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時刻神さまの仰せのままに  作者: Mono―
第ニ章:世界と、セカイと、せかいと
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43話:世界の糸


セカイからの脱出を目指し、一致団結した人間たちとウルド。

眠っていた脅威が再び目を覚ました時、彼らの運命は如何に_____

 

  その違和感に気付いたのは、隊列の最後尾を行く芽愛。



「…あの〜、結さん?」


「にょ?」



  奇妙な応答を返した恋羽結に、芽愛が言う。



「この道って…一度、通ってますよね?」


「あっ! そう! いま私も言おうと思ってたんだよね〜」


「やっぱり…」



  はぁ…とため息を漏らした芽愛だったが、口を挟んだウルドがその不満を払拭する。



『このセカイは、完全な”平行世界パラレルワールド”では無いらしいのじゃ。お主らのいる世界と、その他の世界。それらから断片的に集めた世界のカケラを寄せ集めて造られた、言わば”紛い物”じゃ』


「…どういうことです?」


『文字通り、じゃよ。猿真似で築き上げた偽物__同じ景色が続くのは、”同じ世界から集められたカケラを繰り返し使って想像しているから”、じゃ。同じ場所を進んでいるように見えても、わらわがしっかりと座標を見ておるから安心せい』



  ここが、元の世界の常識が通用しない場所であると。そんなニュアンスを含んだ説明を受け、もう一度深いため息をついた芽愛は納得せざるを得ない。



「…なあウルド? …やっぱり世界って、俺たちの生きてるのとは別に、まだ存在してるのか?」


『簡潔に述べると、在る。…前にも少し触れた気がせんでもないが、世界は”時刻”と”空間”の2つの軸から成り立っておるのじゃ。曰く、その2本の糸が交わる地点の数だけ、”世界”という交差地点は存在する、というわけじゃ』



  不気味な静けさをまとったセカイの空気をキリリと締めるような言葉に、人間たちは固唾を飲む。



『世界の姿は様々じゃ。お主らの世界のように、ひとつの種族が繁栄と衰退を繰り返しているような世界もあれば、生物という存在が存在しない世界も存在する。…世界は、ひとつで”世界”という完成系なのじゃ。それを、全ての世界を手に入れようなどと…!』


「う…ウルド?」


『…む、すまんの。少しばかり、情を入れすぎたか』



  どこか憤りを孕んだウルドの声音に、彼方が言葉を挟む。



『……もうすぐ転移門のある座標近くじゃ。光に触れればその時点で転送が始まる。躊躇わずに入るのじゃぞ』


「お…おう……」



  力ない声で呟いたウルドの言葉を聞き、5人は何処と無く焦燥に駆られ、踏み出す脚を速める。



「次に曲がるのは……あの小道で合ってるか?……ウルド?」


『ああ。座標では___の_____………』


「ウルド…?」


『……………』



  だがその道中、生命線であったウルドの声が糸を切ったように届かなくなる。まるで、電話をしている片方が途中で切断したかのように。



「どうしたんだ!? ウルドっ!?」



  脇に逸れていく小道は全ての特徴が同じであり、目印となるようなものは存在しない。故に、曲がるのか、このまま直進するのかは、ウルドの誘導がなければ正誤判定することが出来ない。

  そして____



『_______ッッッッ!!!!!!』



  まるで、その光景を嘲笑うかのように。必死に呼びかける彼方の声をかき消すような咆哮が、深い森林に轟く。



「ね…ねーちゃん、この…声って………」


「あの熊……距離は十分に離したはずですが___」



  目を潰して視力を奪った大熊からは、当の熊が暴れまわり森へと突っ込んで行ったのも考慮して、かなりの距離を取ったはず。更にはそれに先んじて絶命させた1頭目の熊からも、倍以上の距離を開けている。



