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わたしの永遠の故郷をさがして 第三部 第一章 第三回


 「ホテル」の状況はといえば、実際に膠着状態になっていた。

 金星も、火星も崩壊してしまったことは、それぞれに連絡が入っていたからだ。

 「金星軍」は、完全に孤立してしまった。

 後ろ盾になり、指令をするべき誰かは、もう誰もいなくなってしまった。

 地球上で、今、すぐに使える最強の軍事力を持っているのは、ワルツ司令のように思えた。もしタンゴ司令も解放されて戦艦二隻が共同できれば、おそらく対抗できる勢力は、ここにはいない。

 「青い絆」も空中に放り出された状態にあった。

 彼らの後ろ盾は、もともとビューナスであり、その後はブリアニデスだったはずだが、どちらも滅亡したと考えられる。

 となれば、順番から言えば、彼らに指示できるのは、タンゴ司令と、一つ階級が上のワルツ司令ということになる。

 カシャとアンナは、リアルから無視された状況になっていたし、ニコラニデスは所在不明のままだった。

 上昇志向が強く、人の上に立ちたいリアルにとっては、「青い絆」を手中に収める非常に良い機会のように思えた。

 そのためには、キャニアの協力がどうしても必要だったが、問題はニコラニデスの所在とその扱いだった。

 彼は「パレス」を制圧して、ここに戻ってきていた。

「事態がこうなった以上、我々は地球で生きなくてはならないのだろう。ここを制圧出来たら、地球の支配権も取れると思うんだ。協力してほしい。」

「ニコラニデスの所在を確認しなければ。それが先ですわ。」

「そのためには、ここを制圧しなくてはならない。「パレス」はすでに抑えた。」

「金星軍がね。」

「いや、共同してだ。しかし、金星の「ワルツ指令」は、及び腰だ。側近もさっさと宇宙軍艦に引き上げてしまった。「パレス」は我々が管理している。つまり、今がチャンスだ。」

「と言われても、動けないのに。いったいどうするのですか。ここは開かないわ。交渉して、とにかくみんなで話し合いをする。戦いはもう終わり。これが正解です。他にない。じゃないと、金星軍とホテル側が交渉して、私たちは排除されてしまうかもしれない。」

「いやいや、いいものを持ってきたんだ。ほら。」

「何ですか?これ?」

「鍵だよ。ここのね。ちょっと「パレス」の担当者に「尋ねて」上手く持ってきたんだ。これがあれば、中に入れる。上にも上がれるんだそうだ。やってみようじゃないか?」

「拷問したのですね。」

「そんなひどい事はしてないさ。アダモスが作った携帯型「意識操作機」を使わせてもらった。」

「あれは、欠陥があって、使用後に知能がものすごく下がるって・・・だから使うなって、言われたのに。」

「しかたがなかったんだ。皆の幸せのためだ。それに、それで死ぬわけじゃないしね。実際今のところ、そう大した後遺症は出ていなかったしね。」

「ひどいです・・・」

「これは戦争だよ。」

「もう、終わったのです。」

「いいや、ぼくらは終わっていない。行くぞ。命令だよ!」

「はい・・・わかりました。」


 リアルは、キャニアと攻撃隊30人ほどを連れて、正面玄関から入った。

 エレベーターが並んでいる壁と、直角になっている何もない壁に向かう。

「建物の裏側の隠れたところにあるんだろう、という考えそのものが、もうすでに盲点だったらしい。たしか、ここだ、このホテルマークにカギを当てると・・・ほら、中に沈んでゆく。すごい仕組みだ。」

 鍵の頭の部分だけを残して、残りは壁の中に沈んでしまった。

「で、これを、きゅっと回す・・・ほら開いた。びっくりだね。入ろう。」

 何もない壁に、エレベーターの入口が開いた。

 大きなエレベータで、30人くらいは余裕で入った。

『いらっしゃいませ。確認キーをどうぞ。』

 ドアが閉まったあと、エレベーターが聞いてきた。

「今日のスぺシャルランチCを。ついでにお茶も。」

『ありがとうございます。何階ですか?』

「管理階に行きたい。」

『かしこまりました。』

「非常時には、通常のエレベーターでは行けなくなるんだそうだ。」

「そうなんですか・・・」

 大きなデジタルの数字がドアに浮かんで、高速で変わって行く。

『到着いたしました。』

「いいか、すぐ黒服がいるぞ。」

「はい。」

 キャニアは身構えた。

 ドアが開く・・・


 そこには、もう誰もいなかった。


  ************   ************


 女将さんは、デスクに座って、あちらこちらに通信をしていた。

 今の相手は、ビュリアだった。

『女将さん、いまダレルさんがそちらに向かいました。後はよろしくね。』

「あいかわらず、ご挨拶もなしかい? もう少し気の利いたことが言えないのかい?」

『ああ。まあエイリアンに同化してるから、こんなもんです。』

「あっさり言うねえ。普通の親なら死にそうになるよ。」

『普通じゃないから、大丈夫でしょう?』

「はあ・・・」

『ニコちゃんは、どうしてますか?』

「まあ、大人しくしてるみたいだ。状況は全部知ってる。何を考えてるんだかは、分からないがね。」

『そうでしょうとも。』

「ホテルの管理階に、テロリストさんたちが入った。もぬけの殻で、ちょっとびっくりだね。」

『地下に大きなシェルターがあることくらいは、「パレス」も見たから予測しそうなのにね。まあ、しても入れないわ。ぜったいに。もうすぐ、アブラシオさんがそこに着く。会議の準備は良いですか?』

