わたしの永遠の故郷をさがして 第三部 第一章 第六十九回
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5分では、ポプリス艦からの指令は本部までは届かない。
どっちにしても、ポプリスにとっては、まだ、もう少し、いささか多めの『間』があったほうが気は楽だった。
ついでに言えば、ダレルを殺したくはなかった。
今後の禍根になるからだ。
また、シナリオでも、それは避けられるはずである。
つまり、女王は、ダレルを殺す事態は絶対に避けるはずである。
30分待つと言いたかったが、シナリオでは、5分になっていた。
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『降伏なんか、絶対になしだよ。リリカさんが言うように、どういう入植も認めちゃいけない。』
ダレルは強硬に言った。
『まあ、そうなんだけどね。』
その通信に割って入ったのが、警部2050である。
『お二人とも心配ない。現在あの船はぼくがしょっぴいた状態です。連中は、内部から包囲を破壊しようとしていて、いろいろやってみてる。確かに優秀な人たちですな。半日かからずに破れるかもしれないが、しかし、それはそれだけで、違う性質の『膜』ですぐにおおってしまうから意味はないです。ただし、そンな説明はしてないですよ。そこで、お尋ねです。どうしたいですか? 消滅させることも簡単ですが、それだと殺すことになりますが。まあ、ぼくの側しては、立派な公務執行妨害ですから、可能ですが。生かしておきたければ、このまま火星とか金星とかにしょっぴくこともできますよ。推進装置を破壊してね。』
『ふうん。火星も金星も放射性物質で覆われている。まだあまり近づきたくはないなあ。そこに放置するのは気が進まない。といって地球にお招きするのは本末転倒ですね。』
ダレルが答えた。
『そりゃもう、元の場所に帰しましょうよ。』
リリカが言った。
『帰すのは良いが、すぐにまた出てくるだけだよ。全船を破壊できる?』
『まあ、それも、多分、できますがね・・・』
『ちょっと、貴方がた待ってくださいな。』
ビュリア=へレナであった。
『でたか。』
『妖怪みたいに言わないで。ダレルちゃん。』
『十分妖怪じゃないか。』
『こらこら。あのね。わたくしが指示できる立場ではないけれど、もしよかったら、地球の月の裏側に一旦降ろしてあげてもらえないかなあ。』
『なんで?』
『それがね、ダレルちゃん。どうも、これには裏があるのよ。そこをはっきりさせたい。それがまず第一。
それにね、まあ、そうは言ってもキラール公は親戚だし。ポプリスちゃんとも、仲は悪いけど、知らない間柄でもない。【昨日の敵は今日の友】 ね!?』
『ね!? と言われても困る。』
ダレルが反発した。
『ああ、まあ、今の状態ならば、地球の衛星に降ろしても、問題はないでしょう。いざとなれば、次の策もある。もう、逃げられないですよ。』
警部がはっきりと言い切った。
『ほら、警部さんも、そう、おっしゃるし。』
『ふうん。まあ、いざとなれば『破壊する気が』あるのなら。同意しましょう。いかが、リリカ首相?』
ダレルが確認を求めた。
『まあ、『暫定的に』、と言う事であれば、いいでしょう。地球に関しては、主権も定まっていないから、あまり偉そうには言えないし。』
「よっしゃ、まあ、なんとなくは、決まりましたね。では、月の裏側に誘導します。』
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「ねえきみ。動き出したよ。」
「ええ、わかってる。どこに持ってかれそうかなあ?」
通信士が報告してきた。
『現在、未知の力に誘導されていて、抵抗不能。手が出ません。どうやら、地球の衛星に連れて行かれそうです。』
「はあ。思ったよりも、強力な相手のようだね。こりゃ、全面戦闘になるかも。」
キラール公は、まだ本を読みながらつぶやいた。
「ヘレナは、何考えてんだろうかな? やはりわたし、嵌められたのかなあ。」
「さああて、やがてわかるさ。まあ、いいんじゃないの。やっと楽しめそうだし。」
キラール公は、まったく動じない、不思議な人物だった。
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ようやくポプリス艦からの指示が届き、ついに、キラール公お抱えの『師団』が動き出した。
これまで、『公式』に戦闘に出たことはない。
まあ、顔を見せたら、相手は逃げてしまうからだが。
ポプリス艦級の戦艦が5隻。
金星のウジャヤラ・アルファ級の攻撃艦が10隻。
その他、小型艦多数。
搭載艦多数。
全艦出動というのは、初めてであった。
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アニーがダウンしているので、最初に検知したのは、警部2050のパトカーだったのだ。
『ああ、お知らせします。』
警部がダレルに通報した。
『なにやら、多数の攻撃型宇宙船が太陽系の辺境域から出て、地球方向に進行開始しました。先の例から見たら、すぐ来ますよ。これ、映像です。』
『むむむ。なんだこれは?』
『こんなもの、いっぱい、作ってたんだわ。あの連中。』
『おいおい。本気で戦争する気かな。こっちの手持ちは、はっきり言ってないよ。』
『わたくしが、頑張りましょう。』
アブラシオが手を挙げた。
『私もいます。微力ながら。』
ワルツ司令が入ってきた。
『いや、だから、そこにはいっぱい難民が乗ってるだろうが・・・』
『問題ございません。ビュリアさんの許可さえ出れば。』
『いや、だから、そう言う問題じゃないだろうに。』
『そんなこと言ってられないわよ。ダレルさん。』
リリカの顔色が変わってきている。
『まあ、とにかく、この連中は、即、月の裏側に『幽閉』いたします。人質であります。こうなったら。』
警部2050が宣言した。
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