わたしの永遠の故郷をさがして 第三部 第一章 第四十四回
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「『ママー』出て来て下さーいー。ここですよー、ここ。わかりますかー?『ママー』!」
ビュリアが呼びかけた。
『・・・・・・・・・・』
返事がこない。
「あらら、『ママー』ビュリアちゃんですよー。お返事してください。」
『・・・・・・・・・・無視・・・・・・・・・・』
「オーイ、『ママー』聞こえてるんでしょう! 分かってますよー!!」
『・・・・・・・・・・無視!・・・・・・・・・・』
「あららら、どうしたのかなあ? 『ママー!』返事しなさあい。」
『・・・・・・・・・・無視!!・・・・・・・・・・』
「ううん。出だしからつまずいてしまいましたわ。」
「どうするの?」
パル君が心配そうに尋ねた。
「そうね。まあ、もう一回。『ママ!』返事しなさいな!」
『ママは、もう遠くに行きます。荷物もまとめたから。表の川に飛び込むかも。さようなら。』
「こらこらー。『ママ』何言ってるの。そこに、川なんかないでしょう?」
『見えてるよ。大きな川だ。すごい流れだよ。地獄との境目だよ。じゃあね。お世話になりました。」
「こらこらー『ママ』、幻想の川に入っても、『ママ』は死なないわよー!!」
『いえ、『ママ』は遠くに行く!』
「どこに行くのよー!?」
『とにかく、どこまでも行くんだ! 遠くにね。あ、汽車が来た。』
「『ママー』汽車に乗っても、そこからは動けないわよー!」
『いやだ。動く。遠くに行くんだ。さよなら、電話切るね。』
「『ママー!』これ、電話じゃないから、切れないよー。いつまでも呼ぶわよー!!」
『うるさい。『ママ』はもう、出かけました。ほら大きな川は渡ったよ! ここはあの世かなあ・・・』
「こりゃあ。駄目だわ。困ったなあ・・・っ仕方がない、強制侵入しようかなあ。パル君にちょっと圧力がかかるけどなあ。」
「危険ですか?」
ウナが心配そうに尋ねた。
「ううん・・・まあ通常の大人だったら問題ないんだけど。ちょっとまだ体が小さいから、そこが心配がなんだなあ。むち打ち症になる可能性が、約5%程度あります。」
「5%というのは、高いのですか?」
「わたくしが管理する物事で5%というのは非常に高い数値ですわ。」
「はあ・・・・」
ビュリアは、再度『ママ』に呼び掛けした。
「『ママー』!『ママ』に会いたいと言う子供がいるの。とってもかわいい男の子ですよー。めったにみないいい子なんだけどなあ・・・」
『男の子?』
「そう「男の子」」
『可愛い?』
「うん、すっごくかわいい。」
パル君を見つめながら、ビュリアが言った。
『ふうん・・・『ママ』は、もうあの世に来たけどね、でも、ここにはテレビがあるから、ちょっと写してみて。』
「わかった。じゃあ、見て、『ママ』ほら、「パル君」だよ。」
『「パルくん・・・」か、パル君、いくつ?』
「ぼく、4歳だよ。」
『ま、よっつ。すごいねー、パル君、ちゃんと数字でお答えが出来るの!』
「うん。習ったから。」
『まあ、パル君は学校に行ってるのかい?』
「ううん、一人ぼっちになっちゃったから、ミサイルとか飛んできて、それで孤児院に入ってたんだ。」
『まあ! ミサイル!?』
「うん。でも、ここで、ビュリアさんのおかげで、ウナに会えたんだ。」
『ウナさんて、誰?』
「パル君の、ママよ、『ママ』。」
『まあ・・・・ああ、この人かい。見えた。ミサイルで一人になったの?』
「うん。ちょうど遠足に出てたから、ぼくたちは無事だったけど、金星は壊れちゃって行く先無くなったし、ウナは行方不明だしね。」
『まあ・・・・・可哀そうに!・・・・ビュリアちゃん、その子、ここによこしなさい。』
「いいですが、『ママ』わたくしが付いてまいりますわ。」
『あんた、いらない。』
「『ママ』わたくしがついて行かないと、「パル君」一人では、『場』の境界で事故が起こった場合に、救助できません。」
『『ママ』がいるから大丈夫。ね、「パルくん」ここにおいでなさい。お菓子もたくさん用意するからさ。』
「ウナが心配するからなあ・・・・」
『大丈夫。『ママ』が付いてるから。』
「ビュリアさんが一緒に来てくれたら、安心だけど。」
『まあ、あの子はいらない。文句ばっかり言って、『ママ』をいじめるんだもの。』
「『ママ』いじめたりなんかしないわ。ね、連れて行くから。」
『あんたはいらない。』
「こまったなあ。パル君と遊んでもらおうと思ったのに。」
『だから、ビュリアちゃんは来なくていいから。』
「ぼく、ゲームも持ってるんだよ。面白いよ。でも、三人用のゲームだし。」
『ううん・・・・パルくんは一人が良いよね?』
「ううん・・・・でもビュリアさんには来てほしい、ちょっと怖いから、出来ればウナも」
「げ! パル君・・・まあしょうがないか・・・」
ビュリアがつぶやいた。
『三人用のゲームなの?』
「うん。その方が面白いし・・・」
『二人でもできるんだろう?』
「う!・・・できないことないけど、面白くないよ。」
『ふうん・・・・じゃあ、ビュリアは口出ししないこと。で、ウナさんも一緒にいらっしゃい。ならいいわ。』
「うん。ね、いいよね・・・ビュリアさん。。。だめ?・・・・」
ビュリアは考えていた。果たして光人間が、仮の体と共に、うまくあの『場』の中に入れるかどうかがわからない。ウナの体が保護はしそうだが、あまり長い時間は持たないかもしれない。まあ、ウナは死ぬことはないが、プロキシマ・ケンタウリ製の体の、唯一の弱点があの『場』のエネルギーだ。人間には影響しないが・・・ここは、ウナには引いてもらおう。
「パルくん、ウナさんも、一緒にというのは『定員オーバー』になるから、ちょと無理なのよ。」
「ああ、それは仕方がないなあ、じゃあビュリアさんと一緒でいいよ。」
『ダメダメ。その子のお母さんも連れてきなさい。可愛そうに、苦労させたんだね。一緒じゃなきゃあ駄目だよ。』
「ううん・・・・・さあ、どうしようか。」
ウナが言った。
「あの、ビュリアさん、あたしなら、いいよ。大丈夫ですよ、きっと。」
『ううん・・・・・この子はプロキシマの医師から何か注意されてるな。ふうん。仕方ないか。アニーさん!』
ビュリアの中でアニーが答えた。
『はいはい。ビュリアさん。』
『どのくらい、持ちそう?』
『まあ、頑張っても、そこの休憩時間と同じ、2時間でしょう。』
『もう少し、頑張れ!ここでウナさんを失えない。』
『はあ・・・・無理ばっか言いますねぇ。まあ、鋭意努力しますが、でも3時間が限度でしょう。』
『わかった。』・・・「『ママ』じゃあ、次の予定もあるから、パル君が滞在できるのは、2時間だからね。そこは、約束よ!!いい?」
『ああ、いいよ。2時間、了承。』
「ふう・・・・・じゃあ、パル君、ウナさん。いい?大丈夫? 絶対わたくしが守るからね。」
「はい。」
「よし行こう!」
マヤコが心配そうに、この3人を見つめていた。
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