「ああ、大丈夫だ。後は、人が来てくれるだけだよ。お食事もばっちりさ。」

『まあ、お腹のすいた人たちばかりだから、しっかり食べていただいてから、お話し合いをしてもらいましょう。』

「あのさ、「パレス」で亡くなった、というか、光人間になった、ウナと言う人なんだけど、何とかならないかい?」

『光人間になった人は、もうどうにもならないわ。まあ、アンナみたいなコピー人間ならできるだろうけど、この場合、意味ないでしょう? みんなを、なんとかしていたら、わたくし他に何もできないし。』

「小さい子供さんがいるんだそうだ。「空中都市」に乗っていたはずだよ。だから・・」

『ああ、そうなのか。うん、その子は探してみる。データをくださいな。あと、考えるわ。』

「頼むよ・・・」

『こちら、アブラシオ。女将さんどうぞ!』

「あ、アブラシオから通信だ。またあとでね。あんたも来るんだろう?会議?」

『行かないつもりよ。じゃね。』

「はあ?・・・まったく・・・はい、こちら『温泉地球』です。」

『まもなく、ホテル上空に着きます。』

「了解。こちらも行動開始しますよ。」


  **********   **********


「くそ、もぬけの殻か。どこに逃げた?」

 リアルがうめいた。

「ここにも、地下があるんじゃないでしょうか?」

 キャニアが指摘した。

「ああ、当然そうだな。さっきのエレベーターに聞いて見よう。」

「待ってください。あれ!」

 窓から、アブラシオが見えた。

「あの巨大宇宙船だ。戻ってきたか。なんか、前よりも、ずっと大きい感じがする。」

「大きいですよ。絶対。倍近いかも。」

「降りるぞ。君たち10人は残れ。行くぞ。」

 リアルは、監視役を残してエレベーターに戻って、こう言った。

「地下の、シェルターまで。」

 しかし、エレベーターは回答してきた。

『パスワードをどうぞ。』

 困ったリアルは、先ほどと同じ言葉を答えた。

『そのパスワードは無効です。ただし、一階との行き来は可能です。どうなさいますか?』

「他にどこに行けるの?お腹が空いたのですが。」

 キャニアが言った。

『50階の自動食堂がご利用になれます。本日はレストランおよびラウンジは臨時休業いたしております。客室階は閉鎖中です。』

「じゃあ、そこに。」

『かしこまりました。』

 エレベータは、また高速で、たちまち『自動食堂』に到着した。

『お待たせいたしました。到着です。』

「十分早いわ。ありがとう。」

『どういたしまして。』

 彼らは全員、そこで降りた。


 ここは大きな食堂だ。しかも、見晴らしがよく、なかなか豪華だ。

『いらっしゃいませ。』

 カウンターに座った女性が言った。

 しかし、よく見れば、上半身しかない。

 ロボットだったのだ。

「どうしたら注文できますか?」

 キャニアは、ズバズバと、しかも相手に分かりやすく質問する。

『ここで、ご希望をおっしゃってください。』

「何人いるのかしら?」

 キャニアは、降り向きながら尋ねた。

「お二人を入れて、20名であります。」

 部隊長が答えた。

「じゃあ、ババヌッキジュース20個。カードでいいの?」

『ただいま、決算システムが停止していますが、すべて可能なメニューは、無料で提供するよう指示されておりますので、お代は必要ありません。』

「あらま、じゃあ、一階のエントランスや最上階にも出前できる?」

『可能でございます。』

「あのなあ、キャニア。」

「いいじゃない。当面することないのですもの。みんなに飲んでもらいましょうよ。みな、もう、くたくたですよ。いけませんか?」

「毒でも入って居たら困るだろう。」

「まあ、あの、ドクとか異物が入ったりしてますか?」

『いいえ、当ホテルの飲食物は、完全な「安全管理システム」で管理されておりますので、人体に有害なものは、すべて排除されます。ありえません。』

「ほらほら。いいじゃないですか。じゃあお願いね。数はそっちで確認できますか?」

『かしこまりました。大丈夫です。どうぞご自由にお席に。』

「大胆だねえ。君は。信じがたい事をする。」

「どうも、ありがとうございます。」

 窓からは、もうこのすぐ上空まで、アブラシオがやってきていた。

 キャニアは、下に通信をした。

「あああ、あの、上の方は大体制圧完了。ジュース注文したから届いたら、皆さんで飲んでてください、警戒は怠らないでね。」

『はあ?あの、巨大宇宙船が迫ってきております!』

「まあ、おちついて様子を見ていなさい。飲んだら、すぐ降りるから。」

『はあ・・・・・』


  ************   ************






 


















































 ********** 幸子さんとの会話 3の1 ************


「なんだか、やましんさん、ちょっと辛そうですが大丈夫ですか?」

「いやあ、風邪ひいちゃって。咳が止まらないのです。」

「それって、ただの風邪でしょうか?」

「ええ?違うの?」

「もしかして、新型宇宙かぜ、じゃあないでしょうか?」

「それって、よくないの?」

「はい。かかったら、というか、かかる前に、もうお終いなのです。」

「おわー。それはちょっと、どうかなあ。でも、そんな、ひどくないもの。」

「新型宇宙かぜは、なにしろ、本人が、かかったと思う前に、もうだめですから。時間をさかのぼって症状が出るのです。」

「信じがたい!」

「まだ、地球では発生していないと、女王様はおっしゃっていましたが、なにかと良くない事だけは、早いやましんさんですし。」

「それは、どうも心配してくださってありがとう。」

「でも、『特効薬』があります。」

「うぇ?そうですか?」

「はい、このお饅頭と、お酒ぱっくです。」

「ああ、そう来たか。」

「はい。これさえあれば、完璧無敵です。やったー!!」

 

 後は、いつものように、お饅頭とお酒ぱっくに、押しつぶされてしまいました。

 





















 














 


















 





 

 








 

























 








   

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