表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/106

わたしの永遠の故郷をさがして 第三部 第一章 第十二 回

「私は、軍人でありますし、普段は軍艦の中で生活しております。多くの秘密事項に囲まれ、ほぼ外部と接触することは、まあ、稀であると言えるでありましょう。それが私の人生であり、使命です。しかしながら、国が亡びるという、いや、惑星まるごと、文明が滅亡するという事態にあって、いったいどこまで話すことが可能であるか、正直困惑しております。」

 ワルツ司令は、その性格を反映してか、一言一言を確認しながら話し始めた。

「まあ、このあとタンゴ司令が証言をすることになるわけです。彼にすべてを委ねることもできなくはない。しかし、もし、我々二人が口を閉ざしたり、また大きく内容が異なって見えたりすれば、それはそれで、お集まりの方、また生き残ったすべての方々にとって、侮辱であるとも言える。従って、まず出来る限り正直なところで、基本的な事項のお話をし、後ほどタンゴ司令のお話も終わった後で、質問を受けたく思いますが、いかかでしょうか。まあ、タンゴ司令が質問を受け付けるかどうかは、分からないが。」

 カタクリニウク議長は、少しだけリリカと相談した。

「いいでしょう。続けてください。」

「わかりました。そもそも、金星文明が、老朽化していたのかどうかなどは、いち軍人の関与するところではありません。ただ、わが「ウジャヤラ・ナイト」は、タンゴ司令の「ウジャヤラ・ワン」とともに最新鋭の軍艦でありました。まあ、結局その能力を十分発揮することは、幸か不幸か、これまで無かったのでありますが。」

 ワルツ司令は、ハンカチで汗をぬぐった。

「そもそも、我々にとって、今回の終末事態に関わった初めは、我々が第九惑星に派遣された時でありましょう。第九惑星で何が行われていたのか。私が、今周囲を見まわす限り、その分野の専門家の姿はありません。非常に恐縮ではありますが、恐らく、この会場内で、その詳細を一番よくご存じなのは、総責任者であられた、カタクリニウク閣下であります。」

 会場内が、ざわざわとうごめいた。

「ああ、どうぞ先を。御静粛に願います。」

 議長が言った。

「どうも、議長閣下。我々軍人は、その詳細は知らされておりませんでした。ただ、金星の将来にとって、非常に重要なプロジェクトが行われている、ということだけです。その内容は、『人類の進化を究極にまで高める実験を行っている』ということのみでありました。我々は、あのとき急遽、第九惑星方面に出発するように、ビューナス様直々の指令を受けました。それは、第九惑星に接近しようとしていた、『海賊船』と、巨大な『謎の宇宙船』、ええ、まさに現在この真上の空にいる、あの巨大な船に間違いありませんが、この進路を阻止せよとのことでありました。戦闘許可も出ておりました。あのとき『ウジャヤラ・ナイト』が先行しており、『巨大船』に接触を行ったのは、タンゴ司令であります。我々の艦は、『海賊船ぶっちぎリ号』と対峙しましたが、海賊船とその基地に挟み撃ちにされ、やむおえず『全方位砲』を発射しました。

おそらく、現時点で、あの距離であって、その攻撃に耐えられる相手は、火星にも金星にも、まず考えられません。ええ、上空の怪物はやや、別としてですが。しかし、なぜか、『海賊船』は、”消えた”のであります。これは、不思議です。そこに『ウジャヤラ・ナイト』からの救難信号が届きましたので、救助に向かいました。実のところ、これは極秘事項でありまして、これを開示したら、私は通常死刑でありますが、実は・・』

