わたしの永遠の故郷をさがして 第三部 第一章 第百二回
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「そう。だから、お互いにとって、これは、チャンスになるんですよ。あなたがたが、ババヌッキ社と提携協力するのならば、ビュリアさんは勿論、火星側の承諾も得やすくなるでしょう。まあ、ややこしい交渉は必要になると思いますよ。だから、あなたがたも、それなりの態度をする必要はあるでしょう。まあ、ビュリアさんとあなたの間が、どういうものかは・・・。ぼくは詳しくは知りませんがね。個人的な怨恨にだけ寄りかかったら、せっかくの飛躍のチャンスを、逃しちゃいますよ。」
「ふん・・・・ちょっと、キラールを呼んでいいか?」
「ああ、どうぞ。どうぞ。」
ポプリスは、元の場所に顔だけ出して、キラール公を呼び出した。
「なんか、企んでるなあ。あの連中。」
ダレルが、リリカにささやいた。
「まあ、見当はつくわよ。あなた、難しい事、言い出さないでくださいよ。」
「はあ? ぼくは、難しい事なんか言ったことはない。」
「そう?あなた、女王様のことになると、意固地になる。ビュリアさんにも、どこか反発したがってる。」
「そりゃあ、当然さ。自然の流れだ。」
「でも、火星の再興を願うならば、話に乗ることも必要でしょ。」
「まあね。」
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「と、いうわけです。」
ババヌッキ社長は、自分から提案内容を解説した。
「ふうん。。。。」
キラール公は、王族である。
いささか、生意気なところはあるし、態度が常に横柄な部分もある。
ここでも、そっくりかえって話を聴いてはいたが、やがて、思い直したように、椅子に座り直したのであった。
「ぼくは、反対しないよ。ババヌッキ社の信用を活用できるようになるのならば、願ってもない事だ。しかも、ビュリアさんが、こちら側に付いてくれるんだったらば、ぼくらとしても、それなりの礼を尽くす用意はある。違うか?」
「まあね。相手が、それなりの礼を尽くすのならば。」
「そこは、しかし、当面助けてもらうんだから、しばらくは我慢しなければ。」
「まあ、な。」
ポプリスは、それ以上反論はしなかった。
「じゃあ、目出度くそういう方向で、行きましょう。ははははは。」
社長は、愉快そうに笑った。
三人は、立ち上がったのである。
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ババヌッキ社長と、ポプリス、キラールは席に着いた。
それから、ひと呼吸おいて、ババヌッキ社長が挙手した。
「どうぞ、社長さん。」
ビュリアが言った。
「いや、ども。あああ、只今、こちらの『ド・カイヤ集団』幹部、お二人と話し合いしました。我々は、協定を結び、事業協力を行う事で、合意しました。ダレル火星首相閣下、リリカ副首相閣下。そうして、地球の地主さまであるビュリア様に、申し上げます。是非、この方向で進めさせていただきたい。」
「ふん。」
ビュリアは、腕組みをしながら、三人を見つめていた。
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「わたくしたちは、ここから出発すべきなんだと言うことですよ。お父さん。」
のりちゃんは、そう父に言った。
「父さんは、反対はしないがね。気がかりなのは、あのとき家にいなかった、母さんのことだ。」
「あの、ヘレナリアさん。母と再会は出来ないのでしょうか? 私たちが火星から連れて来られた時、母は市場に行って外出中でした。」
ヘレナリアは、しばらく考えていた。
「それは、以前にも、お伺いしておりましたけれど。わたくしが、直接にどうこう出来る事象の範囲外なのです。もし、お母様が火星滅亡の時に、救出されていたとしても、お二人が向かう次元には存在しないと考えるべきです。」
「そもそも、なんで、我々だったのか? ですよ。あなたは。そこんところの理由は、まったくと言っていいほど、すっとぼけていえ、話してはくれていないですよ。なぜ、我々二人を、ここに連れて来たのですか? なぜ、他の人じゃあなかったのか。」
ヘレナリアは、いささか困った顔になった。
いや、そういう顔になった、気が、のりちゃんには、したのである。
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