「新手のやつか……クソ…こんな時にっ!」


「…恐らくゲートは近くにあるはずです。芽愛、対象を目視する前に、座標までのルートを確保して下さい!」


「わ、分かった!」



  もし仮に新手の異進種が現れたとしても、同じ種ならば彼方と芽衣で討伐が可能___目標を”討伐”に指定しない場合でも、どちらか一方が足止めをすることが可能である。……その為、芽衣は機動性に優れる芽愛を先鋒として、ゲートを発見される手段を取った。



「…しかし、この声の大きさにしては距離がありますね。…姿が……見せません」


「どっかで道に迷ったんじゃ…?」


「そうであって欲しいの頃ですが___どうやら、迷子が原因ではないようですね」



  森の奥で轟き続ける咆哮は、声量から計算してもすぐ近くから発生したものであると推測できる。…しかし、その大きさであるにも関わらず姿が見えない理由を、芽衣は静かに悟っていた。



「…声が、2つあります」


「え…?」


「獣同士が、争っています。…我々をどちらが料理するか___種は、そんな所でしょうか」


「余裕の考察をどうも!」



  異進種でさえ口撃対象にしてしまう芽衣に感服しつつ、彼方は来たるべく先頭に備えて息を整える___が。



「ぐぅっ!?」



  その鼻腔から入り込んだ空気の余りの臭いに、呼吸器が拒否反応を起こす。



「くっ…臭え(くっへぇ)………!!!」



  あまりの臭気に呂律が回らなくなる彼方。時を同じくして臭気に晒されたであろう芽衣は、僅かに眉間に皺を刻んだだけでったが、彼らの後ろでは鼻を袖口でおおって、その臭気が鼻腔へと侵入するのを拒もうとする姫乃と結の姿もある。



『______ッッッ!?!?!?』



  そして、その場の人間に多大な影響を及ぼした臭気が辺りに充満すると同時に、少しばかり奥まった森の彼方から、断末魔に似た叫び___通常の咆哮それとは少し異質な、驚嘆の入り交じった叫びが響く。



「ううおっ!? な…なんだ…!?」


「…決着が着いたようです。…まあ、我らにとっては共倒れが一番の結果であった訳ですが……」



  期待を裏切られ、少しばかり呆れの混じった声音で、芽衣が吐き捨てるように言う。



「ねーちゃん! 次の小道の先、光の渦みたいなものがあったよ!」



  僅かな時間を最大限に活用し、目標地点である”ゲート”らしきものを発見した芽愛が、跳ぶように駆け寄ってくるのを確認し。



「御嬢様と恋羽様を連れて、ゲートへ」


「·····えっ?」



  芽衣の言葉に、弟は静かに頷き。僅かな間を置いて、主人である姫乃が心配そうな面持ちで芽衣の顔を見つめて言う。



「だ…駄目です! ここまで来てっ―――!?」



  姫乃の言葉が終わる前に、巨影がもたらす振動が5人に伝播する。それは言うまでもなく、この場所に危険が近づいていることを暗示している。



「大丈夫だって。俺たちもあとから行くから。先に帰って待ってろ、な?」


「で…でも……」



  歯痒そうに俯く姫乃に、彼方に続いて芽衣が言葉をかける。



「また会いましょう、御嬢様。わたくしたちの世界で」


「·····」



  芽愛に手を引かれ、躊躇いつつもその場から後退する姫乃。



「芽愛、タイミングはわたくしが合図します。手筈通りに」


「おーけー!」



  その姫乃と結を伴い、僅かに距離を離しながら。芽愛は連結した銃を音のする方へ向け―――――



『―――――ァァァァァァァァァアアアアアアアッッッッッ!!!!!!!!!!!!!』


撃て(テェェェェェッッッ)!!!」



  咆哮を真っ向から貫くべく生み出された、針のような声高な号令と共に。放たれた先制の一矢は、大熊型異進種へ向け、一直線に飛翔した。








  coming soon…



お読みいただき、ありがとうございました。


次の更新もお楽しみに!

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