わたしの永遠の故郷をさがして 第三部 第一章 第五十三回
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絶叫マシーンは、ぎりぎりと登って行く。
どこまでも。
恐ろしい高さまで上がってきていた。
「うわあ・・・すごいなあ。でも、向こうの方には、雲の上まで上がってるところがあるよ。」
パル君が言った。
「まだまだ、その向こうには、宇宙空間にまで届いてるところがあるんだ!」
『ママ』が嬉しそうに言った。
「え? じゃあ、息ができないよ。」
「大丈夫。この軌道空間は、全体が保護されてるんだ。」
「ふうん・・・すごいなあ。」
「よし、スタートするぞお!!」
『ママ』の言葉と共に、ゴンドラは最高地点に達し、いよいよ滑空し始めた。
「うわ~~!!」
パルくんが叫んだ。
「あひょ~!」
『ママ』も叫んだ。
真っ青な『架空』の空の中を、二人の乗ったゴンドラは、まさに猛スピードで進んだのである。
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一方、アニーは、ほどなく重要な部分に差し掛かっていた。
「ビュリアさんには言わなかったけど、可能性としては、『ママ』が気絶するかもね。まあ、多分問題は起
こらない。よほどの運のよくない状況が重ならなければ、問題はない。例えば、宇宙空間にいるとか、宇宙
服を着ていないとか、しかも『架空空間内』にいるとか、さらにたまたま高速で動いているとか、まあ、な
いよね。」
アニーは、時間短縮して作業に集中するため、周囲への注意は無断で省略していた。
「2時間以内にやれ!」
というヘレナの命令を実行するにはそれしかない。
「そんなことがあったら、宇宙空間内に飛び出してしまって、迷子になるからなあ。」
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「結局のところ、今回の紛争の最大の要因は『ママ』である。そう集約するしかないのではないか。」
カタクリニウク議長が提案した。
「金星のビューナスさまも、火星の女王も、そうして多くの指導者や、反体制派、テロリストと呼ばれる
人々も、そこを端緒に動き始めたのである。彼らに責任がないとは言えないが、『ママ』に集約される原因
によって、各自の信念に従って動き始めたのであって、現状において、彼らを処罰する決定をして、どうし
た意味があるのかは、明らかに不明だ。もし、そうしたら、それに連なる人々は、皆、同罪である。となる
と、ここにいる人、全てが同罪となる。」
「異議あり。」
ブル教授が叫んだ。
「それでは、火星で長年行われた食人という罪悪はどうなる? だれも裁かれないままか?それは許されな
いことだ。」
一部に盛大な拍手があったが、大多数には至らない。
しかし、けっして少なくもない。
より多くの人々は、あまりそこに触れたくはなかったのだが。
「これは、人間の根源に関わる大問題で、いまここで、決着を付けなければ、今後も行われることになるに
違いない。それを防ぐ必要があるのだ。今しかないのである。」
ブル先生は力説した。
また、一部で盛大な拍手があった。
「ビュリアを出せー!」
再びこの叫びが上がった。
「こりゃあ、やはり、もう一回、ビュリアさんが出ないと収まらないですなあ。」
議長がダレルにささやいた。
「休憩しますか? 見つからないんです。」
「ああ、困ったもんだ。」
そこで、議長は、やむ負えず宣言した。
「しばらく休会します。再開は30分前にお知らせいたします。」
拍手やら怒号やらが飛び交った。
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「うわあ。ぐんぐん上がる。ちょっと、怖い。」
さすがのパル君が言った。
「『ママ』がいるから大丈夫さ。」
ゴンドラは、最高地点目指して急上昇していた。
そこは、もう、宇宙空間である。
そこから、地上に向かって、ダイビングするのだ。
「うわわわわわ。」
パル君は、必死にこらえていた。
でも、とうとう、素晴らしい光景を見た。
「え。金星って、こんなに美しかったのかなあ!!」
そうなのである。
だれも、もう永らく見たこともない、往年の、美しい海と大気と陸地に覆われていた、ほんの短期間の金
星の姿が、ついに、そこに浮かび上がった。
これこそ、真の金星。
真実の『ビューナス』の姿だった。
『ママ』は、パル君に、これを見せたかったのだ。
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「やましんさん、テンポ、上がらないですねエ。」
幸子さんに、しっかり言われました。
「はいー。最悪です。想像力充填マイナス120%。体力減退。体重は減少、血糖値減少、中性脂肪減少、
そこは良かったけど、元気はいっそう減退中。」
「こらこら、こういうときは、お饅頭嵐に限りますね。『ハイパーお饅頭嵐~!!』」
「あああ、血糖値上がるから勘弁!」
「まあまあ、たまにはお肉食べてください。」
「怖いよ~。怖いよ~。」
「あらら、隠れちゃった。こりゃあ、重症だな。女王様に、相談しようっと・・・」
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