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わたしの永遠の故郷をさがして 第三部 第一章 第七回

 ダレルとリリカ(本体)の乗ったアブラシオは、「ホテル」の上空から「温泉地球」の真上にまで移動した。

「じゃあまあ、行って来るから、留守中お願いしますね。」

 リリカ(本体)が、アブラシオに言った。

『はい。お任せください。しっかり上空に停泊しています。会議中はアニーさんが見張っていますから、何が起こっても大丈夫ですよ。』

「何事も、おかしなことは起こらないでほしいです。」

 リリカ(本体)は本当にそう思っているが、ダレルはこう答えた。

「いやいや、起こるさ。これこそ、地球に於ける人類の争いごとの第一歩なんだから。」

「そういう、意地悪は、もう、やらないでくださいね。人類は実際に、火星と金星を死に追いやった。少し利口になったはずでしょう?」

「君は利口になっただろうが、人類が懲りるはずがないとぼくは思う。ますますたちが悪くなるだけさ。しかし、地球人に期待する気はあるよ。新しいモノには社長さんじゃなくても期待はする。だから火星人と金星人は隔離されるのさ。その意味ではビュリアは正しいと思う。」

「へえ?珍しいわね。ビュリアを、つまり女王様を褒めたの、生まれて初めてでしょう?」

「褒めたわけじゃない。同感だと言っただけ。行こう。」

「はいはい。」

 二人は、超小型の連絡艇に乗って「超豪華温泉ホテル『地球』」に降りて行った。


 一方、もう一台の大型連絡艇が同時にアブラシオから出発していた。そちらには、ブル博士やジュアル博士が搭乗していたし、ユバリーシャ教授もいた。さらに、かなりの数の会議出席予定者が乗っていた。火星の主要な閣僚たちもいた。また、火星に駐在していた金星の大使はじめ、たまたま滅亡時に火星にいた、金星の政財界人もかなり乗っていた。また、久しぶりに見る顔もあった。 

 

 **********     **********


 「ぶっちぎり号」は、間もなく地球に到着する態勢になっていた。

「海賊をきちんと呼ぶところなんざあ、さすがビュリアだぜ。」

 マ・オ・ドクが言った。

「逮捕されなければ、よいですがな。」

 デラベラリ先生が皮肉に言った。

「まあな、しかし、テロリストが参加するくらいなんだから、海賊なんか珍しくもないやな。」

「まあ、そうですかな。」

 

 **********     **********


 「えびす号」は、太陽系の外縁部にいたために、少し遅れていたが、もう間もなく、地球の月に到着するところだった。月の裏側で、リリカ(複写)を乗せてほしいと、女将さんから依頼されていたからだ。

 リリカ(複写)は、「えびす号」で海賊の服に着替えをした。

「まあ、仕方なしですけど、リリカさんにご迷惑を掛けないお約束ですので。お面も、本当に用意しました。」

「まあ、あたしは、そこまであんたに気にさせるビュリアが悪いと思う。」

 片目のジニーが答えた。

「なんだかんだと言っても、結局は「女王」がすべての元凶だ。アマンジャ様を失ったのも、「女王」のせいだから。だから、あたしは、あまり「女王」には感心しない。まあ、と言って喧嘩して勝てる相手じゃないのは、分かってる。また、この先の商売でも、協力しておくことは我々の利益にかなう。あんたは味方につけておきたいしね。頼むよ、不死化の件。あたしは、永遠にかかってでも、アマンジャ様を取り戻す。」

「はい。まあ、ご協力可能なところは何とかします。内緒ですが、「多機能不死化マシン」はすでに月に設置できました。ただし稼働までには、あと半月くらい必要です。ビュリアさんには、もしかしたら見抜かれてるかもしれません。なにしろ、アーニーはなかなか、ごまかせない。」

