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わたしの永遠の故郷をさがして 第三部 第一章 第六十一回


 ************   ************


「さて、委員会はさきほど、『協力者』のリストを提示いたしましたが、これは、この後の状況も加味し


て、さらに変更が行われることになるでしょう。もちろんまだ事情を聴くべき方々は残っておりますから。


まず、『青い絆』についてです。ここに、リーダーさんか、サブの方はいらっしゃいますかな。」


 議長が呼びかけた。


 アダモスが立ち上がって、手を上げた。


 しかし、反対側でもうひとり、いやふたり、立ちあがったものがいたのである。


 さらに桟敷席でも。


 それは、当然、カシャとアンナ、それに、ニコラニデスであった。


「ほう・・・3人いらっしゃいますか。2階席で立ち上がった方がいらっしゃいますな。では、いい


でしょう。みなさん壇上にどうぞ。」


 4人は客席から、ひな壇に上がってきたのである。



 ***   ***



「さて、それぞれ、まずは、自己紹介してからお話して、ください。」


 椅子は4つ、舞台に用意されていた。


 まず、アダモスが立ち上がった。


「私は、アダモス。元、『青い絆』のリーダーです。ただし、現在のリーダーではありません。それは、か


れ、ニコラニデスであります。しかし、かれがリーダーになったのはつい先日で、創立からずっと指導者と


して関わってきたのは、このアダモスであります。そうして、常に私を支えてきてくれたのが、カシャと、


アンナです。」


 会場が少しざわざわした。


「とはいえ、特にアンナには、さまざまないきさつが伴っています。これをここで述べるにあたっては、リ


リカ様の同意が必要になります。それと、アンナ本人のですが。」


「ああ、よくわからないが、リリカさんいかがですか?」


「わたくしは、同意します。ただ、カシャさんとアンナさんのほか、もう一人同意を得る必要があります。


お名前は奇しくも私と同じアンナさんです。会場にいらっしゃるでしょう?」


「ほう、もうおひとりのアンナさんですか。いらっしゃいますかな?」


 もう一人のアンナは、覚悟したように手を上げた。


 周囲の人々は、かなり驚きながら、なんとなく黒づくめの彼女を見た。


 その姿は、あまりよく見極められないような、ぼやっとした感じだ。


「はい、認めます。」


 うめくような声がした。


 再び会場はざわついた。


 リリカは、もうひとりの自分については、当然に、あまり公開したくはなかったのだ。


 しかし、ビュリア=ヘレナからは、『隠し立てはしないように』との、声ではない指示が来ていた。


 従う以外にはない。


 ダレルは、相当、懐疑的な感じがしていた。


 はたして、民衆の理解が得られるのかどうかは、よくわからなかったからだ。


 混乱させるだけではないのか?


 まあ、しかし、ビュリア=ヘレナに、今ここで反発してみても、まあ、仕方がない事だとも思ったが。


  

   ***   ***   ***



 全員の了承が得られたことから、アダモスは続けて話した。


「もともと、『青い絆』の創設を図ったのは、ビューナス様ご自身でした。」


 すぐに、会場は沸いた。


 特に、火星人側からは、口笛も吹かれていた。


「しかし、実のところ、その裏側には、怪物ブリューリが、つまり、火星の女王様が控えていたことは、間


違いが無いと、ぼくは思っています。」


 会場内は、今度はもう、大騒ぎになった。


 怒号が飛び交った。


「お静かに。興奮しないでください。ここは、厳格でありたい場所ですぞ。」


 カタクリニウク議長が一喝した。


 これが功を奏するところが、この人の並ではない能力なのである。


「ああ、それは推測ですな?」


「そうです。非常に確度の高い推測です。」


 また会場内が少し沸き上がったが、先ほどまでは行かなかった。


「証拠がありますか?」


「いえ、物証はない。しかし、ビュリアさんがいますから。」


「なるほど、いいでしょう、あとでビュリアさんにお伺いしましょう。じゃあ、続けてください。」


「はい。つまり、ぼくは、『青い絆』は、ブリューリの指示により、火星の女王さまの意を受け、ビューナ


ス様によって創設されたと、ぼくは考えています。ビューナス様を創造したのが女王さまであると言うこと


が明らかになった以上、それは極めてあり得ることですよ。もちろん、ぼくは直接には関わっていません。


当時私は、金星の大学院で医学の研究をしていましたが、臨床よりも、むしろ工学的な、人間の脳の機能


に関する制御に興味がありました。


 つまり、人間の脳の中の記憶や、意識というようなものを、他の脳などに移転させる技術です。きわめて


ある種、異端的で、倫理的には問題があることは認めますが、この研究は、ビューナス様の目に留まってい


たのです。そこでぼくは、秘密裏に軍事関係の資金を獲得していました。これは、金星の最高階層の人たち


にも知られていなかった。情報局長でさえ知らなかった。はっきり言えば、ビューナス様と、ごく少数の僕


の仲間と、研究アンドロイドしか知らなかった。カシャは、その仲間のひとりでした。彼は、学者ではな


かったが、まあ、幼なじみというか、ぼくの精神的な共同者というか、ある種の理想を共有する人です。つ


まり、火星に自由をもたらし、金星との惑星合同を図り、戦争も飢餓も差別もない、公平で、理想的な太陽


系世界を築くこと、であります。アンナは、ぼくの妹で、カシャの恋人でありました。まあ、結論から言っ


てしまえば、そこをブリューリと火星の女王様に付け込まれ、ビューナス様にも利用された、というのが、


本当のところだったのでしょう。ただ、ビューナス様に関しては、いまだによくわからないのです。それ


が、独自の理想、あるいは野望だったのか、それとも、結局のところ、火星の女王さまの意志のままだった


のか。不明です・・・・」


 アダモスは、一旦、そこで話を区切った。


 用意された水を、上品なコップから飲んだ。


「いい水だな。」


 アダモスは、つぶやいた。








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