設置する方針である。


 この予定は、最速のもので、後ろにずれる可能性は高いと思ってほしい。その都度、公表する。


 なお、この時間は火星標準時換算による。』




 

  ************   ************



 
























 
































 





























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