「それは、言うべきでない!」

 タンゴ司令が、割って入った。

「火星に技術を持ってゆかれますぞ!」

「ははは、すでにあなたの船は接収されておりますぞ。いまさら、どうにもなんでしょうに。」

「言わなければ、分からないでしょう。ああ、たぶん・・・」

 二人のやり合いを、聴衆はよくわからないまま聞いていた。

 そこで、ダレルが口をはさんだ。

「あの、空間跳躍の事なんでしたら、知っておりますから、ご心配には及びませんよ。まだ技術的な解明はしておりませんが。」

「ほら、そうでしょう。そういう訳で、我々の艦には、光速に縛られることなく宇宙を航行する、空間跳躍の技術が導入されておりました。しかし、非常に不思議なのは、あとで、タンゴ司令がお話するでしょうが、その技術がないはずの海賊船が、ふいに『消滅』したことです。破壊できたと思ったが、分析の結果ではそうではなかったのです。つまり、どこかに跳躍して消えたのです。これは、今もって謎です。その後、我々の艦は、タンゴ司令の船を救助しました。推進装置付近が壊れておりましたが、この二隻の宇宙戦艦には、ある種のドッキング機能がありまして、応急修理して、ウジャヤラ・アルファとワンを結合して第九惑星に向かいました。」

 ワルツ司令は、一休みした。

「第九惑星で、我々が見る事が出来たことは、かなり断片的です。我々は、女王へレナとブリューリが離れた場所に宙づりになっているのを見つけました。なんで、空間に張り付いたままなのか、それは今でも分かりません。」

「ああ、そうなんだ。たしかにぼくはヘレナと怪物を火星上から追放はしたが、「はりつけ」状態になんかしなかったし、出来るわけもない。」

 ダレルは思った。

「そこには、この上空の「怪物宇宙船」が来ていました。また海賊の「えびす号」と「ぶっちぎり号」がいました。さらに、正体不明の真っ黒な巨大宇宙船がいました。非常に気味の悪い、物質感が異なる・・・ああ、表現が難しいのですが・・・。さらに非常に小さな遊園地のゴンドラのような乗り物がいたのです。やがて、海賊船の「えびす号」から、真っ白な光線が発射されました。それで、「女王」も、「怪物ブリューリ」もその「ゴンドラ」も消えてしまった。真っ黒な宇宙船も見えなくなった。これが何を意味するのか、まったく説明は出来ません。ただ、我々は、どうやら比較的すぐそばに、これは比喩ですが、「ブラックホール」のような異常な空間が存在しているらしいことは、分かっておりました。我々には、空間ジャンプの技術があったので、そこに可能な限り接近したいと思ったのです。しかし・・・、行動が出来なかったのです。これも、謎です。何もできなかった。いや、それならば、巨大宇宙船を捕まえることは不可能でも、何らかの収穫は必要だと思われました。ここまできて、手ぶらで帰れるわけもない。そこで、タンゴ司令とも相談し、「えびす号」と「ぶっちぎり号」の乗員を引き渡すように、巨大宇宙船に要求しました。あの巨大宇宙船には、「ダレル首相」が乗っていらっしゃったのであります。つまり、上空の巨大船は、火星の船なのです。さまざまな異常現象の原因は、おそらく、あそこにあると、私は思っておるのでありますが。もしかしたら、この滅亡劇の大きな、つまり、原因も。」

 またまた、ざわざわとした。

「しかし、ダレル閣下は、我々を『女王様の葬儀を行う』として、あの船の中にご招待くださった。これは、軍人としては「礼儀」であります。まして、「火星の女王様」は金星人にとっても「太陽教」の「大聖人」に列せられている方であります。応じないわけには行かない。葬儀でありますから、大宴会が行われたことは当然です。ジャヌアンと言う、最近「おおはやり」の芸人が踊った。そうして、実際のご遺体はないので、模擬の遺体で、宇宙への返還儀式が行われたのであります。これも、実は不思議です。女王と、ブリューリはどこに行ったのか。そこについては、今もって、あいまいなままななのです。ついでに言えば

、宇宙海賊のアマンジャも、その際葬儀が行われ、その後行方がわからなくなっております。さらに問題はその後にもあります。我々二人は、マ・オ・ドクとデラベラリなる海賊をその場から連行しようとした。ダレル閣下にその旨を通告しておりましたが・・・いつの間にか意識を失ってしまっていたのです。気が付いたら軍艦に戻ってしまっていたのであります。まったく、遺憾なことであります。結局、なすすべなく、我らは母星に帰ったのです。その次に語るべきは、まさに、滅亡の当日前後の事でありますが。しかし、大変疲れたので・・・・どうか、すみません、タンゴ司令に譲りたく思いますが。」

