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わたしの永遠の故郷をさがして 第三部 第一章 第十六回

ダレルは、まだ、話しを続けていた。

「『女王様』は、つい最近までは人間とブリューリの境目にあり、まだ人間としての倫理観を多少は持ち合わせていたのです。しかし、怪物の魔力には勝てず、政権をリリカ首相に引き渡して、民主化を実行することと引き替えに、自らを完全な怪物に変えてしまいました。実のところ、こうしたことが起こるという事は、十分に予想が出来ていたわけではありません。我々は、火星の民主化と、ブリューリの追放を同時に行う事を目標として考えていましたが、その終盤は悲惨な状況になりました。二体のブリューリは、火星人を大量に食い漁りました。どういう仕組みなのかはいまだにわかりませんが、かれらは食べかすを出しません。食べられれば、全てが消滅します。つまり、火星人は、悲惨な実情を目にしなかったのです。これが、ブリューリに対する、いわば信仰心ともいうべき押し付けられた感情に、違和感を全く持たせなかった、大きな要因だったのです。終盤、ブリューリは、王宮の奥深くにまで、魔の手を伸ばしました。罪のない人々や、閣僚や、首相や私の、大切な親友まで怪物の仲間に変え、多くの人々を、さらにいっそう激しく共食いさせました。一刻の猶予もなかったのです。そこでリリカ首相は、まだ、完成していなかった技術を、実際に使うしかなかったのです。彼女は、果敢に挑みました。ぼくは、その後方で手伝いをしただけです。怪物二体を、強制的に空間転移させました。しかし、まだ目標を定めることができず、どこに飛んだかはしばらく分からなかったのです。「それ」は、「第九惑星」にまで飛んでいたのです。このあたりには、いまだに未解明の問題が多くありますが、ここでいくつかの勢力がぶつかり合いました。その詳しい内容については、ここでは、もう、お話しません。いまだに多くの利害が絡んでいるからです。怪物二体を捕獲したいと考えた人もいたし、ブリューリは宇宙に放逐し、女王のみ確保しようとした人もいた。両方とも宇宙に放逐しようとした人もいた。ぼくは、そうでした。ちなみに、『女王』は、私の母です。あれでも・・・。」

 ダレルは、あえて間を開けた。少し芝居じみていたが、それでも効果はあった。

 会場内は、しんみりとした。

「リリカ首相は、しかしながら、ブリューリに対抗する特効薬、つまり『抗ブリューリ薬』の開発をしていました。そうして、この場において、それを初めて使いました。効果はてきめんでした。二体の怪物は、第九惑星に沈んだのです。もう永遠に、戻らないでしょう。」

 ダレルは、真実ではないことを、自分が語っていることは分かっていたけれども、いったい、他に何と説明ができるのだろうか。これしかないことは、はっきりとしていた。

 ただし、ダレルはリリカ首相が、女王の「孫だ」とはあえて言わなかった。

 当然これは、既知の事実だし、これまでは誰も表立って『変だ』とは言わなかった。

 これからは違うのだろうが、それはリリカが説明した方がいいだろう。

 説明ができるのならば、だけれども。

「ようやく、ブリューリ問題が解決したのです。これは、本当に火星の長い長い、恐るべき「宇宙怪物」による支配の歴史が終わったということでした。しかし、火星は次にオリンポス火山の超巨大噴火に直面しましたし、金星では、『ママ』の暴走が始まっていました・・・」


 ************   ************


 宇宙海賊「片目のジニー」は、月の裏側から地球にやってきていたが、しかし会場内には近寄らずに、地球の周回軌道で会議の中継を見ていた。

 ジニーの生い立ちは、ほとんど誰も知らなかった。

 ただ、アマンジャだけは、知っていたらしいけれども。

 その動きは、アニーは当然掴んでいたし、ビュリアも知っていたけれど、だからどうだ、というようなことは別になかった。

 公式に言えば、彼女たちは「犯罪者」だけれど、火星政府も金星政府も、常に大幅に大目に見ていた。

 「青い絆」が、火星政府にとっては、「お尋ね者」だったことと大差はない。

 ビュリアにとっては、何の妨げにもならない存在だった。

 むしろ、アマンジャの側近だっただけに、「保護」すべき人間の一人だった。

 ましてや、「宇宙警察」にとって、彼女たちは別に取り締まりの対象者ではなかった。

 

  *****     *****


 あの真っ青な「星」が、突然近づいてきた時、ジニーは、わが目を疑った。

「なんだろう、あれは? 宇宙船にしちゃ大きすぎるが、星にしては人工的だ。」

 海賊船「えびす号」は、当然すぐに臨戦態勢を取ったが・・・

「あのう、ちょっと、お邪魔してよろしいでしょうか・・・・」

 警部2051は、いんぎん丁寧に連絡してきたのだ。


      *****  *****


「女将さん、変なのが、地球の近くに出て来ましたよ!」

 番頭さんが女将さんに連絡を入れた。

「なんだいそれは? 画像を送ってくれる?」

 女将さんは、熱弁を振るうダレルを尻目に、会場の外に出た。

「ふうん。何だろうこれは?」

「さあて、火星も金星も崩壊して、防備はぼろぼろですからね。でも、火星の監視船が、後ろにくっついてますから、ダレルさんは、もう知ってるんじゃないでしょうか?一応お隣に聞きましょうか?」 