「ああ、理解はしている。これは、悪事じゃない。お互いのプロジェクトだ。」

「ええ、まあ私としては、女王様からのご依頼事項の解明に役立つ実験のひとつと考えていますから、そこは問題ない積りです。」

「じゃあ行こうかな。」

「はい。準備は完了です。」


 「えびす号」は、月の裏側を飛び立った。


 **********     **********


 「宇宙クジラ」は、地球に向かっていた。

 火星や金星、そうして地球から直接肉眼で見える位置に移動するのは、これが初めてだ。

 火星人にしろ、金星人にしろ、太陽系外生命体に直接接触した事は、かつてない。

 「女王」と「ブリューリ」は別としてだが。

 「宇宙クジラ」は、また自分たちから、この太陽系の生命体に接触しようと考えたことはない。

 しかし、今回は「第九惑星」での珍しい事象を始めとして、非常に興味を持ったのだった。

 いま、土星の近くを通過した。

 

 機能がやっと回復してきていたアニーは、ようやく気が付いた。

『あの、ビュリアさん。』

「なあに、アニーさん。」

『来ましたよ。でっかい「宇宙クジラ」です。現在土星の近傍をゆっくり通過中。』

「やっと見つけたの?」

『やはり、もう見えてましたか?』

「あったり前よ。あなたが役に立たないからね。」

『すみませんです。あ、消えました。』

「ほらほら、木星付近に現れるわよ。」

 いったん姿が消滅した「宇宙クジラ」は、次の瞬間には木星に到達していた。

 屋台の金魚のように、木星の周囲を楽しそうに回っている。

『どういう、精神構造なのでしょうか?』

「そうね、もう世の中・・・いいえ、宇宙の中、楽しくて仕方がない気分ね。彼らには苦悩とか不安とかがない。競争が必要ないから。物を作らないから資源に興味もない。食べ物は、基本的には、美味しい美味しい、宇宙に広がる「謎のエネルギー」だから、当面奪い合う必要もない。アブラシオやあなたには競合相手だけれど、まあたっぷりあるからいまのところ問題にならない。個体数が少ないし、社会関係を形成しないし、上下の関係がないから出世競争もない。性別もないからめんどくさくない。服なんか必要ないから、そこでも悩まない。死ぬと言っても、再生するだけだからそれも悩まない。だから宗教もない。なんのしがらみもない。まあ、いいことずくめね。」

『いやいや、何か苦しみがあるはずですよ。生き物ならば。痛いとか、かゆいとか。』

「ああ、なるほど。でも、全然感じない。わたくしも、長く「宇宙クジラ」やってたけど、それも感じたことなかった。」

『ええ?じゃあ、なんで、やめたんですか?絶滅したのではないようだし。』

「宇宙クジラは、プロキシマ・ケンタウリ付近に存在するだけじゃあない。あれは、末端の移住組で、本体はもっと遥か彼方の宇宙の奥の奥のそのまた奥の奥。そこで、楽しく絶滅した種があるのよ。」

『楽しく絶滅? またアバウトな。』

「まあ、これは概念よ。絶滅自体が苦痛ではなかった。説明は難しいけれど。言葉で言えば、そう言うことになる。」

『ふうん。理解不能。』

「まあ、いいわ。でも珍しく、この世界の生命に興味を持ったってわけね。よほど、美味しかったと見える。」

『美味しい?』

「そうなの。宇宙クジラにとって、異次元のドアが開くときに発生するエネルギーは、最高の、お御馳走なの。このところ、わたくしが頻発させたからね。自然界ではめったに起きないの。第九惑星に、わたくしがいるのを見つけたから、あのあたりを、お散歩していたんでしょう。おかげさまで、お礼として人類の移住を認めてくれたわけ。ありがたい事でしょう?もっと、みんな、わたくしに、感謝してほしいものよね。」

