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わたしの永遠の故郷をさがして 第三部 第一章 第七十九回


 ************   ************


 キラール師団の副師団長は、タルレジャ王国の上空に到達していた。


『着陸の許可を願いたい。』


『了解、誘導波を出します。』


 こうしたやり方は、火星と金星で古くから決められていた方法に準じたものだ。


 なぜか、ここだけは、ポプリスと地球間のいざこざの影響を、まったく受けていないように見える。


 副師団長の小型船は、誘導波に乗って王宮近くのエア・ポートに着陸した。


 まったく警備などはしていない感じで、手薄にすぎるんじゃないかと、副師団長が逆に心配してやるほど、のどかな場所だった。


 実際のところは、本来アニーが完璧な警備をしていたわけなのだが、そのアニーがダウン状態になってしまっている。


 そこで、今は、もと火星の警護担当者が、細々と対応し、さらにアブラシオが、掛け持ち警備に当たっていると、そういう訳である。


 ただ、もし本当に誰かが攻撃を行ったりしたら、まず、後悔することになる。


『着陸完了!』


『了解、お迎えが参りますから、それまで、動かないでください。』


『わかったよ。』



 待つこと15分。


 ぼつぼつ嫌になってき始めていた副師団長の目に、3人の人影が見えた。


 それは、ビュリアと、ダレル火星副首相、それに、リリカ火星首相だった。




   *******   *******



「まあ、みなさま、今日は、よくいらっしゃいました。」


 ビュリアが言った。


 副師団長は、思いもかけない歓迎で、いささかびっくり状態であった。


 豪華な飲み物や料理が、美しくも整然と運ばれてきていたのである。


 副師団長は、言って見れば、こうした王宮的な歓迎には、まったく縁がない人物だった。


 マナーというものも、学んだことがない。


 ビュリアにしてみれば、そこらあたりは計算済みである。


 人間というものは、飲み物や食事に弱いものだ。


 少なくとも、友好ムードの演出には欠かせない。


「なんで、こんないいものが、ここにはあるわけ?」


 そこらあたりをちゃんと知っているダレルが、計算済みのちゃちを入れたのだ。


 こうした言い方が、自分には可能だと言う事である。


 たしかに、前女王の息子であったダレルには、他の人間にはない、一種の強みがある。

  

 副師団長にしてみれば、ダレルは敵には回したくない。


「まあ、これらは、アブラシオにおいて製造したものですわ。ここはまだ、不毛の地です。開発には長い年月がかかります。今の内ですよ。この先、食べられなくなりますわ。当分はね。」


「ふうん。まあ、そうだろうなあ。でも、地球が欲しい人は沢山いる。」


「おほん。」


 副師団長が、咳払いした。


「副師団長様は、お酒は何がお好みでしょうか?」


 ビュリアが、相当丁寧に尋ねた


「何でも飲むが、いまは勤務中でありますからな。」


「まあ、それは、だれるちゃんも、リリカ様もそうですわ。しかし、これは外交ですよ。」


「まあ、では、ババヌッキ酒を。弱いので。」


「まあ、お強さそうですのにね。」


 スマートでカッコいい給仕さんは、実は複製人間である。


 洗練されたスタイルで、副師団長のグラスにお酒を注ぎ込んだ。


「じゃあ。乾杯。ビューヨン!」


 『ビューヨン』は、火星の一部地方で使われていた乾杯の音頭である。

 

 そこは、副師団長の生まれ故郷だった。


 ビュリアは、そんなことはちゃんと知ってますよ、と、述べた訳である。


「まあ、お話しながら、やりましょう。地球は、火星の女王様の私有地であったけれども、わたくし、ビュリアに遺贈されたことは、ご存知でしょう?」


「もちろん。」


 野菜をいっぱいにつまみながら、副師団長は言った。


「もちろん、タダで譲れなどとは言いません。対価はちゃんと支払います。」


「しかし、私有地であるにもかかわらず、火星政府は、その法的立場を主張しておりまして、わたくしが地球の所有地を売買することは、差し止められておりますのよ。」


「ほう・・・事実ですかな?」


 ダレルが答えた。


「当然のことです。我々としては、地球も金星も、分割されることを認めることはできない。売買は容認できないのです。」


「ならば、実力行使するまで、ということに、なるでしょうな。」


「ほう・・・あなたがたの師団というものが、どれほどの実力があるのかは、まあ、判っておりませんが。」


「ふむ。ご希望ならば、やって見せますがな。」


「こらこら、直ぐに戦争したがるのは、人類の欠点ですわ。良い方策を探りましょう。実を申せば、わたくしは『青い絆』の一員もしておりました。『青い絆』は、現在空中凍結中のような状態ですが、希望としては、地球の警備団として、火星と協力してゆく考えです。まだ、まとまってはおりませんが、事実上、そうした体制をすでに、取っております。もし、あなたがた『ポプリス集団』が、攻撃なされば、『青い絆』がまず防御に出る考えでいます。」


「ふうん。初めて聞いたな。武器なんか、持ってるのかな?」


 ダレルが、つぶやいた。


「ああ、わたくしは、聞いておりました。」


 リリカ首相がカヴァーしてきた。


「ほう・・・・いつ?」


「だいぶ前です。」


 ビュリアが体を乗り出した。


「まあ、事実、そうした体制になっております。そのための用意は、ございますわ。また、宇宙警察様も、ああして、協力をしてくださっております。そう簡単に攻略は出来ないでしょう。まあ、わたくしも、微力ながら、いざとなれば介入いたしますし。」


「なるほど。まあ、そこですが、キラール師団は、事実上、この私の支配下にあります、大半はね。師団長は、たしかに最上分団を直に握ってますが、数は少ない。私としては、リリカ首相に協力しても良いと思っております。つまり、火星の趣旨に沿って、地球の警護にあたっても良いかと、思うのです。」


「それは、キラール公のご意志ですか?」


 りりカが、尋ねた。


「いや、違います。」


「じゃあ、師団長の?」


「いいえ。副師団長としての見解ですな。」


「ほう。つまり、『そうした』、ご用意があると?」


 ダレルが、いんぎんに尋ねた。


「そうですな。条件は少しだけあるが。」


「どのような、要求ですかなあ?」


「なに、簡単です。それなりの、公式な居場所があればよい。個人的にも、組織的にも。」


「ふうん。火星としては、そうした特別扱いはしたくないですな。災いの元ですからな。ビュリアさんは、どう、お思いですかなあ?」


「そうね。」


 ババヌッキ酒の入ったグラスを、くるくると回しながらビュアリアが答えた。





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