わたしの永遠の故郷をさがして 第三部 第一章 第七十七回
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美しい場所だった。
太古の地球に、このようなエデンの園のようなところがあったということは、科学的には、まったく解明されていない。
この天国的な情景が、タルレジャ王国から始まって、2憶5千万年後にまで伝説として伝わったということは、ちょっと考えられないことだ。
それでも、ダレルとリリカは、わが目を疑ったのだ。
「これはまた、なんと、良い場所かしらね。火星でも見たことがないわ。なぜ? こんなことが。」
「どうせ、ヘレナのもたらす幻影さ。実体なんか、なんにも、無いに違いない。」
「でも、これは明らかに物質だわ。錯覚じゃない。この木も、花も、あの海も。そして、あの宮殿もね。あれは、まさに、火星の王宮そのものじゃない。なんだか、もっと奇麗になってる感じがする。きっと、太陽に近いせいね。」
「だから、幻影なんだよ。すべてがそうなんだ。だって、これまでに、何回も見て来ただろう。」
「ううん・・・そうかな。」
「そうだよ。もしかしたら、ぼくらはもう、生きていないのかもしれないね。」
「ばかな。ほら行くわよ。副首相さま。」
「はいはい、首相殿。」
ダレルとリリカは、明るい光に、くっきりと浮かび上がる王宮に向かった。
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出会う人すべてが、二人に敬意を表して挨拶して行く。
服装は様々で、特に共通するものは見られない。
暑すぎもせず、肌寒いと言う事もない。
ほとんど、大方、露出状態の女性や、パンツだけの男性もいれば、火星の派手な民族衣装の人もいる。
金星人は、合理性と調和した美を重んずる。
通常は、比較的ビジネススタイル的に質素だが、何かの祭典とかになると、思いっきり派手になる。
火星人のシンボルである、角や牙は、金星人に配慮してか、通常は、ひっこめているようだった。
もちろん、ここは、今は昼間である。
二人は、いかにもS.F的、異世界的な情景に、愛想よく答えながら、王宮の正門に到着した。
アブラシオが、直接王宮の中ではなくて、明るい屋外に、ふたりを送転したのは、ビュリア=へレナの指示だったことは、あとから聞かされたことだ。
気分的には、悪いやり方じゃあなかった、とダレルも思う。
確かに、人間は多かれ少なかれ、気分屋であるのだから。
正門に、かつてのような衛兵はおらず、その代わりに、ビュリアが出迎えに出ていた。
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ウナは、意識がやっと、はっきりとしてきていた。
ここは、アブラシオの中なのだが、そう、聞かされなければ、そんなことはわからなくて当然だ。
パル君は、ずっと付き添っていた。
「パル君、元気?」
ウナが言った。
「うん。元気だよ。すべてうまく行った。ママは金星から解放されたよ。」
「そう・・・よかった。ここは、どこ?」
「ああ、どうやら、また、アブラシオさんの中なんだって。でも、ぼくらは、まったく動いていない。おかしなことだね。でも、ウナは心配いらないって。」
「そう。マヤコさんは?」
「さっきまで、ここにいたけど、お腹空いたって言って、食堂に行った。もう、いちんち、あんまり食べてかったから。でも、ウナが大丈夫そうになったから、ババヌッキ茶と、ジャヤコガニュアン・ステーキ、食べるとか言ってた。」
「そう。あなたも、食べてないんじゃない?」
「まあね。でも、ドリンク飲んでるから問題ないよ。マヤコさんが帰ってきたら交代する。」
「ふうん、ありがとう。でも、行っても大丈夫だよ。」
「うん。まあ、すぐさ。」
こうしたやり取りを、そっと空中から眺めていたものがいた。
光は見えていない。
『光人間』は、光るとは限らない。
それは、かつて、ババルオナだった『光人間』である。
すでに、変貌して時間がたってきた。
人間としての意識や感情は薄らいでいて、『光人間』としての自覚が支配しているが、記憶が無くなった訳ではないようだ。
ウナも『光人間』だが、『宇宙クジラ製』の体が、モノを言っている。
しかし、その意識の中核は、アレクシスとレイミが、握っているのだった。
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