わたしの永遠の故郷をさがして 第三部 第一章 第四十五回
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ビュリアは、意識を統一して、パル君とウナを自分の中に吸収するように囲い込み、金星の『ママ』のいる『場』に飛んで行った。
けれども、パル君にはとても残念なことに、周囲の楽しい景色は、何にも見えなかったのだ。
「『ママ』、来たわよ。こちら側の入口を開けるわね。よいしょっと。」
『ママ』のいる、閉ざされた空間につながる重い扉を、ビュリアは開いた。
しかし、これではまだ、エントランスに閉じ込められてしまった状態で、次に向こう側の扉を開かなければならない。
ビュリアひとりならば、別に悩む必要はない。
『ママ』が内側から開けてくれなくても、こじ開ければ済むことなのだから。
でも、今はパル君がいる。ウナまでが、一気に増えてしまった。
本当は、順番にするつもりだったが、この際もう一気に済ませてしまった方が良いだろう。
自分の体の命は、もうあきらめた方が良いかもしれない。
そのほうが、みな、納得してくれるに違いないから。
それにしても、二人をきとんと保護しながら、しかも2時間以内に『事』をやってしまわなければならない。
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ここに見えている扉は、あくまで仮の姿であって、実際にそこに扉があるわけではない。
そのように感じているだけだ。
「『ママ』、開けてくださいな。」
「・・・・・・・・・・」
再び返事がない。
「『ママ』着いたわよ。開けてくださいな!」
「・・・・・・・・・・」
「うわ、また、すねてるのかなあ。」
「ぼくが呼んでみてもいいかな?」
パル君が尋ねた。
「ええ、いいわよ。さあ、どうぞ。」
「『ママ』さん、ぼく、来たよ。開けて。」
「・・・・・・・・・・」
「『ママさん』開けてください。ぼく、遊びに来たよ!」
「***** 無 視 **********」
「こら、『ママ』開けて下さいな。パル君が、せっかく来たんだから。」
「勝手にお開けなさいませ。」
「まあ、あんなこと言ってるわ。意地悪なんだから、もう。『ママ』お約束したでしょ。パルくんとお遊びするって。」
「そうかな?」
「『ママ』さんと遊んでくれるって、言ったよ。」
「そうかい。じゃあ、やっぱり、パル君だけ入っておいで。ビュリアはダメ。」
「『ママ』ウナさんもいるのよ。」
「じゃあ、ウナさんと、パル君だけ。ビュリアは要らないから。」
「もう、『ママ』の意地悪!」
「あんたがいじわるなんだから。こんなところに閉じ込めて。早くここから出しなさい。そうしたら入れてあげる。」
「また、わけわかんない事を言って。『ママ』が、ここがいいって言ったからなのよ。」
「ずっと閉じ込めるなんて言わなかったよ。」
「だから、金星が出来た後に説明したでしょう?」
「しらない。お家に帰る。」
「『ママ』のお家は、ここなのよ。」
「ここじゃないよ。『ウダヤマ』のお家に帰る。パパに会うんだから。」
「はあ・・・・『ママ』! ウダヤマのお家は、もうないの。大昔に消滅したの。パパは『永遠の都』にいるわよ。だから、いつかは会えるから。今は、開けてくださいな。」
「じゃあ、・・・あ。いや・・・・。いい。 あんた以外は入っていいよ。」
「『ママ』のわからずや!」
「じゃあ、もう帰れ!」
「ああああ、『ママ』。パル君が泣くよ!」
「だから、パル君だけは、おいでなさいな。あんたたちは要らないから。」
「ねえ、ビュリアさん。ぼくだけ入って、ビュリアさんは、やりたいことをして、ウナは先に帰るのはダメかな?」
「『ママ』が、パル君を手放さなくなるわ。『ママ』が、自分でこさえた空間にパル君を隠してしまうと、探すのに大変な手間がかかることになる。複雑なコンピューターの中で行方不明になるみたいにね。仕方がない、一旦帰りましょう。わたくしが甘かった。『ママ』は、もう昔のようにはゆかないわ。」
「残念だね。」
「なあに、他のやり方を考えよう。」
「でも、地球人類が、もっと危険になる?」
「まあ、でも、ちょっとだけね。・・・『もしかしたら、かなりだけど・・・』・・・わかった、『ママ』今日は帰るわ。じゃあね。さよなら!」
「こら、パル君を置いておゆき。」
「だーめ。じゃね。」
ビュリアは、再び外への出口を空けようとした。
すると・・・向こう側のドアが、ぎぎぎっと、開いて行くのだった。
「開きましたが・・・」
ウナが小声で報告した。
「あらま・・・・」
ビュリアが、更に小声で、応じた。
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「こらこら、やましんさん、まだ、分量少ないです。まだ、一杯、隙間があります。それに、かなり上げ底ですよ。」