『ふうん。人間には難しいでしょうねえ。あまり、バケモノには、感謝しない性質だからなあ。』

「悪かったわね、バケモノで。」

『いや、失礼。はずみでした。会議、出ないんですか?』

「む、話題をそらしたな。まあ、あまり災いの種は、しゃしゃり出ない方がいいでしょう。でも、きっと呼ばれることになる。そうじゃなければ、人間たちは許さないでしょう?」

『それでも、許されないでしょう。袋叩きの上、二重のごみ袋に入れられて、月曜の朝に、「ごみ」ステーションに投げ入れられますよ。きっと。』

「ええ、そうね。」


 **********     **********


 ところで、我々がすっかり忘れていた「それ」がいた。

 「それ」は、あの時宇宙の彼方に旅立ったが、しかし、プロキシマ・ケンタウリ付近で様子見をしていたのだった。

 別に、悪意があるとか、邪な想いを巡らせていたとか、そういうことではない。

 『あまり遠くには行くなよ』、と、分裂させた方から言われていたからだったのだ。

 どちらが、より「それ」の本体に近いのか?

 そのことについては、「それ」自身が知るところではなかった。

 自分が分裂させた「子」は、いつでも回収できる。

 つまり「分裂」された「それ」は、どこにいても回収されることがある。(しなくても構わない。)


 宇宙のどこにいても、そのことに変わりはない。

 しかし本当の「それ」は、全ての「子」を、即座に回収できる。

 自分が「本体」だと「絶対的」に知っている「それ」は、勿論「それ」だけである。

 しかし、やっかいなことに、例外は除き(あなたは私の「子」なんだからと最初から聞かされている場合。後世の「道子」はその典型的な例外である。)、普通はみな自分が本体だと思っている。

 だから、この「それ」も、ずっとそう思っていたわけだ。


 ところで、ビュリアに取りついている「それ」は、この分裂をさせた「それ」だったのだろうか?

 そこのところは、まだ分かっていなかった。


 **********     **********

 

 



 















































 

  ************ 道子さんとの会話 3-1 ************



「幸子さんが、ずっと、居ついているようですが、大丈夫ですか? あまり、ご無理があるようなら、お姉さまにお願いしますよ。」

 幸子さんは、向こうの部屋でお饅頭を食べ、お酒ぱっくを飲みながら、テレビで野球中継を見て、手を振り回して騒いでいた。足元には、お饅頭の空包みと、ぱっくが散乱している。

「いえいえ、もう楽しくてありがたいですよ。あの通りなので。」

「まあ、幽霊ですから、問題はないでしょうけれど。わたくしも、心配はしておりますの。」

「ああ、それはどうもありがとう。」

「ところで、今回、わたくしの名前が突然出てましたが? わたくし、お化けのように言われてますけど、不本意ですわ。わたくしには、ちゃんと自意識がございます。「取りつかれてる」ということだけで、世間様の噂が立つと迷惑ですわ。ちゃんと客観的に、科学的に明確に説明していただかないと。」

「あいかわらず、見た目と違って、はっきり言いますねえ。」

「それは、どうも。個性ですわ。」

「まあ、おいおい、やりましょう。道子さんが再び登場するのは、まだだいぶん先ですし。」

「そうそう、それも、心配ですの。生きててくださいね、たとえ、どなたにも、まったく読んでもらえなくとも、きちんと最後まで書き終わるまでは、生きててくださいな。」

「まあ、生きてないと書けないですから。がんばろうとは思います。」

「もともと、わたくしは、もっと素朴で、純情な女の子だったのです。確かに昔から天才でお金持ちではありましたが。大人しくて、かわいらしくて・・・いったい、いつから宇宙生命体に取りつかれるようになったのか、不思議で仕方がございません。」

「まあ、自然な、なり行きで・・・。」

「お姉さまも、文句言いたいと言っておりましたから、次回は来ると思いますわ。」

「はあ、わかりました。覚悟してお待ちします。怖いですからね。」

「はい、そう伝えておきますわ。」

「いえいえ、そこはご勘弁を、どうぞ、よしなに・・・」


































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