わたしの永遠の故郷をさがして 第三部 第一章 第七十二回
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ポプリス艦は『月』の裏側に連れて行かれてしまった。
「地球が見えないのは残念だな。」
キラール公は、なんでも第3者的に、人事のように言うのが、むしろ普通である。
「見える位置でやってもらおうじゃないの。」
「そうだな。わが艦隊をそのように並べよう。」
「こらこら、あなた達、何考えてるのよ。」
ビュリアの到着であった。
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ババヌッキ茶が入った。
豪華なお菓子も出た。
ビュリアにとっては、最低限の接客条件である。
「ふうん。まあまあね。どこで、これ仕入れるの?」
「自家製ですよ。何でも作る。何でもある。故郷以外は。」
「ふうん。なるほど。で、本題ですが、地球にあなた方の基地を置くことはできません。これは譲らないからね。ただし、第9惑星ならば、認めてあげましょう。」
「ばかな。あそこなら今と変わらない。今の方が良いくらいだわ。ね?」
ポプリスがキラール公に振った。
「まあ、そうだね。どっちにしろ最初からやり直しだが、あそこは、その割に合わないな。しかも、非常に危険な放射線がたくさんある。それに、どうやら、人類の変種が生まれているようだ。ぼくのシュミではない。」
「まあ、ご存知でしたか。」
「あたりまえでしょ。そう言うところが、嫌いなのよ。」
「それはどうも。じゃあ、相当に譲りまして、土星の衛星当たりならどうかな。木星でもいいわ。生命の誕生にふさわしい場所もあるし、開拓の技術なら援助しましょう。やり方によっては、地球に匹敵する環境も作ることが出来るわ。」
「いいえ、地球じゃなきゃ、駄目よ、だいたい、女王さまがお約束なさったのです。ちゃんと、電子契約書もありますよ。ほら。ね。」
ポプリスは、その契約書のデータを空中に掲示して見せた。
「公式なモノよ。どこにも、瑕疵はないわ。」
「まあ、だから、偽物ですわ。わたくしが言うのだから、間違いございませんわ。女王であるわたくしが言うのですもの。この、契約を交わしたのは、わたくしの分身その1でしょうけれど、すでに、女王の代理としての権限は抹消しました。」
「それが公にされていなかったのだから、無効です。あなたには責任を取る責任があるわ。ちゃんと履行しなさい。」
「ほほほ! 女王に対して言えることではないわ。」
「うそ! 契約不履行! 仕方がないから攻撃しましょう。じゃあ、まずもう1隻の金星の軍艦を破壊します。」
ポプリスは、持っていたボタンを押した。
ウジャヤラ・ナイトが爆発した。
その最後の一瞬に、アブラシオは乗り組員全員を回収したが。
「やったわね。いいわ。受けて立ってあげようじゃない。」
「こらこら、君たち、やはり、会うとすぐに、そうなるなあ。冷静に話し合いたまえよ。」
キラール公が仲裁しようとしたが、所詮、無理な事だったのだ。
もっとも、ヘレナの本体自体は、元から感情など持っていないから、きわめて冷めた状態のままである。
ビュリアとポプリスの対立が、大変に興味深かったのだ。
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「ウジャヤラ・ナイト爆破しました。」
通信士官から報告が上がった。
「ううん・・・ビュリアはなにやってるのかしら?」
そう言ったリリカの前に、そのビュリアが出現した。
「うわ。ビュリアさん、心臓に悪いわ。」
「あらま、失礼。アブラシオに、あの連中を攻撃させます。少し、遊んであげなくちゃね。」
「ポプリスの本体は?」
ダレルが尋ねた。
「月の裏側に、警部さんが持って行ったわ。あのキラールくんの精鋭部隊とやらを、まず壊滅させましょうほどに。」
「ビュリアさん、もう、人命は失いたくないの。」
「あらそう。いいわ、じゃあ、乗り組員は拘束する。アブラシオさん、あの艦隊の、全乗り組員を回収。残りの船は全部、この宇宙から消去しなさい。」
「了解・・・いいんですか?」
「あなたの提案よ。」
「はい。確かに。では、行動します。」
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「来るぞ。何かがね。」
キラール公が言った。
「あなたが、準備は出来てると、言ったのよ。」
「ああ、見てなさい。面白いから。」
その瞬間に、キラールの師団は、この宇宙から消えた。
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「月近傍の、宇宙艦隊は消滅しました。」
地球事務所の通信士官から、報告がすぐに上がった。
「あああ、やっちゃった。すっきりね。」
ヘレナが、簡単に言った。
『いえ、あの、ヘレナ様、わたくしではありません。その寸前に、すべて消えました。・・・・非常事態です。地球の周囲に、ポプリスの艦隊が現れました。大気圏突入しました。対処不能。攻撃あります。』
「防御しなさい!」
地球上の、全エネルギーが、消費不能になった。
『防御はしましたが、すべてのライフラインが稼働不能です。約30分以内に、地球上の人間は、ほぼ全員死亡します。原因不明。なおも、対処不能。』
アブラシオが報告してきた。
「やるじゃない、ポプリスちゃん。」
ヘレナは、ちょっと嬉しそうにささやいた。
「冗談じゃないよ、それじゃ、全滅だ。復興も出来ないぞ。」
ダレルが叫んだ。
「アブラシオさん、人類全員回収!」
『了解。』
地球上のすべての人類は、アブラシオに回収された。
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