表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
105/106

わたしの永遠の故郷をさがして 第三部 第一章 第百四回



 ***********   ************



 この星での時間ということがら自体が、金星や火星などのような、彼らの太陽系とは全く違うものらしいということは、一般の市民も、皆感じていた。


 彼らの肉体の老化は、ごくわずかずつしか進行しないようだった。


 金星の10年が、ここでは1000年くらいに相当しそうだ、と学者たちは数字をはじき出していた。


 しかし、それが、物理的な時間の進行そのものなのか・・・・つまり、寿命が大幅に伸びているのか、それとも、そう認識しているだけのものなのか、については意見が分かれていた。


 金星人全体が、夢を見ている状態だと主張する学者もいて、それを否定し去ってしまう根拠も見つからなかった。


 物差し自体が、はっきりと定められない状態だった。


 科学者たちは、総統とヘレナリアの了承のもとに、探査機を太陽や宇宙空間に向けて飛ばしていた。


 彼らに見える限り、この宇宙で唯一の恒星である。


 探査機は、太陽に近寄れるぎりぎりのところから観測を続けていたが、かつての金星人の太陽と、輝く仕組み自体は変わらないようだ。


 表面の温度は7000度程度で、これもそう大きくは違わない。


 大きさも、彼らの、元太陽とあまり違わない。


 問題は、なんでこの星が出来たのかが、まったく推測できない事だった。


 この太陽の周囲には、これまた、この惑星しかない。


 空中都市が観測してきたデータからも、宇宙空間に星の材料のかけらが、ほぼ全く見当たらない。


 この太陽と惑星以外に、彼らが認識可能な物質は、全く見当たらなかった。


「未来の女王様が、自らそのように、おつくりになったからですわ。」


 と、ヘレナリアは言う。


 金星人は、遥かな昔には宗教を持っていたが、それは時間の流れの中で消えて行き、『空中都市』の時代になってからは、ほぼ消滅していた。


「そおれはだなあ、・・・太古の宗教のようなものではないかなあ。自分には、よくは分からないが。」


 ダンクは、ナナに向かってそう言った。


「さあ、どうかしら。そのお話し自体が、ここは『現実』ではないと言う、証拠かもしれないわね。」


「君は、『夢派』だったかな。」


「違います。『現実派』です。」


「じゃあ、そういう考えは出てこないだろ。」


「そうでもない。たしかに、この宇宙自体が、なにかの意志に基づいて設計され、作られたとしたら、多くの謎は解けてしまうかも、と。そう言ってるだけ。」


「本気で?」


「まあね。でも、ここから旅立てば、それも分かるかもしれない。」


「やはり、行くのかい?」


「軍人としてはそれが務めよね。ここには戦争はない。ヘレナリアがいる限り、武器は作れないから、起こる可能性もない。せいぜい喧嘩位い。天災も起きそうにない。通常の警備隊だけで十分。われわれの仕事はここにはない。」


「除隊したらいいさ、それだけだろう?」


「あなたは、残ることに方針転換したの?」


「いや。でも、ぼくは軍人だからじゃない。キッチンの事がひっかかるから、だけさ。」


「ほう・・のりちゃんが、行くと決めたから・・・じゃないの。」


「それは、まったく故なしとはしないが、よこしまな事は考えていないよ。」


「ごりっぱ。・・・あたしのことは、考えてくれないんだ。」


「はあ? なんだそれ・・・」


「いえ、いいのよ。・・あああ、時間が経たないと言うのも、もどかしいものよね。」


「そうか? まあ、しかし、出発の時期が決まりそうだと聞いた。もうすぐだよ。」


「うん・・・・まあね。」



 **********   **********



「秘術的な事柄は、ほぼ解明されました。ヘレナリアの協力もあり、必要なエネルギーは人工製造可能です。まったく、どうやったんだか、知りませんが。」


 局長は、外を眺めながら答えた。


「ああ、まあ、ここでは、追及しない方が良いことだけは、学んだよ。総統に報告しよう。出発の時間は、すぐに決まることだろう。残る者は増えたかな。」


「そうですね。まだ決めかねている市民も多くいますが、これで、結論は出してもらわなければ。」


「うん。猶予時間は、もう、あまり長くは取らない。」


「はい、決まったらすぐに公表しなくては。」


「たった一度の、永遠の決定だよ。実験は、できないよ。」


「はい。そうですね。」


 

