わたしの永遠の故郷をさがして 第三部 第一章 第六十八回
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ダレルが乗船していた金星の軍艦と警部2050の本体は、ポプリス艦に容赦なく攻撃をかけていたが、
一部外壁の破壊はできるが、中身には傷ひとつ付けられていない。
「むむむ。地球人にこのような物が作れたとは驚きだ。」
警部2050は、いささか感心してもいた。
もっとも、ビュリア=ヘレナと同じように、相手を完全破壊するのは、どうも気が進まなかったのである。
やろうと思えば、簡単だと思ったのだが。
しかたがないので、ポプリスの巨大宇宙船を、大きなシャボン玉のような『膜』で取り囲んだのだ。
警部以外の、外部からの攻撃は効かなくなるけれど、内部からも手が出せなくなる。
ポプリス艦は事実上、どっちにしても、無力化されたような感じになった。
しかし、それは地球上の一般の人々にはわからない。
「攻撃がやんだぞ!」
シェルター内の人々は、少し歓喜の声を上げ始めた。
彼らは、地球上の施設が全く無傷だと言うことだけは、認識できていた。
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「攻撃できなくなったね。」
キラール公は呑気に言っている。
「ふん。ここからが本番よ。通信をつなぎなさい、リリカを呼び出して!」
『了解』
通信士官が応じて、地球側に連絡を行った。
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「リリカ首相に応じるように言ってきてますが。ダレル副首相に回しましょうか?」
「いい。出るわ。」
「了解。つなぎます。」
リリカは、地球事務所の指令室にやってきていた。
「こちらリリカ。通信開始します。」
『おやおや、やっと登場ね。リリカさん。さっさと降伏しなさい。まだやる気?』
「ほう。それは、こちらのセリフです。さっさとお家に帰りなさい。」
『ばかね。冗談じゃないわ。死んだって動いてやらない。いいこと、いまこの宇宙船はある種のエネルギーに囲まれている。すぐには出来ないけど、たぶん半日もあれば自力で解除できるわ。アブラシオさんに聞いて御覧なさい。金星の宇宙船は、大部分我々が製造したもんだ。こっちは、あの二隻の自爆キーを握ってるわよ。ダレルさんが乗ってるんでしょう。すぐ、どかん!よ。いいのかなあ? 逃げる間は与えてあげるわ。』
「うそでしょう。脅しよ。」
『おっと、じゃあやってみようかなあ。まず一隻めからね。ほら。』
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「指令、自爆装置が作動しました。爆発まで10分。」
通信担当が叫んだ。
ワルツ司令は、データを確認して、躊躇なく叫んだ。
「総員退艦! 急げ!」
『総員退艦! 総員退艦!』
大きな警報音と共に、全艦内に指令は響いた。
訓練は行っている。シュミレーションでは、9分で全員が退艦できるはずだ。
1分で、ぎりぎり安全圏まで逃げ切ることが可能だ。
上手く行けばだが。
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「指令、ナイトが自爆します。」
「んな。ばかな!? なんで?」
タンゴ指令が驚いて、指定席から半立ち状態になった。
「まだ分かりませんが、自爆装置が自主起動しました。退艦命令が出ています。」
「救助活動に回れ!」
「了解。自爆まで5分。」
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「あんた、なにしたの!」
リリカが激しく抗議した。
『だから、自爆させるんじゃない。もったいないけど、まあ仕方がないわ。避難はできるでしょう。見てなさい。次は二隻目行くわよ。回答次第ではね。』
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『ヘレナ様、ウジャヤラ・ナイトが自爆しそうです。』
アブラシオが報告してきた。
「ばかね。全員、アブラシオに転送収容しなさい!」
『了解。実施中・・・・・・・完了しました。アニーさんは、休養ですか? 食べ過ぎみたいですが。』
「まああね、完全停止されたら回復に10年かかってしまう。それはいやだからヘルプモードにしたわ。まあ、相手もそこが狙いなんでしょうよ。でも、警部さんもいたんだし、最初から、あまり自分だけで気張らなくてよかったかなあ・・・と、思いました。よけい、ややこしくしてしまったわね。」
『警部さんは、ビュリアさんにアピールしたかったみたいです。』
「へえ! そうなの?」
『はい。あの方、ビュリアさんに恋してますから。わかってるんでしょう?』
「さあね。まあ、でもポプリスちゃんが先よね。あいつ、何が欲しいのかな。」
ビュリアは、赤い色の光に覆われた、例の隠れ自室に、だれにも黙って帰ってきてしまっていた。
ここが一番落ち着くから。
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ポプリス艦の中である・・・
『くそ。あなた、なにが望みなの?』
リリカの問いかけを一旦無視して、ポプリスは状況確認をしていた。
「おやあ、金星艦の乗員たちが出てこないわね。自決でもしたのかな。まさかね。さては、『お嬢』が手を出したかな。それはシナリオにないな。」
「罠じゃないかなあ。」
キラール公がつぶやいた。
「まあ、そういうこともないとは言えないけど、あまりにざーとらしいわね。まあいいわ。やってみよう。この際だから。」
ポプリスは、再びリリカとの通信に戻った。
「あああ、りりかさん。じゃあ要求を言います。地球に我々の本店を移設します。場所を提供しなさい。」
『はあ? それは拒否します。そんな事認めたら、もっと多くの勢力が同じことを言いだすわ。絶対拒否。』
「じゃあ、女王に聞いて見なさいよ。」
『なんで? 聞く理由なしだわ。拒否。』
「あ、そう。じゃあ、可哀そうだけど、もう一隻も自爆させるわ。こんどは逃げる時間なし。スイッチ、オン・・・」
『ちょっとまって。ちょっと待ちなさい。話し合うから。ちょっと待ってよ。』
「ふん。じゃあ5分ね。いいわね。気が変わったらごめんなさいね。」
そこで、ついに時間切れとなり、『ウジャヤラ・ワン』は大爆発を起こした。
その様子は、地球からも見えたほどの威力だった。
シェルター内は、騒ぎになった。
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ポプリスは通信を切った。
「なあんか、ヤッパリ怪しいよな。ぼくの軍を出そう。威嚇だよ。まだね。」
「そうね。じゃあ、はでに出て来てくださる?」
「はいな。」
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