わたしの永遠の故郷をさがして 第三部 第一章 第六十四回
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マオ・ドクとジニーは、会場の二階席を、もともとそれぞれ、まとめて陣取っていた。
陣取っていたというよりは、ビュリアが始めから用意していた、ということだけれど。
親分の再登場で、ゆったりとくつろいでいた子分どもは、またまた緊張感に包まれたと言うわけである。
「やれやれ、あまり好きじゃねぇんだよな。こういう場所は、なあ・・・」
マオ・ドクがデラベラリ先生に向かって言った。
ちょっと口元が歪んでいる。
「大昔の学校を思い出す。」
大宇宙海賊マオ・ドクも、かつては学校に通ったことがあるらしかった。
「そですか? ぼくは 嫌いじゃない。」
デラベラリ先生は、あっさりと答えた。
「あんたは、優等生だったんだろうよ。」
「まあ、博士号も持ってますからね。」
「めでたいことだな。」
「そうです。」
「ふん!」
マオ・ドクが鼻を鳴らしたとたんに、『ぶっちぎり号』からの連絡が入ったのである。
『親分。ポプリスちゃんが出て来ましたぜ。』
「ややや。来たか! もう来ないかと思ったがな。くそ、落ち着いたばかりなんだぞ。しかし、そいつはお
嬢の危機だ。拾いに来い、行くぞ!」
『あいさ!』
マオ・ドクが隣のブースを見れば、ジニーは、とっくに、いなくなっていた。
「あいつめ。素早い事だけは変わらんな。」
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警部2051の部下たちは、金星の二隻の軍艦と、『ド・カイヤ集団』の間に割り込んで戦闘が起こらな
いようにガードしていた。
「あいつら、邪魔ね。」
空間スクリーンを眺めながらポプリスがつぶやいた。
「ちょっと、試してみたらいかがか?」
キラール公が火星猫の喉元をなでながら言った。
「ふん。挑発してみよと、おっしゃるの? いいわ。おもしろい。」
ポプリスは命じた。
「あの、まるっこいのを攻撃しなさい。消しちゃいなさいませ。」
『了解、攻撃します。』
『ド・カイヤ集団』の巨大旗艦から、再び目には見えない光線が発射された。
警部2051の宇宙パトカーの内、3機が瞬間消滅した。
残りはうまく回避したが・・・
2発目が発射され、さらに2機が消滅した。
『あやや。こりゃあ、抜かったか。甘く見たかな。こっちは警察だ、応戦は義務である。よっしゃ、攻撃せ
よ!』
警部2051の意志が命じた。
警部の『宇宙パトカー』は、たちまち数ミリくらいの大きさに縮小した。
事実上見えなくなった。
『自ら消滅しました! なんだろう?』
上昇志向の副艦長が一瞬困惑した。
「ばか。大きくなったんだから、小さくもなるんだ! 攻撃されるわ。防御!」
ポプリスが大声で指示した。
しかし、それと同時に大きな衝撃が走った。
『四番艦が大破! 相手の姿が捕らえられません。金星艦からも攻撃されてます。』
「ばか。突っ走れ、ここでごたごたしてる場合じゃないわ。全体防御したまま突っ走れ!」
『了解。』
『ド・カイヤ集団』の残りの軍艦たちは、文字通り巨大な『旗艦』の周りにコバンザメのようにくっつき
ながら、猛スピードでの体当たりに出た。
「おわあ。ぶつかってきます、指令、ちょっと相手が大きすぎる。」
ウジャヤラ・アルファの副艦長が叫んだ。
「攻撃しろ。ぶっ壊せ! 突っ込め!」
タンゴ司令が無茶苦茶な指示を出した。
その様子を眺めていたワルツ指令は、例によって回避行動に出た。
「タンゴさん。まずいよ。超大型トレーラーに体当たりされたら、この船だって持たない。」
ダレルが進言した。
「口出し無用!」
タンゴ司令がはねのけた。
巨大艦に向けて総攻撃をしながら、アルファは、突っ込んでゆく。
警部の宇宙パトカーも、その攻撃に加わっている。
『ド・カイヤ集団』の軍艦が、もう一隻、旗艦から離れて、動けなくなった。
しかし、両者はぐんぐんと接近していた。
「間をすり抜けろ!」
タンゴ司令が叫んだ。
それでも、もう回避は無理・・・、そう思えたが・・・・
突然、その巨大旗艦は急停止した。
アルファの指令室では、指令以外の全員が、すっかり固まってしまっていた。
巨大な相手の船体が目前にまで来ている。
「みろ、止まった!」
タンゴ司令がうなりを上げた。
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「出たか!」
ポプリスが、なんとなく、うれしそうな声を出した。
宇宙のはるか前方に、さらに巨大な姿が浮かび上がったのである。
アブラシオだった。
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