「それなら、そうなんだろうね。なら騒ぐ必要もないかな。おやおや、首相と副首相の側近さんが来たよ。

あの巨大宇宙船は、どっしりとして動いてないから、問題は無いんだろうけど、聞いといておくれでないかい?」

「了解。それと「えびす号」が、どうやらそいつに捕まってるようですね。動きを止められてますから。」

「ふうん・・・ちょっと様子を見て、動きがあったら連絡してくださいな。」

「了解。」


 ソーとアリーシャが近寄ってきた。

「女将さん、ですよね。」

 アリーシャが言った。

「はいはい。あ、これこれは、まあ、大きくなりましたわねえ!」

 女将さんは、アリーシャの胸あたりを見ながら言った。

「あのですね、女将さん、そうは言っても五年ぶりくらいですよ。」

「だって、あなたまだ子供だったじゃないの。偉くなってるらしいじゃないですか?」

「いええ、まあ、びっくりです。」

「会議に来たのね。」

「はい。こちらソーさん。直接会うのは初めてですか?」

「そうね、はじめまして。「温泉地球」の女将でございます。ビュリアの母ですの。」

「ソーです。お目にかかれて光栄です。女将さんは、地球では、最高の有名人ですよね。」

「まあ、ほほほ。それほどでも。ほら、あそこ、見えてるじゃない。」

 夕方の夜空に、薄青い物体が浮かんでいる。

 多くの人が、指さしながら見上げていた。

「バカでかいのね、なんでしょうか?」

 女将さんが尋ねた。

「さあ、でもおそらく宇宙船でしょう。星は、あんなに急に動いたり止まったりしませんから。」

「そりゃそうだねえ。何しに来たんだろうねえ。うちに予約は入ってないし。」

 女将さんの通信機が鳴った。

 番頭さんだった。

「女将さん!大変ですよ。」

「どうしたんだい、そんなに焦って?」

「あの、空の青い星から、予約が入りました。」

「はあ?」

「なんでも、「宇宙警察」の方とかで、2~3泊したいと・・・女将さんに、お話も聞きたいとかで・・」

「あらま!?」


 **********   **********


「ひどーい。詐欺よね。あんなこと言っていて、結局、温泉に入りに来るだなんて。」

 ビュリアが怒っていた。

「喜んでないですか?」

 アニーがまた皮肉そうに言った。

「なによ。それ?」

「いやあ。だって、ねえ・・・。」

「ねえ・・・って何よ。」

「いやあ、久しぶりに、恋してないですか?」

「ま、なな、なにをバカな・・・。」

「いや、だって、大昔のブリューリさんに、そっくりだったから・・・いやこれは絶対に言っちゃあいけなかったかな。」

「あなた、破門よ、破門。もしもう一回言ったら、一年間自由思考機能停止よ。いいわね。冗談じゃなく、本気よ。それに、それ、絶対にあいつらに言ったらだめよ。もし、そんな事があったら、意識を停止して、完全に洗脳するからね。アニーさんじゃなく、「アネット・ジョン」さんにするからね・・・『鍵をかけたのに、なんでもれたのかしら。おかしいな。ちょっとアニーの機能に、問題が発生してるかな。ちょっかい出せるのは、彼女だけか。注意しないとね。』・・・」

「まあまあ、そんなに怒らないでください。謝りますから。もうしませんから。絶対に言いません。」

「まったく、もう。ふう・・・しかし、気になるな。お母様が余計な事、言うんじゃないかな・・・まあ、昔のことは、知らないのだけれどね。宴会するとか言いながら、余計なお客様を取っちゃったわね。」

「ええ、そうですねえ。確かに。」


  **********  **********

















































































  **********   **********


「ああ、『とんぺい焼き』美味しいなあ。」

 幸子さんが、近くの総菜屋さんで買ってきた、今夜のぼくのおかずを食べながら言いました。

「やましんさん、元気ないですね。あんなにみんなで、励ましてあげたのに。」

「そりゃあそうでしょう。あれだけ大騒ぎされたら、疲れますよ。」

「はあ、人間って難しいなあ。でも、なんか他も考えてません?」

「ああ、そうなんですよ。実はね、第三部は、とっても長くて、割と平たんになりそうで。それにもう時間がないような気がしていて。いっそのこと、第四部も、並行して書き始めようかな?とか。でもそれだと、神経が崩壊しそうな気もしてましてねえ。」

「まあ、それよか、両方からトンネル掘ったら、真ん中でつながらなかった、っていう事になりそうな気がしますねえ。」

 幸子さんは、お饅頭もつまんで食べながら、そう言った。

「そうなんですよねえ。確かに。」

「まあまあ、またお風呂で考えてください。幸子も考えますから・・・あ、居なくなった。」

 ・・・ぼくは、もう一度おかず買いに行きます。













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