わたしの永遠の故郷をさがして 第三部 第一章 第百五回
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「では、細かいところは、時間をかけてお決め下さいな。ここでの会合は、大変、実り多きのとなりましたでしょう?」
ビュリアが軽く問かいかけた。
「ふん。半分、無理やりだけどね。ここにずっと置きっぱなしにされちゃあ、どうにもならないんだから。ちゃんと帰してくれるんだろうね?」
「帰るべき方はお帰り下さい。しかし、帰れない方は帰れない。そう決めたのだから。」
「おい、先生、あんたどうするよ。これが二度目のチャンスだぜ。多分。」
マオ・ドクがデラベラリ先生に小さく言った。
「とても、ここは、正規な物理現象とは思えません。どこまでかは、きっと幻の類でしょう。多分。・・・ビュリアどの、ここは、『事象の地平面』と考えて良いのですかな?」
デラベラリ先生が尋ねてきた。
「そりゃあなんですか?」
マヤコが言った。
「情報伝達に関する境界面ですな。この先は、光でさえ、もう出ても来れない。ブラックホールの周囲か、宇宙の果てか、人類が行くことはおろか、観測することも出来ない。しかし、ビューナスさんは、空間を跳躍する技術をどこかから手に入れた。おそらく『ド・カイヤ集団』からだと、ぼくは考えていたのですが。そうすると、宇宙空間を縫い合わせて、遥かな遠くに跳躍は出来るが、はたして、事象の境界面をまで超えられるのか?は、よくわからない。そもそも、そんなものがあるのかも、証明はされていないです。ブラックホールの周囲に巨大な物質が立ちはだかっているという説もありますが、そのことも証明ができなかった。ならば、『事象の地平面』が、あるはずだとは思われますがね。もし、ぼくたちがそこに来てるのなら、こりゃあ、大変なことになるのかもしれませんな。ね、ビュリアさん。」
「さああて・・・わたくしは、ここに来る技術はあるけれど、仕組みは知りませんわ。ね、警部さんは?」
「いやあ・・・つまりその、まあ、ぼくの『警察本部』は、そこに来る技術はあるが、ぼくは理屈は知らないなあ・・・・ははははは。」
「あやしいなあ・・・・あんたがた、あからさまに怪しい。つまり、ここはブラックホールの周囲にある、特別な地点だと言っていい訳かい?しかも、『第9惑星』から、そこに入ったと。」
ダレルが確認した。
「まあ、それは、そうですわ。『第9惑星は、特別な星ですから。」
「でも、通常空間に帰れるものと帰れないものがいるとな?」
「そうそう。」
「あなんで?」
「つまり、あなたやリリカさんは、帰れる側にいるのです。でも、アマンジャさんや、前女王様や、ビューナス様は、帰れない側に本体があるのです。同じところにいるように目えてるけれど、そこはデラベラリ先生がおっしゃるように、少しだけ、まやかしなのですわ。」
「あのね、でも、それを操ってるのは、やはり、あなたなんだろう?」
「まあね。これはこの世の理屈じゃない。ビュリアは人間だけど、中身は必ずしも人間じゃない。生きてさえいないものが、この世に存在さえしないなにかが、ビュリアの中に概念上存在し、あたかも生きているように振舞っている。そういうわけよ。この宇宙の物理法則には左右されないわけよ。リリカさんは、わかるはず。」
「なんで、リリカは分かるんだ? さっぱりわからん。そういうのを、『無意味』、『ナンセンス』と言うのだ。どういうトリックかはまだ分からないが、必ず裏があるはずだな。ね、警部さん?」
「さよう、確かに、出来事には必ず原因があるのです。ただ、分からない事も、ときには、あるのです。」
「ふうん・・・あんたがた、どこかで絶対につるんでるな。リリカ首相。説明してください。」
「あの・・・わたしは、女王様からちょっと依頼をされただけです。秘密のね。」
「やはり、つるんでるんだ。まあいいや、それはそれとして、またあとで話してもらうから。とにかく今は、帰してもらおう。地球に。」
「いやあ、デラベラリ先生を、つまり、その、あっちに行かせることは可能なのか?お嬢?」
マオ・ドクが、勝手に尋ねた。
「まあ、可能ですが、帰れなくなりますよ。絶対に。どうしますか?先生?」
ビュリアが答えた。
「まだ、早い。ドク、まだその時ではない。それにだいたい・・・」
「だいたい・・・なんですか?」
ビュリアが意地悪く言った。
「いやあ・・・・」
「まあ、困ったかたですわねぇ。はっきりしないんだから。アマンジャさん。どうですか?」
「まあ、あたしは、受け入れる積りではいるよ。いつでもおいで、でも、来たら、もう帰れない。」
「まあ、そういうことです。いいですか、待てますか?先生? わたくしは、まあ、この際、アマンジャさんの意志が確認できたから、いずれここにおいでになることは、許可いたしましょう。ただし、生きててくれないと、ちょと困るけれども。
「はあ・・・・どうも。」
「よかったじゃないか、先生。でも、おれはどうなる?」
「あなたは、どうしたいのですか?」
「おれは、お嬢のいる世界で、いつまでも、助けになればいいと思うだけだ。地位も名誉もいらん。」
「お金は?」
「まあ、そりゃあ、儲かればいいが、ここではどうにもならないだろうよ。金よりお嬢だ。」
「なるほど。考慮いたしましょう。では、地球その他に、お返ししましょう。それぞれが、在るべき場所にね。」
「ふん、魔法使いめ。かならず、いつかすべてが、分かる日が来るさ。みてろ!」
「ええ、わたくしも、そう、願いますわ。」
『第3部』・『第1章』・・・おわり・・・『第2章』につづく・・・・・
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「あららあ、やましんさん、いったん終わりですか?」
「いやあ、幸子さん、ちょっとやましんの頭では、扱えないところに来ちゃったから。やりなおしですよ、ははは。」
「あの・・・『第4部』で、幸子が出たままになってますから。そちらは、よろしくお願いしますね。絶対に準主人公に昇格ですよ。お仕置き用のお饅頭は、大量に用意しました。すぐに、雨あられと降りそそぎますから。」
「はぎょわ!こわい~!! はいはい。実は、きのう、道路で、ランニング中に、はでに転倒してしまって、身体中痛くてねぇ。落ち着いたら再開しますから。」
「じゃあ、幸子、ちょっとお池の様子を見にゆこ~~っと。」
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