「ああ、よろしいでしょう。どうも、大変な状況だったようですな。では、10分休憩します。その後、タンゴ司令さん、お願いいたします。」

「ふん。なすすべなく、帰ったかどうかは、あやしいものだが。やはり、このままの話だと、火星人は疑われてしまうだろうな。」

 ダレルは考えていた。


 ************   ************


 休憩のあと、次いでタンゴ司令が壇上に立った。

「ええ、先ほどは失礼。しかし、軍事機密と言うものは、祖国が消滅しても、守るべきものだと、私は信ずるものでありますからして。まあ、ワルツ君に、いや、もとい、失礼、先ほどまでのことについて、ワルツ指令殿に付け加えることは、ほぼ、ないのであります。追々、思い出したら、追加しましょう。まずは、ああ、そうですな、ひとまず、我々の艦が、上空の「白い巨人」、と勝手に私は言っておりますが、に、攻撃されたことは事実であります。ただ、公平を期すために言えば、我々も、相手を攻撃しようとしていたこともまた、事実です。しかし、「白い巨人」は我々の攻撃を受ける前に、ワルツ指令殿がおっしゃった海賊船同様に「消滅」したのであります。これが、もともと「空間跳躍」技術を導入していたためなのか、偶然なのか、神のご意志であったのかは、結局その後も分かっておりません。まあ、ダレルか閣下が、そこにいらっしゃるのだから、このような些細な事は、すぐにわかるで、ありましょう。」 


  ************     ************





































 ************ 弘子さんとの会話 ************


「台風が接近する中で、恐縮ですわね。」

「いえいえ、もう大歓迎ですよ。」

 幸子さんが、心配そうに向こうの部屋から覗いている。

「まあ、いろいろ苦情も申し上げたかったのですが、このところ、夜間にしょげ返っておられるという情報がアニーさんから来ておりまして、大丈夫ですか?」

「秋の風情は、身にしみるのです。」

「まあ、そうでしょうとも。『秋の入り日と年寄りはだんだん落ち目が早くなる』と申します。」

「そうです、そうです。秋のことわざは、なんとなくさみしいものが多いですよね。」

「でも、秋は、食べ物がおいしくなる季節でしょ。おいもも、ステーキも・・・」

「ステーキが入るかどうかは、知りませんけれどね。でも、さまざまな検査データから言って、状況はよくありません。美味しいものを食べることは、禁止されております。」

「まあ、お可哀そうに。」

「で、苦情って何でしょうか?」

「いくらなんでも、わたくし、バケモノになりすぎです。」

「はあ、そこですか。しかし、あなたは、そこがウリですから。その一見純情さの陰にある、おぞましいほどの魔性こそが、あなたの個性なのです。」

「全然陰じゃないです。頭から化け物です。道子もすごく嫌がっています。」

「そうですか・・確かに先日そのようにおっしゃっておりました。改善いたしましょう。」

「え?え? なんだか、すっごく素直で・・・大丈夫ですか? ホンとに?」

「はい。もう、人生終わりですから。」

「こらこら。落ち込んでいる場合じゃないでしょう。ほらほら、元気出しましょう。幸子さん!お饅頭とお酒、持ってきてくださる? 酒盛りいたしましょう。道子も呼びます。友子も呼びましょう。弘志や武さんと正晴さんもお呼びします。ダレルさんもリリカさんも、みんな呼びましょう。今夜は大宴会にしましょうね。ついでに各自の要求事項も聞いてやってくださいね!大変ですよ。落ち込んでる「ひま」はないですからね。」

「はあ、結局そうなりますか・・・・・でも、魂胆見え見えです。あなた高校生でしょう?人の不調に付け込んでお酒飲もうなんてもってのほか。ジュースにしましょう。」

「むむむー。わたくしを怒らせたらどうなるか! これは、作者の使命ですからね!働け、働け!びし!びし!」

「うぎゃー!」


  ************     ************

























評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