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わたしの永遠の故郷をさがして 第三部 第一章 第ニ十五回


 それから1時間くらいたったころ、あの恐怖の部屋から、クンダルとモラリーが転がり出てきた。

「くそ、もう少し丁寧に扱え!ケガまでさせやがって!傷害罪だ!」

 クンダルがわめいた。

「あんたを撃ったんは、あんたさんのお仲間です。勘違いはしないでほしいす。我は、その治療をしてあげたのだから、むしろ感謝してほしいす。なんせ人の住居に不法侵入して、強盗を働こうとしたんでありますぞよす。」

 右手に巨大な包丁、左手にはノコギリを抱えた大男が言った。

 盗賊たちの手に、銃はもはやなかった。

「くそ。よく言うぜ、じゃあ、あの人間はなんだよ。え?あの宝の山はなんだよ?あんたも、相当な「わる」じゃないか?どこから盗んだ?」

「ほほほほほ。ばかにしないでほしいよす。あれはね、実際よく出来てるだろうす?しかしあれは人間の複製なんだよす。心のない複写なんだもなす。それに、宝石が人の家の中にあったって、あんたたちの関知することじゃあないす。さあ、出て行くんだよす。あそこから。」

 先ほどと同じように、大きな出口が開いている。

「くそ。ばかやろう、俺の機械を返せ、ここまで苦労したんだ。少しは分け前を出せ!」

「ぶあっかやろうさんだす!あの、ちゃちなおもちゃは、他の三人が持ってったよす。さあ、早く出て行け、じゃないと、頭と胴体が分割になるよす!」


 二人は叩き出された。

 叩き出した本人は、椅子に腰かけて、あのステーキを試食し始めた。

「これは・・・ちょっと癖が強いねえす。このままではお出しできないすなす。」



 一方、叩き出された、その、二人の目の前に、一人の女性が現れていた。

 看護師さんの様な姿をしている。

「まあ、あなたがたどうしたのですか? おけがをなさっていますね。」

 後ろを見れば、もう入口などなかった。

 延々と広がる広大な野原だけだ。

「いや、あの、大したことはない。」

 急に現れた女性に声を掛けられたせいで、クンダルも多少面食らっている。

「それは、あまり上等な手当てとは言えません。よく消毒して、もう一回やり直しましょう。どうぞ、こちらへ。」

「は?」

「診療所に参りましょう。」

「は、そんあものがあるのか?」

「なんでもございます。望む物はすべて。」

「ほう?」

 泥棒の習性が、頭をもたげた。

 ふたりは、その楚々とした動きの女性について行った。

 下心、満載だったが。


 **********   **********


 先に逃げ出した三人は、はてもない荒野を歩いていた。

「こりゃあ、もうお終いかな。」

 パフが言った。

「ばかもん。弱気が最大の敵だ。常に心を強く持て。」

 悪人にしては、まともなアドバイスをダニーがした。

「しかし、これでは、水も食糧も手に入りませんぜ。」

「じゃあ、言ってみよう。水をください!食料も下さい!」


 目の前にレストランが現れた。


「すばらしい!。なんという世界だ。」

「しかし、金ないっす。」

 レフが言った。

「ふんふん・・・・・」

 ダニーのポケットには、宝石が詰まっていたのである。

「ああ、ずるいであります。」

「ばーか。持ってない方がおかしい。」

 パフのポケットにも、ごろごろとした「もの」が入っている。

 実は、レフも隠してはいたのだが。


 レストランは、きわめてまともであった。

 いや、たぶん、まともであった。

「いらっしゃいませ。お三人様ですね、どうぞ。奥の席に。」

 先客が何人かいる。

「どうやら、無人の荒野と言うわけでもないんだ。」

 ダニーがつぶやいた。

 しかし、地球上には「ホテル」と「パレス」と「温泉地球」以外にはこうした施設はないということを、ダニーはすっかり失念していた。

 良いテーブルである。

 椅子も、なかなか高級感がある。

 ちょっと自分たちの格好が、いかにも強盗っぽい感じがするのだが。

「メニューでございます。どうぞ。お決まりになりましたら、この鈴でお呼びください。」

「ああ、わかった。」

 三人はメニューを眺めた。

「ここはいったいどこなんだろうな。」

 パフが言った。

「あの、怪人はなんだったんだろうな。」

 レフが言った。

「他のふたりは、ステーキになっちまったんだろうな。お前、喰いたかったんだろう?」

 パフがレフに尋ねた。

「いやあ・・・うん。」

「バカ野郎、罰当たりめ。ふん。このマークはなんだろうか?」

