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わたしの永遠の故郷をさがして 第三部 第一章 第ニ十三回


 この不思議な施設は、「ホテル」が管理するのものではない。

 また「温泉地球」の管理でもなく、火星の「地球事務所」も関知していない。

 もちろん「青い絆」の関係でもない。

 要するに、火星に存在する組織、個人の誰も関知していないものだった。


 そうしたものについて、その他で関係していそうな「存在」といえば、「女王様」しかありえない。

 


 強盗団の一行五人は、無事に現場に到着した。

 周囲には、特に高い柵が施されているわけでも無い。

 お墓のような少し長方形の『ふた』があるけれども、鍵穴も取っ手も存在しない。

 文字のようなものは、一切、書かれてはいない。

 普通に考えると、どうやって開けるのか(開くのかどうかも)悩んでしまうところだ。


 そこでクンダルは、どんな鍵のかかった、どんなドアや蓋も開けてしまうという『魔法の機械』を取り出した。

 大きなものではない。

 ポータブルラジオ程度の箱だ。

 上半分にディスプレイがあり、下半分には操作キーが配置されている。

「やります!」

 クンダルが言った。

 彼が仕事を始める時の、いつものセリフである。


 機械は音もなく動作しはじめた。

 ディスプレイに、数字やら文字らしきものやらが、ものすごい速度で流れて行く。

「こいつは、ちょっとやっかいかもしれないな。」

 クンダルがうなる様に言った。

 ダニー、モラリー、そうしてパフとレフの双子たち。

 皆、じッと黙ったままだ。

 レフは、たいがい見張り専門である。

 彼には、異常なほどの聴力があり、視力も鋭い。

 周囲に、しっかり気を配っている。

 幸い、邪魔ものは今のところ現われていない。


「まだか?」

 気の短いダニーが催促し始めた。

「まて、下に空間があることは確かだ。これが入口であることも間違いない。まあ、信じろ。こいつは、並の機械じゃあないんだ。なにしろ・・・、お、来た来た!」

 数字と文字の動きがゆっくりになった。

「ほらよ、行くぞ!」

 ディスプレイの表示が止まった。

 それから、機械全体が薄青く光った。

「くそ。エラーだ。」

「なにお、役立たずが!」

 ダニーが毒づいた。

「うるせえ、黙ってろよな。こりゃあただ物じゃあねえ証拠だ。まて、まて、よし。行きそうだ。」

「こんどはホントかよ。」

「ああ、さあ、開くぞ!」

 機械が、金色に光った。

 何で出来ているのかさえ分からないその『蓋』が、一瞬にして消えた。

「おわ! なんだこりゃあ?」

「何か出てきたぞ。うそだろう、こりゃあ、エレベーターだろうか。」

 厚みさえ感じられないドアが開いた。

「よし、乗った!」

 五人は、出現したドアの中に入った。

 すると、アッと言うまに入口が消滅した。

「おいおい、帰れるのか?」

 ダニーが珍しく、弱気になって言った。

 何の音もなく、また重力の影響も感じない。

 真っ白な空間だが、かなりの奥行きがありそうに見える。

 トラック一台くらい、楽に入りそうなのだ。

 あの『蓋』は、そんな大きさではなかった。


 光源がないのに、内部はやや薄暗い、程度には明るい。

「なんか、気持ち悪いな。」

 モラリーがささやいた。

「弱気は禁物だ。勝利あるのみ!」

 クンダルが、仲間に気合いを入れた。

   ~~~

「長いな。もう相当乗ってるぞ。」

「ああ、確かに。お、開いた!」

 そう、出口が開いた!


  **********   **********


『ヘレナさん、ヘレナさん。』

 まだ大騒ぎが続いているパーティー会場だ。

 ダレルは、いつの間にか、もう、いなくなっていた。

 リリカは、残っていたが、ハイエナ食を実行している。

 社長の奥さんと子供は、隣の部屋で寝てしまっている。

 ブル先生とジュアル先生もソファーで転寝していた。

 しかし、マヤコは疲れを知らない。

 恐るべき体力、食欲だ。

 カタクリニウクだけが、それに匹敵できたらしい。

 もっとも、ビュリアは、超然としていたが。

『はいはい、アニーさん、なに?』

『なんと、禁断のあそこに、自主的な侵入者ですよ。史上初です。』

『あそこって、もしかして、「実習室」?』

『はい。』

『まあ、まあ。』

『どうしますか?』

『どうするって、決まってるでしょう。保護しなさいな。』

『了解。』


 **********   **********


「なんだ?ここは?」

 SF映画に出て来そうな、怪しい場所だった。

 ガラスが周囲全面に張られたような通路。

 盗賊団たちは、ゆっくりと歩いて行った。

「気を付けろよ。どんな仕掛けがあるかわからんぞ。」

 クンダル達は、空間探知ゴーグルを装着している。

 大方の警報措置や、検知装置、レーザービームなどは、すぐにお見通しになる。

「ゆっくり行くぞ。おいあれはなんだろう。」

 両方の壁が、一団と明るくなっている。

「おおわあ!」

 女性の首から上だけのマネキン人形や、その腕とか、胸とか、足とかの・・・があり・・・

「こりゃあすげえ。こんな宝石見たことあるか?」

「いやあ・・・とてつもないものだ! いただきだ。・・・くそ。硬いな。」

 ダニーがハンマーで叩きながら言った。

 盗賊たちは、がぜん勢いづいていた。


「思いっきりやれよ!」

