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わたしの永遠の故郷をさがして 第三部 第一章 第五十七回


 ************  ************


『ヘレナさんヘレナさん!』


「なあに、アニーさん。」


『通信が来ました!』


 あまりに自己の機能をここに集中させ過ぎて、外部とつながらなくなっていたアニーが報告してきたのである。


「まあ、ようやくですわね。どなた?」


『警部2050さんです。』


「ん、まあ。そこに頼んだか!」


『みたいですね。回答してよいですか?』


「当り前よ、他に手がないわ。『地獄で仏』よ。」


『はあ? なんでしょうか、その言葉は?』


「いいの。つないでくださいな。」


『とりあえず、数字のカウントだけして来てます。』


「じゃあ、回答しなさい。」


『了解・・・・・・回答しました。音声通信準備完了。』


『あああ~、温泉は良いなあ♪ 楽しみだなあ♪~ 聞こえてますか?こちら宇宙警察、担当2050より。』


「まあ、警部様、ご機嫌ですわね。」


『これは、ビュリアさん。よかった、ご無事ですか?』


「ええ、ありがとう、警部さん。なんとか。でも、ここに三人閉じ込められてるの。『ママ』の人格転移をしてるんだけど、フリーズしてしまってね。助けてくださる?」


 当然の事だが、警部はビュリアに恋をしていた。


 職務柄、そうした事に気が付くことがないように努めてはいたものの、さすがにそうもゆかなくなっていたのである。


 ビュリア=ヘレナ=女王が、そこに気が付かないわけがない。


 ヘレナは恋などしない。


 ビュリア本体は、違うのだけれども。


『どうしたらいいでしょうか?』


 警部は尋ねてきた。


「わたくしの中継をしてくださればよいのです。このまま、この通信を維持してください。わたくしが『ママ』のフリーズを解除します。」


『それだけ?』


「それこそが、最も重要で望まれることです。」


『いいでしょう。ご自由にお使いください。』


 ヘレナは、閉じ込められてしまっていた領域から、広がっていった。


『ヘレナさん、ウナの体が崩壊しはじめてますよ。回復不能になるまで、20分も持たないですよ。』


 アニーが、告げて来た。


「わかった、急ぐ。」


 ヘレナ=ビュリアが答えた。


 ウナが、苦しそうにあえぎながら、倒れて行く・・・。




 **********   **********




「ビュリアさんは、隠れてしまったと見えますなあ。」


 ブル博士が皮肉った。


「あなたが、やたら、責めるからでしょうかなあ。彼女は、そうは言っても、多くの火星人や金星人を救った。」


 ダレルがうやむやに返した。


「いやいや、ここで攻めなくて、どうしますか。救った数以上に、殺したのですよ。」


「やれやれ・・・意思の疎通もあやしいものね、この二人は・・・」


 さすがのリリカも、もう呆れぎみになってきていた。


 ここ1時間ばかりは、演説するブル博士、あいまいな回答をするダレル、のやり取りが、ひたすら続いてきていた。


 議長のカタクリニウクも、こうした非生産的な議論は、いいかげんに打ち切りたかったのだが、いまここでは、そうもゆかない。


 時間制限は事実上ないのである。


 双方が納得するまで、やるしかない。


 多くの聴衆は、それでも熱心に聞いていた。


 ゆるがせには出来ない事であると、概ね、みな、そう考えていたからだ。


 退屈した人や子供は、外の市場や特設公園に出かけている。


   ***   ***


 そこに、突然声が響いた。


「みなさま、大変、お待たせいたしましたあ!」


 ビュリアが、帰ってきていた。



 **********   **********



 ウナは、『温泉地球』の医療室内のベッドに、寝かされていた。


『危機一髪でしたね。』


 アニーが空中から、そう言ってきていた。


「まあ、いきさつが、まだよくわからないが、助かってよかったですよ。」


 警部2050がウナと、その横に座り込んでいるパル君を眺めながら言った。


 女将さんと、番頭さんとマヤコが、心配そうにのぞき込んでいる。


 ロボット医師が、こう告げた。


「まあ、これで大丈夫でしょう。ぼくも始めて見る症状ですがね。多くの細胞が崩壊しかけていたが、回復してきています。次の学会への報告の為に、データが欲しいですなあ。」


「あら、学会なんて、まだ、あるの?」


 マヤコが尋ねた。


「まあ、そのうち、またきっと、できるでしょうから。」


「はあ・・・さすがロボット先生。気が長いわ。」


「ははは、では、まあ、このまま休ませてやりましょう。」


 ウナとパル君を残して、他の皆は、静かに部屋を出て行った。



 **********   **********



「まあ、どこに、雲隠れしたのかと思ってましたよ。」


 ブル博士が、再びひどく皮肉った。


 ジュアル博士が、その横で、また軽く失笑している。


「失礼。でも、ひと仕事しましたよ。みなさま、『金星のママ』を連れて来ました。」


「ええ~!」


 会場全体が沸き上がった。


 登場したのは、もちろん、アバラジュラであったけれども。




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