 ************   ************



「そこが決まったなら、じゃあ、あたしたちは、どうしてくれるの?」


 ポプリスが尋ねた。


「わたくしは、その骨子を承認されたなら、それ以上口出しはしませんわ。北島以外に関しては。あとは、リリカさんと、ダレルさん次第で、もう、いいです。」


「えらく、物分かりが急に良くなったね。おかしな話だが。」


「ぼくのお話を聞いて、下さいよ。」


 パル君が言った。


「ああ、ごめんごめん。なんだか、パル君の事は、勝手に決めちゃってるものね。」


 ビュリアが、ほほ笑みながら言った。


「うん。ぼくは、まず、ウナがそれで良いと言ってくれること。それから、ビュリアさんにお願いがある。」


「うん。なあに。パル君。」


「もう、『人間を食べること』は、止めると、約束をしてください。宗教上『絶対に必要な場合』以外は。」


「パル君、その、宗教上『絶対に必要な場合』ってのは、なんだい?」


 マヤコが尋ねた。


「うん。よくはわからないんだけど、なんとなく、そう思ったんだ。宗教的必要性ってことが、あるかもしれないなと、思っただけだよ。」


 じつは、これは少し嘘だったのだ。


 パル君は、誰も知らないことがらを、金星の『ママ』から聞かされていたからだ。


「またあ、パル君、ビュリアにそんなこと認めといたら、ろくなことないよ。」


 女将さんが忠告した。


「この子の中には、女王様の分身が、まだ、残ってるんだ。なんとなあく、あいまいになってるけどもね。『絶対禁止』にしとくべきだと思う。」


「同感ですな。」


 ダレルが言った。


「ええ、パル君、それはそのとおり、約束しますわ。間違いなく。」


「『絶対』を入れる方だろな?」


 ダレルが念押しした。


「パル君が言う方向で。」


「なんでだよ。」


「『聖域』は、必要だからです。ただし、『タルレジャ教会』の権限が及ぶ範囲内だけは、ですわ。それ以外は、『絶対禁止』で当然、けっこうですわ。」


「気に入らない。」


 ダレルが主張した。


「それを認めたら、あとは、すべて私たちに任せると?あなたは、一切口出ししないと?」


 リリカが再確認した。


 リリカは、それ以上の『強制』を、ビュリアにしてはいけないことを、パル君とは違って単独で見抜いていたからだが。


「はい、お約束いたしましょう。この地球の最後まで。」


「ふん。よくわからないけど、あたしたちのことは、結局どうなのさ?」


 ポプリスが、すこし苛立ちながら追及した。


 リリカ火星首相が答えたのだった。


「ダレルさんが同意するなら、『ド・カイヤ集団』が、合法的に地球の新王国に存在することは、認めたいと思います。ただし、ババヌッキ社長の傘下に入る事が前提です。」


「ふん。これ以上ごたごたしたくはない。いいだろう。ね、あんた。」


「まあ、よかろう。基本線は。それでよいと思う。」


 キラール公が、また椅子にそっくりかえりながら答えた。


「他の方はいかがですか?・・・ブル先生は? ジュアル先生は?」


「そこは、ぼくの領域ではなさそうだ。しかし、意見をする権利は、この先も当然保持することが前提。ぼくだけじゃなく、ここにいる全員、また、王国民もだよ。あんたの言う宗教的『聖域』は当然認めたくはないが、今は、とにかく、みんなが生き延びなければならない。パル君に、君を監視・指導する権限を、与えたまえ。なら、ここでは、容認しよう。」


「ええ、同意いたますわ。」


「火星政府と地球と、その『王国』との関係性については、さらにしっかりと詰める必要があります。継続して話し合う事にしましょう。」


「それは、新王国の政府に任せます。ニコラニデスさま、いいですか?」


 リリカが言った。


「ああ、もちろん、それで、良いでしょう。」


「あなたが、当分は、『タルレジャ王国』の指導者です。」


「最善を尽くします。民主制の確立を実行します。必ず。」


 彼らは、総会に戻ることで、一致したのだった。




   ************   ************



 









 

  

 





























 




































 

































 


 

 


  

 





 









 


 

 






 















評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