わたしの永遠の故郷をさがして 第三部 第一章 第六十回
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『いらっしゃってくださいな。』
お嬢からの連絡文が届いた。
「きたか!」
マオ・ドクは、地球上に降りることにした。
その前に、彼は『片目のジニー』に連絡を入れたのだ。
『そっちにはきたか? 今どこにいる?』
ジニーからは、すぐに返事が返って来たのだった。
『地球さ。もう会場に入った。あんたも来るなら、覚悟して来るがいい。』
『あたりまえさ。お嬢の為ならな。』
『あんたが思うほど、相手は思ってくれてないぞ。』
『わかってるさ。片思いだって、それでいいのさ。おれは、恩義は忘れねぇんだ。』
『律儀な事だ。』
『あんただってそうだろう? アマンジャに義理立てしてるだろうが? うん?』
それ以上の返事は、もう当然来なかった。
「先生行くぞ。」
「あいよ。」
マオ・ドクとデラベラリ先生は、地上に降りた。
「おれたちが帰れなくなったら、おまえら勝手にやれ!」
部下には、かなり好い加減な指示を残して。
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もうひとりのリリカは、軽く変装して、『地球ホテル』に、ゆったりと滞在していた。
彼女に気を遣うものは、ここには、誰もいない。
もっとも、素顔をさらしてしまったら、話は違ってくるだろうけれども。
「さてと、行きますか・・・」
彼女も、再び会場に向かった。
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なんとなく、もうすでに忘れられた存在のようなカシャは、会場外の縁日で、販売係のアルバイトをして
いたのである。
しかし、その仕事を、元『青い絆』の仲間に替わってもらって、そそくさと会場内に入った。
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キャロンは、引き続きホテルの警備担当を、ある意味勝手に続けていた。
給料が出る保証は、まったくなかったのだけれども。
バンバは、しかし、行かないと言う。
まあ、彼が呼び出される可能性は、あまり高くはなかったし。
それならば、キャニアが指名される可能性も、もう、さっぱりと、なさそうだったのだけれども。
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マヤコはあまり気が進まなかったのだけれども、パル君とウナを部屋に残したまま、会場に向かった。
女将さんと番頭さんも一緒だった。
『温泉地球』は、もうひとりの番頭さんが仕切っていた。
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ウナは、自分に与えられた体から、脱出することが出来なかった。
これは、仕方がなかったのだ。
一旦脱出したら、元には戻れなかくなるのだから。
女王さまのように、自由自在という訳にはゆかないらしかった。
まだ、この体は必要なのだ。
パル君の行く末を、ちゃんと見届けたいからだ。
彼女は、ベッドの上で、大人しく、中継を眺めていた。
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アダモスは、会場に入ることをためらっていた。
彼が受けた心理的なストレスは、予想以上に大きかったのである。
しかし、まあ、変装という訳ではないものの、あご髭をはやしたままで、大きなサングラスに目深な帽
子というスタイルで、ようやく会場内に入り込んだ。
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ババヌッキ社長とその奥様、と、娘さんたちは、外で遊んでいたのだが、その時、社長が申し渡したので
あった。
「さて、時は来たかな。ちょっと、入ってみようじゃないか。」
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ユバリーシャ教授も、ふらふらしながらだが、会場に戻った。
タンゴ司令もマズルカ指令もだ。
パル君の付き添いだった、タベとウベナ、バヤンアも、すでに一緒に会場入りしていた。
ムヤマさんの顔もある。
カヤ・ガイクンダもいた。
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カタクリニウクは、最初からずっと二階席の一角を、独占させてもらっていた。
おつきの者もちゃんと控えている。
『青い絆』の幹部たちである。
リアルもいた。
アンナは、カシャにくっ付いてきている。
警備員もいた。
そこは、さすがに、新しい『首相候補』であり、それなりに扱われていたのだ。
まあ、潜在的な危険人物という側面も、全く、ないわけでもなかったし。
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もちろん、そのほかの、大勢の関係者たちが、この会場に集まってきていた。
人々は、重要な時が近づいてきていることが、もう十分、解っていたのだから。
『異界』に入り込み、生還後、犯罪者として囚われたあの連中は、拘束室で中継を見ることが許され
た。
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アムル医師と、他の医師や看護師たち、またあの恐怖の料理長は、時間と空間が全く異なる『地獄』の
住人である。
しかし、その中継はきちんと届いていた。
ただ、このことが、たとえばアムル医師が、弘子たちと出会った時期の、前なのか後なのか、そこはな
かなか問題だったのだが。
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会場に来ていない関係者や、火星と金星の元住民たちは、アブラシオの中や、新王国や、それぞれの居
場所で中継に見入っていたのだった。
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「それでは、別途検討されていた、怪物ブリューリと、女王による、『火星と金星、空中都市の破壊問
題』に関する、『協力者』の候補者として上げられることとなった人々の名簿を発表いたします。
これは、会場内で配布されるほか、会場の外にも、ペーパーを一斉に設置します。
評決が行われるのは、明日午後5時の予定でありますが、延期される可能性も相当あります。念のた
め。」
議長が声明文を読み上げた。
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会場内には、目には見えないものの、光人間化した人たちも、存在していた。
彼らの特性は、人間からは、すでに大きく変化してきていたのだが。
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『真の都』は、この世界とは隔絶した『場所』である。
彼らは、こうした『現実』の出来事とは、まったく無関係であった。
けれども、ヘレナの意志によってのみ、何らかの形でこの世に舞い戻ることは、実は可能だったのであ
る。
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