わたしの永遠の故郷をさがして 第三部 第一章 第五十七回
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『ヘレナさんヘレナさん!』
「なあに、アニーさん。」
『通信が来ました!』
あまりに自己の機能をここに集中させ過ぎて、外部とつながらなくなっていたアニーが報告してきたのである。
「まあ、ようやくですわね。どなた?」
『警部2050さんです。』
「ん、まあ。そこに頼んだか!」
『みたいですね。回答してよいですか?』
「当り前よ、他に手がないわ。『地獄で仏』よ。」
『はあ? なんでしょうか、その言葉は?』
「いいの。つないでくださいな。」
『とりあえず、数字のカウントだけして来てます。』
「じゃあ、回答しなさい。」
『了解・・・・・・回答しました。音声通信準備完了。』
『あああ~、温泉は良いなあ♪ 楽しみだなあ♪~ 聞こえてますか?こちら宇宙警察、担当2050より。』
「まあ、警部様、ご機嫌ですわね。」
『これは、ビュリアさん。よかった、ご無事ですか?』
「ええ、ありがとう、警部さん。なんとか。でも、ここに三人閉じ込められてるの。『ママ』の人格転移をしてるんだけど、フリーズしてしまってね。助けてくださる?」
当然の事だが、警部はビュリアに恋をしていた。
職務柄、そうした事に気が付くことがないように努めてはいたものの、さすがにそうもゆかなくなっていたのである。
ビュリア=ヘレナ=女王が、そこに気が付かないわけがない。
ヘレナは恋などしない。
ビュリア本体は、違うのだけれども。
『どうしたらいいでしょうか?』
警部は尋ねてきた。
「わたくしの中継をしてくださればよいのです。このまま、この通信を維持してください。わたくしが『ママ』のフリーズを解除します。」
『それだけ?』
「それこそが、最も重要で望まれることです。」
『いいでしょう。ご自由にお使いください。』
ヘレナは、閉じ込められてしまっていた領域から、広がっていった。
『ヘレナさん、ウナの体が崩壊しはじめてますよ。回復不能になるまで、20分も持たないですよ。』
アニーが、告げて来た。
「わかった、急ぐ。」
ヘレナ=ビュリアが答えた。
ウナが、苦しそうにあえぎながら、倒れて行く・・・。
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「ビュリアさんは、隠れてしまったと見えますなあ。」
ブル博士が皮肉った。
「あなたが、やたら、責めるからでしょうかなあ。彼女は、そうは言っても、多くの火星人や金星人を救った。」
ダレルがうやむやに返した。
「いやいや、ここで攻めなくて、どうしますか。救った数以上に、殺したのですよ。」
「やれやれ・・・意思の疎通もあやしいものね、この二人は・・・」
さすがのリリカも、もう呆れぎみになってきていた。
ここ1時間ばかりは、演説するブル博士、あいまいな回答をするダレル、のやり取りが、ひたすら続いてきていた。
議長のカタクリニウクも、こうした非生産的な議論は、いいかげんに打ち切りたかったのだが、いまここでは、そうもゆかない。
時間制限は事実上ないのである。
双方が納得するまで、やるしかない。
多くの聴衆は、それでも熱心に聞いていた。
ゆるがせには出来ない事であると、概ね、みな、そう考えていたからだ。
退屈した人や子供は、外の市場や特設公園に出かけている。
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そこに、突然声が響いた。
「みなさま、大変、お待たせいたしましたあ!」
ビュリアが、帰ってきていた。
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ウナは、『温泉地球』の医療室内のベッドに、寝かされていた。
『危機一髪でしたね。』
アニーが空中から、そう言ってきていた。
「まあ、いきさつが、まだよくわからないが、助かってよかったですよ。」
警部2050がウナと、その横に座り込んでいるパル君を眺めながら言った。
女将さんと、番頭さんとマヤコが、心配そうにのぞき込んでいる。
ロボット医師が、こう告げた。
「まあ、これで大丈夫でしょう。ぼくも始めて見る症状ですがね。多くの細胞が崩壊しかけていたが、回復してきています。次の学会への報告の為に、データが欲しいですなあ。」
「あら、学会なんて、まだ、あるの?」
マヤコが尋ねた。
「まあ、そのうち、またきっと、できるでしょうから。」
「はあ・・・さすがロボット先生。気が長いわ。」
「ははは、では、まあ、このまま休ませてやりましょう。」
ウナとパル君を残して、他の皆は、静かに部屋を出て行った。
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「まあ、どこに、雲隠れしたのかと思ってましたよ。」
ブル博士が、再びひどく皮肉った。
ジュアル博士が、その横で、また軽く失笑している。
「失礼。でも、ひと仕事しましたよ。みなさま、『金星のママ』を連れて来ました。」
「ええ~!」
会場全体が沸き上がった。
登場したのは、もちろん、アバラジュラであったけれども。
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