わたしの永遠の故郷をさがして 第三部 第一章 第五十九回
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ビュリアは、さらに続けた。
「もし、その結果、わたくしの、この星での存在がまだ許されるのならば、やがて火星と金星の再興を行
う事を誓いましょう。ただ、それは、遥かに先の事にはなりますけれどもね。しかし、わたくしは、お約
束はけっして、破りません。」
「たわごとだ。」
ブル博士は、こんどは吐き捨てるように座ったままで、言った。
「功績が全くないとは言わない。女王の治世は恐ろしく長かったからな。しかし、犯した罪は、あまりに
大きい。たとえ、怪物に操られていたとしても、その罪は消えない位にだ。」
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会場には、ちょうど、警部2050が入ってきていた。
人間形態に戻っている。
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手を挙げた人がいる。
「はい、あなた、どうぞ、おやあ? あなたは・・・自己紹介してどうぞ。」
「はい、失礼します。火星大使をいたしておりました、金星人、本名はアルフレッド・キョトウでありま
す。」
「これは、前大使殿、どうぞ。」
「やなやつが出て来たな・・・、」
ブル先生がジュアル博士にささやいた。
「堅物だ。」
ジュアル博士が片目をつむって半分だけ同意した。
この二人は、実のところ、古くからの親友である。
「ああ、もし、この場もまだ、法という秩序に支配されているのであれば、ビュリアさんの罪を軽々に問う
事は問題です。彼女が、いまだに何者かに支配されているのであれば、その実態が罪を受けるのは当然とし
ても、その実体がまた、ブリューリに支配されていたとなれば、罪を負うのはまずブリューリであります。
しかるに、この化け物がすでに成敗されたとなると、有力な証拠がない。罪に問うのならば、ブリューリに
支配される以前の女王でありますが、これは、火星の現行法においても、金星においても、その成立以前で
あり、今、ここで罪には問えません。したがって、乗り移られて行った行為が、罪となるかどうかだけが問
題なのです。もし、本人にその行為の実行について、なんの責任もなければ、当然、罪には問えないであり
ましょう。しかも、その実態が、もし長年の、火星の女王様そのものであるならば、人間ではないと言う事
になり、ならば、害獣として処分される以外に法的な方法はないが、それが幽霊のごとく実体がなく、殺す
ことも、捕らえることできないものならば、法による処分は不可能です。」
「そんなことは、わかっとる!!」
ブル先生が、弱みに突っ込まれた上司のように言い放った。
これは、彼の口癖のようなもの、でもあったが、当然に、嫌われる原因にもなっている。
「ええ、冷静にしてください。」
会場のざわざわが、もう長く、ずっと続いていた。
「ええ、議長としては、現状では司法機関は動いておらず、最終的には当初提案したとおり、この場で結論
を出す以外にはないと判断します。ああ、発言したい方は、どうぞ。」
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いくつか発言はまだあったが、要するに、ビュリアや『ママ』の中に、本当に何者かが潜んでいるのか?
そこが、まずは問題である。
それが確認できたら、あとは、選択しかない。
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1 『処刑』・・・可能なのかどうかが分からないが。やってみる。
2 『追放』・・・太陽系から永久追放する。これも可能かどうかわからないが、やってみる。
3 『自主退去』・・・2と同じようようなもだが、本人を信用して、そこに任せる。
4 『条件付き容認』・・・何らかの今後、貢献すべき事項などを決めて、地球での存在を容認する。
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そうして、その後には、『協力者』の処置を決める事、である。
まだまだ、時間は、相当かかりそうだった。
『協力者』として、誰々を認定候補者とするか、の作業は、別の作業班が行っている。
会場の人たちからも、すでに指名投票がなされた。
これは、言ってみれば、見せしめにもなり得る大きな問題だった。
それこそ『魔女狩り』にも、なるかもしれない。
だから、原則として、公的な役職のない一般人は、排除することになっていた・・・。
ただし、『テロリストや宇宙海賊等は、当面排除しない。』であったが。
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