わたしの永遠の故郷をさがして 第三部 第一章 第七十回
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「こちら、アブラシオです。なんかすっごいのがいっぱい出て来ました。どうしますか? ヘレナさま。ひと思いに、やってしまいますか? たぶん、すごく甘く見られてますよ。あなたは『永らく』、本気を見せてないからかと思いますが。」
アブラシオが、珍しく自発的に、そう言ってきたのだった。
「あなた、アニーさんの影響うけてない?」
ヘレナが尋ねた。
「そうですね。この際、いくらか吸収しましたから。」
「はあ・・・仕方がないな。ポプリスちゃんとお話をしましょうか。つなげるかな?」
「それはもう。呼び出します。」
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「ビュリアさんからの通信が来たわ。出ていいと思う?」
「そりゃあ、君、出るべきだと思うが。」
ポプリスはキラール公にわざわざ確認をした。
極めて、珍しい事だったが。
「了解。・・・こちらポプリス。お久ぶり・・・かな。」
『どうも。さっそくですが、言っておきますが、わたくしあなたに協力要請なんかしてないからね。』
「はあ? まあ、『あなたじゃない』かもしれないけれど、女王様からの依頼だったんだからね。暗号通信だったから間違いないわ。」
「やっぱりね・・・それはきっと、古い番号から、かかった電話じゃないの?」
ビュリアは少し皮肉った。
「まさか。ちゃんと確認しました。間違いなく『女王様』からのものです。」
「ふうん・・・それは、少し意外な。そこまでは、分からないはずなんだけどな。まあ、しかし、いずれにせよ、それは、『女王』からでは、ありませんの。撤退してくださいな。」
『冗談じゃないわ。ここまでやったんだ。成果なしに撤退なんかできないわ。約束通りに、地球に本部を置かせてください。』
「いやです。」
「じゃあ、攻撃しましょう。」
二人はすぐに、険悪な雰囲気になる傾向にあった。
「待て待て!」
キラール公が割って入ってきたのだった。
「ああ、ビュリアさん、久しぶり。」
『ども。一応、お元気のようですわね。』
ビュリアは、キラール公が嫌いだった。
「ぼくは、一応元気です。まあ、この際、久しぶりにお会いできないかな。非公式に。」
『あなたがたと、『公式』、と言うのはありませんから。ふうん・・・まあ、良いですわよ。いま、大げさな戦闘はしたくございませんの。実はね。じゃあ、すぐ、そこに行きますから。』
ビュリア=ヘレナは、会議場での時間を無駄に経過させない範囲で、嫌いなキラール公と大嫌いなポプリスと、会いに出かけた。
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「ウナ、大丈夫かなあ?」
パル君が心配そうに言った。
マヤコは、出来るだけ柔らかく、パル君に応えるように心掛けている。
大胆な事もするパル君だが、さすがに神経質になっている。
「あなたのおかげで割と早く帰れたし、ママのことも、どうやらうまく行ったようだよ。ウナの体は大丈夫だと先生もビュリアさんも言っているし、この際、ゆっくりと休ませてあげましょう。人間には、どんなときにも休息は必要だよ。2~3日寝たらよくなるさ。」
「うん。そうだね。きっとね。」
パル君はパル君で、マヤコを気遣っている。
それは、マヤコにもよくわかるのだ。
『まあ、いずれにせよ、この子は、ただ者じゃあないな。』
そう思う、マヤコだった。
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ほぼ全員が、シェルターに無事避難し、会議は中断してしまった。
しかし、議長は陰で、解決策を模索していたのだ。
彼は、まずブル博士とジュアル博士に、それぞれ個別に話をしようしたのだ。
両方一緒だと、どうしてもブル博士が話を引っ張ってしまうからである。
実際、カタクリニウク議長は、ブル博士という人は、ジュアル博士がいない時の方が紳士的に話ができると見抜いていた。
『ブルさんは、恰好良くしたいところがあるからな。』
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これだけ大勢の人がシェルターに避難しているとなれば、その食事や健康管理は大事である。
パレスの『ムヤマさん』は、大忙しになった。
『ホテル地球』の料理人さんたちと、さらに『温泉地球』の番頭さんとも協力しながら、食事や飲み物の提供に奔走していた。
火星や金星の空中都市のような食料提供の体制は、ここにはない。
資源も限られている。
『ホテル地球』にしろ『温泉地球』にしろ、これだけの人間の食事提供は前提にされていなかった。
実のところ、そこはアブラシオが大いに補っていた。
そのアブラシオが、ポプリス対策で行ったり来たりし始めている。
「この際、人工肉やら、昆虫食も入れなければなるまい。まてよ、野菜が足りない。この際、超速成栽培法を実施しよう。味は落ちるが仕方がない。しかし、あまりやり過ぎると、評判を落とすな。味付けも考えなくてはならない・・・。ドレレッシングが足りないな。」
野菜の超速成栽培ならば、朝、植え付けて、昼には食べられる。
大味になるが、仕方がない。栄養価は十分にある。
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