 モラリーが強烈な一発を入れた。

 普通のショーケースなら、吹っ飛んでいるはずだが・・・

 モラリーのハンマーの方が後ろに飛んだ。

「あぶねぇじゃねぇか!」

 パフが叫んだ。

「大声出すな!」

 クンダルが叱りつけた。

「なんだ、このガラスは?」

「ただのガラスじゃねぇえな。よし、これも、あいつを使おう。」

 クンダルが例の機械を立てに据えた。

「開くか?」

「ああ、開くさ。何でも開けるんだ。」

 機械は、また複雑な表示を走らせた・・・・


 今回は、意外と早かった。

 邪魔な、硬いショーウインドウが、すべて「さあっ!」と上に消えて行った。

「やったな、相棒!」

 モラリーとクンダルがハイタッチした。

「よっしゃ、すべていただきだ。掻き込め!」

 盗賊たちは、持ってきていた袋の中に、宝石類を放り込んでゆく。


 しかし・・・

「おい、これ、変だぜ?」

 パフが言った。

「なにが?」

 ダニーが目の色を、すっかり変えながら言った。

「こりゃあ、作り物じゃアない。本物だ・・・」

「はあ?」

「本物の、人の手だ・・・首も・・・」

「・・・う、うるせぇ! 早く集めて、ずらかる!」


 強盗たちは、長い通路をくまなく漁って行った。

「うぎゃあ!」

「なんだ、こんどは?」

「これ、これ、人の全身だろう・・・」

 目を疑うような美女が立って、こちらを睨んでいた。全身宝石の山だ。

「気にするな。頂き物だけ、ありがたく頂戴しろ、死んだらマネキンも一緒だ。・・・くそ、悪趣味なやつだ。おれたちは、殺しはしねぇんだ。」

 クンダルは、うめいた。


 しかし通路のその先は、もっと凄まじかったが・・・お宝はさらに、恐るべきものが揃っていたのだ。

「終わりか?」

「ああ、ここまでだ。もう入らねぇぜ。重い!」

「よし、こんなところ、もう、引き上げよう。まったく罰当たりな奴らがいたもんだぜ。」

 ダニーが急かすように言った。

「俺たちもそうだがな。帰ったら、お祈りだ。お宝も御祓いだ。引き上げだ!」

 クンダルが告げた。


 その時、起こるべきことが起こった。


 後ろの通路が、瞬間的に閉鎖されてしまった。

「くそ、閉じ込められたかな。」

 クンダルが例の機械を、壁になったところに当てた。

 しかし、今度は、まったく効果がない。

 やり直したが、エラーが出るだけだ。

「くそ! 戻れねぇぞ。前もない。ありえないが。ダメだ。くそ、罠か!」

「いや、まて・・・開いたぞ!」

 モラリーが言った。

 通路の先が開いたのだ。

「行くしかないか。お帰りはこちらへ、だ!」

 五人は、恐る恐る前に進んで行った。


 すると、突然、広い広い、大広間と言うような場所に出た。

 豪華な部屋だ。

 奇麗なテーブルと、大きな椅子がひとつ。

 なんだか、薄い赤色に包まれている。


「なんだろう、ここは?」

「さあて、なんだろう。気味が悪い部屋だ。ああ、あそこに扉がある。」

「やだなあ。こういうパターンは。こりゃあ、もう完全に閉じ込められてる。」

 レフが客観的に分析して言った。

「何か聞こえるか?」

 クンダルが尋ねた。

「ああ、なんだか、『ガチャン』とかいう感じの音がした。小さい音だ。ドアの向こうからだな。」

「いやだろうが、行くぞ。レフ、来い。」

「ああ・・・・」

 クンダルは、広い部屋を横切って、扉に近づいて、ゆっくりとノブを回した。

 扉は、あっさりと開いた。

 二人は、その中に入って行った。


「おぎゃあ~!」

 レフの叫ぶ声が聞こえた。

「どうしたんだ?」

 残りの三人が顔を見合わせている。


 二人は、なかなか出てこない。

「おい、どうした?」

 モラリーが心配になって声を掛けた。

 なんだか、ガチャガチャと言う音が聞こえる。

 やがて、フラフラになったレフだけが出てきた。

「どうした?」

「ああ、あの、なか・・なか・・・」

「なんだ、しっかりしろよ。見に行こう。来い。」

 残りの三人が、銃を片手にして、開いたままの扉の向こう側を覗き込んだ。

 

 クンダルが、いる!

 しかし、なにか、手術台のようなものに、横たわっているのだ。

 真っ白な着衣に、調理師のような帽子を被った何かが見えた。

「おあ、ぎょあー!」

 モラリーが、宙に浮いた・・・


 **********   **********


「いやあ、もうこんな時間ですねぇ。みなさん。さすがにお開きにしましょう。」

 女将さんが呼びかけた。

「朝が早いです。というか、もう朝が近いけど。」

「そうだ、朝が近い!」

 カタクリニウクが、突然に叫んだ。

「そうだ、まだ、これからなんだ。皆さん、頑張りましょう!」

 『うわー』っと、残りの全員が、とりあえず声を上げた。

「じゃあ、おしまい!会議遅れないようにしてくださいよ。あらダレルさんは?」

「逃走しましたよ、とっくの昔に。」

 ビュリアが言った。



「あの、話がしたい、あたしの部屋に来れるかな?」

 マヤコがウナに言った。

 ウナは、以前のように、小さくうなずいた。


 **********   **********






















































 



 

























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