わたしの永遠の故郷をさがして 第三部 第一章 第七十三回
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「あらま、地球上の人間はみな脱出したみたい! これも、結局はシナリオ通りなのかな?」
ポプリスは、いささか拍子抜けしたようにつぶやいた。
「まあ、切符買って乗ったんだから、きちんと行き先までは行かなければ。」
キラール公は平然としている。
「そうだね。じゃあ、占領させてもらいましょう。でも、我々がここから脱出できないと、意味ないわね。」
「ああ。もうひと仕事だね。」
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警部2051は、いささか困惑ぎみになっていた。
「なあんか、おかしいよなあ。どうも、筋が通らない。ビュリアさんは、なぜあっさりと地球を撤退したんだろう? 仕方ないよなあ。この際、ぼくのほうで打開してさしあげようかな。まずは、様子を聞いてみようかな。 ビュリアさん、ビュリアさん、こちら『警部2051』応答願います。」
『はいはい。聞こえてますよ、警部さま。』
「これは、どういうことなのでしょうか? このままだと、地球は奪われますよ。もっとも、大将を確保しているから、まだこっちが優勢ですがねぇ。もしよろしければ、ぼくが手を入れますが。」
『そうですわね。警部さま。あまりに多くの方が人質状態になるのは避けたかったのです。でも、ポプリスちゃんたちの御一行は、地球上で立ち往生となります。わたくしが、地球を閉鎖します。出ることも入ることも、もうできませんわ。自分たちが掛けた鍵はそのまま有効です。なにも使えない状態のママですから。いい気味ですわ。」
「はあ・・・いやあ・・そりゃあ、なんか意地悪ですなあ。」
『はい。お互い様ですわ。』
「しかし、このまま、にらめっこでは困るでしょう。こちらの人質を消去する事は簡単ですが・・・。職務上そうした事はやりたくないのです。仲裁しましょうか?」
『まあ、警部様。思ってもみないご援助です。是非お願いいたします。さすが警部様ですわ。どうも、あの娘と仲良くするのは、嫌なのです。まあ、やはり、見るだけで身の毛がよだつのですもの。』
「ははは。いやあ、ははは。」
人(?)の良い警部は、それでも、まんざらでもなかったのである。
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「なんか、変ですなあ。」
デラベラリ先生が言った。
「変かな?」
「変ですよ。ドク。女王・・・お嬢とポプリスの争いだけでこうなっているのか、というと、どうも、疑わしいんですなあ。どうやら、もうひとりか、ふたり、誰か、カンでるんじゃないか。と、ぼくは、思うのです。勘ですがね。」
「だれ?って、だれだ?」
「さあてね。まず考えらえれるのは、当然、消えてしまった、前の『女王』ですな。これまでの話では、前の女王は消滅した。それ以上の情報は、はっきりとは開示されていないでしょう。」
「ふん。消滅していない。とな?」
「まあ、姿なき怪人ですからね。疑ってしかるべきだ。それから、更に気になるのは、『光人間』ですよ。」
「うむ。そうだな。そこは失念していたな。」
「でしょう。彼らはすでに存在していた。確実にね。でも、その実態も実力もまったく分からないです。」
「うん。そうだな・・・あやつはどうしているかな。」
「ジニーなら、第9惑星に向かったようですな。」
「そりゃあ・・・『光人間』に関してかなあ・・・」
「そうでしょう。たぶん、きっとね。彼女も、そこを疑ってるんでしょう。」
「ふん。じゃあ、こっちは、地球に降りられないかな。」
「それが、どうやら遮蔽されていて、近づけないようなのです。」
「ほう・・・面白い。わかった。じゃあ、金星に行こう。」
「はあ? あそこには、何もないですよ。」
「温泉さ。地下のね。君なら、降りられるだろうが?」
「まあ、たぶん。」
「よっしゃ! あそこには、何かがあるに違いない、と見た。勘だよ。カン!」
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『光人間」の指導者は、言うまでもなく、アレクシスとレイミである。
しかし、このふたりは、ビューナスと共に『真の都』に消えてしまったはずだった。
しかし、実はそうではなかったのだ。
アレクシスとレイミは、『真の都』に入れなかった。
『女王』によって、入口から排除されてしまい、よくわからない異空間に封じられてしまった。
それを、助け出したのも、『女王』だった。
ただし、『女王』は、ひとりではない。
現在、ビュリアに入っている『女王』は、火星が怪物ブリューリによって征服された時に、分身を残して脱出した、元『女王』である。
その分身は、永い間自分が分身だとは、知らなかった。
『女王』は、分身を自由に形成でき、また吸収も、できる。
ただし、自分が作った分身以外の分身の吸収は出来ないのだが、総元締めと言うべき、『真の女王』は、全ての分身を自在に回収できる。
問題は、誰が『真の女王』なのかは、今のところ解っていない、ということである。
この宇宙には、ビュリアの中の『女王』と、お情けで回収を免れたその『分身』がいる。
ほかにいないのかと言うと、実は、絶対的な事はわからない。
ビュリアの『女王』は、自分が『真の女王』だと思っているが、それは『分身』もそうだったのである。
アレクシスとレイミを追放したのは『ビュリアの女王』だったが、解放したのは『分身』の方だった。
そうして、それは、実は『分身』には、本来、出来ない事の、はずだったのだが・・・
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