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わたしの永遠の故郷をさがして 第三部 第一章 第七十六回


 ************   ************



 キラール公の副師団長は、まだ出来たばかりのビュリアの王国を包囲した。


 もっとも、ビュリア自身は、表向き、不在である。


 ビュリア自身は人間だから、実際に出かけたままなのだ。


 しかし、ビュリア内部の本体は、そう言う訳でもない。


 その意図するところによって、どこにでも『存在できる』のだから。


 なので、ビュリアの本体は、こうしたやり取りも、実際には見ていたのだ。 


 ただし、それは『存在』、と言うべきではないのだけれども。


 ビュリアの留守を預かっているのは、キャニアだった。


 『青い絆』からは卒業し、『タルレジャ教団』に入信していたわけである。



  **  **  **



「キャニアさん、北島全体が包囲されてますよ。」


 防空担当の信者が、キラール師団の動きを察知していた。


 彼もまた、『青い絆』の出身者だ。


 王国の防衛を当面担当しているのは、タルレジャ教団に入信した、元火星王宮の軍関係者や『青い絆』の出身者なのだ。


 つまり、こうした事にかけては、事実上のプロだった。


 しかし、火星王国が消滅した当時の閣僚たちの多くは、ビュリアの王国の運営には関わっていない。


 というよりも、排除されたと言うべきである。


「降伏勧告してきました。」


「お断りしてください。ここには干渉しないように、伝えてあげてください。」


「了解。・・・・・・・・・・・ええ、30分以内に降伏しないと、攻撃するんだそうです。」


「あらま。無駄ですよ。とお伝えください。ホテルやパレスで、金星側がやってみたのだから知ってるでしょうと。」


「了解。・・・・・・・・・・ええ、現在『キラール砲』という新兵器を準備中とのこと。そいつをつかうと、すべての防御は無効となるぞ、と、言っております。」


「はあ・・・じゃあ、こっちは『ビュリア砲』を使うぞ、と、お伝え下さい。あなた方みんな、アッと言う間に消えますよ。と。」


「了解・・・・・。え、・・・・・話し合いしたいと、言ってきております。副師団長自らが赴くと。ビュリアさんと会いたいと。・・・・・・そう言っております。」


「はあ・・・・・ちょっと待て、と、お伝え下さい。相談します。」


「了解・・・・・・・10分待つとのことです・・・・・。」


「まあ、気の短いこと。」


「通信終了。あの・・・」


「はい?」


「ビュリア砲って、なんですか?」


「いま、作ったのよ。」



 ********   ********



 しかし、キラール公は、実際に『キラール砲』の発射準備を整えさせた。


 こうした『重厚長大武器』の弱点は、たいがい、手間がかかることである。


「効くと思うか?」


 キラール公がポプリスに尋ねた。


「あなたが作ったんでしょ。」


「まあね。でも、使う相手がいなかったからなあ。どきどきするな。」


「ほら、やってみなさいよ。」


「了解。じゃ、『キラール砲』発射準備!」


『準備、よし!』


「じゃあ、ちょっと、遠慮気味にやれ、出力5%。発射!」


『出力5%、了解。設定完了、スイッチ、オン!』


 ポプリスの巨大軍艦から、上空側に、まったく目には見えないが、大きな衝撃波が走った。



  ***   ***   ***



 それは、分度器のように天空に広がり、やがて、最大到達点を中心にして、こんどは円形に、ただし月だけは、なぜか上手に避けながら広がった。


 巨大な花火みたいな感じである。


 その範囲は、非常に広くて、地球との中間地点よりも、さらに先まで到達していた。


 警部2051の、真っ青な『本部』は、この直撃を受けた。


「おわ!なんだ、なんだ?」


 こうした衝撃は、かつて、あまり味わったことがない種類のものだ。


 ビューナスが消滅したときに観測していた力とは異質なもので、あきらかに中身の問題が違う。


「くそ。機能不全だ。ありえない。この警察本部は、特殊な形質だ。外部からの影響はほとんど受けないはずなのだが。地球の人間には、まだ、こうした知恵はないと見ていたが・・・おかしい。・・・あららら。お手上げです。入れ知恵してるやつがいたかな。まずいなあ、逃げられてしまうなあ。ビュリアさんに、申し訳がないなあ。」



 **********   **********

 


「月の周辺で、異常なエネルギーらしきを、検知しました!」


「なんだろう?」


 キャニアが、大きな空間画像を眺めながら、彼女なりに、かなりいぶかった。


「こりゃあ、見たことないものだなあ。宇宙警部の本体が巻き込まれてます。あ、ポプリスの巨大軍艦が浮上!」


「そりゃあ、まずいわね。ちょっと、ビュリアさんと相談する。」



 **********   **********



「ふうん・・・まあ、それはそれで、キラールちゃんが精いっぱい頑張った訳よ。いいわ、会ってあげようじゃないの。」


 ビュリアが答えた。


『そやつ、何か企んでおるぞ・・・人間的にはおもしろいことであろうな。まあ、見ないでおこう。』


 ヘレナが内心『ほくそえんで』いた。



 **********   **********



「くそ。また、ぼくらは除け者にして、勝手に、なにかやってるに違いない。」


 ダレルが、また歯をぎりぎりしている。


「あなた、最近、その癖がひどくなってるわ。一気に老化したんじゃないの?」


 リリカが皮肉った。


「ばかな、君に、歳をとらないようにされたんだぞ。」


「ふふふ。まあね。聞いてみましょうよ、ね、アブラシオさん。何やってるの? ヘレナ様は?」


『ああ・・・つまり、ポプリスさんが新兵器を使いまして、警部さんの包囲を突破しました。一方で、キラール公の師団の副師団長が、ビュリアさんとの会見を求めておりますのです。』


「じゃあ、そこに僕らを入れるように、ビュリアに要求する。きさま、無視するな、と。そう、言ってくれますか?」


『了解しました。伝えます。・・・・・・・・そのままを、確かに、お伝えいたしました。・・・・・・あの、『どうぞ。』と、いうことです。』


「ふん。えらく、あっさりと、答えたじゃないか。」


『あなた方お二人を、『新王宮』に送達いたします。』


 二人は、アブラシオ内から消えた。




 ************   ************





















 



 

 

  







































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