「はいー。あの、ちょっと息切れですので・・・」
「だめです。もう少しサービスして、中身、入れてくれないと。」
幸子んに叱られました・・・・・
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「いくら休憩時間と言っても、姿を消してしまったら、逃げられたと思われてしまう。」
ダレルがぼやいた。
「はあ・・・どこに行ったんでしょうか?ビュリアさん。女将さんは?」
リリカが確認した。
「いやあ、知ってるらしいんだけど、教えてくれないんだなあ。番頭さんもマヤコさんも、かなり怪しいんだが、なんか皆でグルみたいだよ。」
「ふうん。それはもう、大方『ママ』に会いに行ったんじゃない?」
「ああ、うん・・まあ、そうだろうかな。ひとり、子供もいないんだ。」
「ふうん。ウナさんの子どもね。聞いてるわ。でも、危険ね。すごく嫌な予感がするわね。」
「超能力が戻ったかい?」
「もしかしたら。ほっといて、いいのかな?」
「さて。なんだか、『ほっとくな』と内心で叫んでいる気はするけどね。」
「予感というより、明らかな推測よ。客観的に見て『ママ』は病気。危ない行動をとりかねないわ。ビュリアさんは魔法使いだろうけど、『ママ』にはどうも弱そう。詳しいつながりは解らないけどね。」
「ふうん。ここは、アニーさんに尋ねますか。」
『あの、聞いております。』
アニーが自分から答えをした。
「アニーさん、非常に心配はしているんだが・・・どうなの?」
『ええ、硬く、口止めされております。』
「じゃあ、いいよ。仕方ない。コンピューターなんだからね。」
『アニーハ、並のコンピューターでは、ないのです。しかし、今回は、ダメです。ビュリアさんから、『 ぴー 』さんの時間稼ぎをする以上の介入は、固く禁止とされております。』
「またまた、理解不能だけど? じゃ、どうするの?」
『ああ、では、口止めされている事項を除いて、説明いたします。『 ぴー 』さんは危険な状態です。『 ぴー 』さんは、それをよく理解しておりまして、非常に危険な事態がやがて起こりそうだと・・・つまり地球上の生命の『 ぴー 』ですが・・・判断しておりまして、ここで『非常時行動』を取ろうとしております。内緒で、ですが。けれど、ビ・・・『 ぴー 』さん自身が、危ないと、アニーは思います。下手したら、彼女は、消滅するつもり。です。でも『 ぴー 』さんは、あれでいろいろと、責任を感じていまして、自分を『人身御供』にする代わりに、『 ぴー 』に残っている『場』のエネルギーを逆転用して、パル君とウナさんを、ある種の、非常に適度な『 ぴー 』に『昇格』させる魂胆だと、ええ、思います。で、ご自分の体は『 ぴー 』さんともども、『 ぴー 』に引退するつもりであると。』
「さっぱり、わからないよ。『火星打球ワールド競技』の『大魔球』の解説みたいだ。もっとわかり易く言ってくれ。」
『ああ、つまり、『 ぴー 』さんは、『 ぴー 』君に地球人類初の『 ぴー 』になってもらう考えなんです。『 ぴー 』さんには、『 ぴー 』さんの代わりに『 ぴー 』になってもらいたいのです。アニーは、したがって、これ以上の介入を禁止されております。でも、アニーは、『 ぴー 』さんを、まだここでは消したくはない。『 ぴー 』さんは不滅ですが、でも『 ぴー 』さんにはこの世からの引退は、まだ早すぎます。しかし、会議の状況から見ても、『 ぴー 』さんは火だるまです。しかし、まだアニーとも、将来の予定や約束が沢山あったのですから。そこで、うまくまとめる力があるのは・・・すなわち、例の巨大『 ぴー 』さんであろうと。そこに、なんとか救援を依頼したいのです・・・ます。』
「巨大って・・・『宇宙クジラ』のこと?」
リリカが応じた。
「はい。さすが! しかし、彼らは現状『 ぴー 』さんからの依頼以外は、多分、受け付けないでしょう。でも、もしかして、あの『 宇宙ぴ- 』さんからならば、何とかなるかもしれません。顔が広そうですし。アニーより、はるかに強力な力がありますゆえ。」
「わかったわかった。早い話が、あの『宇宙警察の警部さん』に援助を頼めと言うことだな。」
『はい、さようで。』
「まあ、だいたいあの『警部2051』さん自体が、いったい何なのかよくわからないが、相談してみることは、やぶさかではないな。急ぐかな?」
「はい、あと1時間30分以内であります。延びても、2時間半。でないと、事態は進化しても、取り返しは、もうつかないかもしれませんです。』
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