 うまそうな料理の写真が並んでいるが・・・

 各商品の価格欄に、宝石のようなマークがある。

 ひとつのものも、ふたつのものもある。

 注釈を見れば『*宝石でのお支払い承ります。厳密に鑑定し、計算いたします。ただし、盗品かどうかの鑑定も併せて行います。ご了承ください。』

「バカ野郎さんだ。帰ろう。」


 三人は、何も言わずにさっさと店を出た。

 特にクレームはなかったので、まあ良かったのだろう。

 しかし、困ったことに、店はすぐに消えてしまい、果てしない荒野だけが残った。

「幻覚かなあ。」

 レフが言った。

「いやあ、ほら。」

 パフの手には、メニューが握られていた。

「君、それは泥棒だよ。」

 レフがあっさりと言った。

「じゃあ返すさ。ほら返すよ!」

 パフが、空中にメニューを放り投げた。

 メニューは消えた。

「気味が悪いぜ。」

 ダニーがそう言ったが、ようやく気が付いて叫んだ。

「俺たちは、元の世界に帰りたいんだ!」

 しかし、それには反応がなかったのだ。

「くそ。バカにしやがって。」

「しかし、腹はすくし、喉も乾いてきた。何だかやけに熱い。」

 パフとレフが言い合った。

「ああ、気温が高くなってきてるんだ。」

「見ろよ!」

「・・・砂漠だ。」

 周囲は、草原から灼熱の砂漠に変わってしまっていた。

 恐ろしく暑い。

 なにやら、竜巻のようなものが、向こうから迫って来る。

「うわあ・・・なんという熱風だ。中心が来たら、体が焼けるぞ。」

「ひえー、シェルター出してくれー!」

 なんとなく危なっかしい感じの、それでもコンクリート製の丸い建物が地下からせりあがってきた。

 ドアはない。一か所通路が開いている。内部は地下に向かって少し下がっているようだ。

 三人は飛び込んだ。

 砂漠の竜巻は、もう、すぐそこまで来ていた。

 

 **********   **********


「どうぞ、中に。」

 クンダルとモラリーは、真っ白な、華奢ではあるが二階建ての建物に案内されていた。

『病 院』

 と書かれた看板が張り付いているが、名前がない。

「おい、ここは、大丈夫か?」

 モラリーが言った。

「いやあ。しかし、なあ、足がやたら痛いんだ。」

 クンダルが顔をしかめている。

「この際、診てもらおうぜ。」

 たしかに、彼の包帯を巻かれた、仲間に銃撃された足が、はでに腫れ上がっていたのだ。

「そりゃあ、まずいな。」

 二人は、病院の内に入った。

 連れてきた女性の姿は、もう、見えなくなっていたが。


 『受付』があった。

「どうぞ、どうなさいましたか?」

 受付の眼鏡をかけた女性が言った。

「あしが・・・・」

 彼女は、デスク越しにクンダルの足を覗き込んだ。

「おおお。それはまた、痛そうですね。わかりました。このペーパーにご記入ください。なにか保険関係の証書とかお持ちですか?」

「いや、ない。」

「わかりました。請求は現金もしくは『金目のもの』となりますが。」

「宝石なら、ある。」

「わかりました。結構です。では、待合でしばらくお待ちください。で、あなたは、診察のご希望はないですか?この先、当分病院はないですが?最近、『宇宙脳炎』が蔓延しております。予防注射もここなら可能ですよ。」

「危ないのか?」

「まあ、ここに半年もいれば、90%の方が感染します。仲介する「虫」も多いですから。死亡率は、約95%です。予防注射をしていれば、もし発症しても、死亡することはまずありません。」

「そりやあ・・・頼むよ。二人とも。で、いいかな?」

 モラリーが確認した。

「ああ・・」

「わかりました。正しいご判断ですわ。」

「しあし、痛みがひどくなってきたんだ・・・」

「大変。そこの大型ソファーで横になっていてくださって結構です。ちょっと重症の方が先に来ていまして、少しお待ちください。」


 看護師さんが二人、待合を高速で走り去った。

 さっきの人もいたようだ。

 周囲には、他の患者は見えないが・・・


 やがて、ストレッチャーに乗った人物が運ばれてきた。呼吸装置やら、多数の点滴やらが、一杯ぶら下がっている。

 体中が、赤や黒に焼けただれている。

「おい、ありゃあ、ダニーじゃないか?」

「らしき・・・」

 それが走り去る後ろ姿を見ながら、モラリーがつぶやいた。


「クンダルさん。どうぞ。ああ、車いす出しますね。」

 クンダルは、診察室に運ばれて行った。


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