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わたしの永遠の故郷をさがして 第三部 第一章 第七十四回

 

 ************   ************



「なぜ、救われたのかは、アレクシスには分からないのである。」


 『光人間』アレクシスは、そう述べる。


「それは、アレクシスや、レイミの意志とは、なんら、かかわりあいが、ないのである。」


 レイミもまた、そうだ。


「レイミも、まったく同じく、わからないのである。なのだ。」


 とはいえ、『光人間』を作り出したのは、ほかならぬ、レイミ博士だった。


 ただ、ふたりとも、『光人間』化する過程で、精神的に大きな抑圧を受けたおかげだったのか、人格的な変化を起こしてしまった。


 それでも、レイミ博士は、ビューナスの指摘を受け入れながら、さらなる改良を行った。


 それによって、現在は『光人間』化の過程での人格変貌は、最小限に留めることが出来るようになった。


「いくらか、残念ではある。」


 アレクシスは、しかし、そう述懐する。


「『光人間』の個性、というものが感じられなくなったのである。」


「そうなのである、だったりもする。」


 レイミ博士が、アレクシスの後追い表現を止めなくなったのも、アレクシスに言わせれば、『個性』なのだ。


「『光人間』の統制は、簡単に可能なのであるのである。ただし、それには『号令』がかかる必要があるのである。それは、ビューナス様によって定められたことであるのである。」


「そうなのである。だったりも、する。」


「集団的な統制も、個別の統制も、できるのである。ただ、それは、いつも行うものではないのであるのだ。ということなのである。」


「そうなのである。だったりもしたりする。『光人間』は、『個』であると同時に、『全体』でもあるのです。」


「先に言わないように、してほしいのである。」


 ウナも、当然、その『個』のひとつだったわけだ。


 

 **********   **********



「皆さんは、この先どうなさるのですか? ここで、定住ですか?」


 のりちゃんは、見た目よりもはるかに気性がしっかりとしている。


 キッチンが行方不明になったという報告に、ショックは隠せないものの、それでも、もうさらにその先を考えていることは、間違いが無かった。


 もちろん、軍事的な最高機密をナナやダンクが知っているはずもなかったのだけれど、それでも、総統からの意向は、全住民に伝えられていた。


「この惑星で、将来にわたって生活するもよし、しかし、新たなる冒険に踏み出す計画もしている。もし、金星に帰りたいという意向がある者は、やがて招集することになるだろう。考えておくように。」


 ふたりは、この話を、のりちゃんと、その父親にも伝えた。



 **********   **********



 会議は、静かに始まった。


 金星側からは、ブリアニデス総統を始めとして、情報局長や重鎮たちがずらりと並んだ。


 後方には、事務担当者が多数、控えている。


 ヘレナリアの意向で、下準備に奔走した『局長』や『指令』も、末席だけれど、前方の席に着いている。


 しかし、この不思議な惑星側から出席したのは、ヘレナリアだけだった。


 それは、当然予測されたことでもあったが、それでも金星側は、側近とか、という存在が、まだ現れるかもしれないと考えてもいた。


「さて、進行役は、当面、わたくしが行います。あしからず。」


 ヘレナリアが言った。


「わたくしは、ヘレナリア。みなさまの、御案内役であり、また、この惑星自体でもあります。では、皆さまの自己紹介からどうぞ。」


 金星の習慣からして、総統は自己紹介をしない。


 そうしたことがらは、すべて情報局長の仕事である。


「ああ、こちらが、我が、ブリアニデス総統閣下であります。」


 ブリアニデスは、軽く顔を動かしただけである。


 それでも、大変なことだったのだが。


 しかし、ヘレナリアは、『すべて承知している』という表情で、ほほ笑んだ。


「総統閣下。この度は、ようこそ、この惑星に。」


 情報局長は、前列の重鎮たちに、一人ずつ挨拶だけさせた。


 そうして、さっさと本題に入ろうとしたのだ。


「ああ、ヘレナリア殿には、多くのお世話になっております。そこは、幾重にも、感謝申し上げるところであります。ときに・・・我々は、非常に戸惑っておるのです。つまり、ここは、どこなのですか?」


 あまりに、とっぴな質問だと言う事は、情報局長も理解してはいるが、それでも、まずここを聞かなければ、どうにも話しが進まない。


「それは、おそらく、皆さまが、もうよくご存じのことです。ここは、『宇宙』であって、わたくしにとって、唯一ここだけの『宇宙』です。この『宇宙』には、この太陽と、その周囲にある、この惑星だけしかありません。ほかには、この宇宙空間が広がるのみです。どうしてそうなのかと言われても、回答は不可能です。この『宇宙』では、それだけしか誕生しなかったのですから。」


「でも、あなたは、我々の生活習慣や文化を知っていた。言葉も、食料も。なぜですか?」


「それは、判るからです。あなた方が、この宇宙に現れた時から、判っていたのです。なぜかと言われても、回答できません。そうなっていたのですから。」


「なぜ、そうなっていたのですか?」


「それが、自然だからです。この『宇宙』は、あなた方の『宇宙』とは、おそらく違う法則で成り立っています。わたくしは、この『宇宙』であり、この『星』です。それは、あなた方という存在とは違うなにかです。」


「我々の宇宙とは違う『宇宙』があることは、理論上わかっていたのです。物理法則も違うだろうと考えられていました。だから、そのこと自体には、衝撃は少ないのです。しかし、では、なぜ我々はここに来たのか?あなたは、『火星の女王』と関係があるのですか?」


「あなたが言う、『火星の女王』さまという方との面識はございません。しかし、その存在とわたくしが、誕生時に、もしかたら、なにか、かかわっていた可能性は否定できません。ここにあなたがたを送り込んだのは、その『火星の女王さま』と考えるのが、妥当でしょうし、正しいのでしょう。しかし、それ以上は回答不能です。わたくしには、あなたがたを、他の宇宙に移送する能力はございません。残念ですが。」


 情報局長は、さらに尋ねた。


「あなたは、この宇宙で生まれたのでしょうか?」


「さあ、わかりません。あなたは、ご自分がお生まれになった時の記憶がありますか?」


「いや・・・。しかし、我々は人間だが、あなたはそうではないらしい。」


「そうでしょう。でも、わたくしから見れば、あなた方は、わたくしとは違う、異質なものですから。」


「ふうん・・・・。」


「そのことについては、わたくしにはそれ以上答える能力はないのです。しかし、あなた方には、わたくしにはない能力があるようです。ここで、ご自由に研究なさって構いません。必要なもので、可能なものは、すべて提供いたしましょう。いま、わたくしは、ここでの生活をなさるにあたっての、細かいご希望などをお聞きしたと思います。」




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