40話:繋ぐ光
彼方と別れ、その後を追う形で行動する逢里と綾音。
そんな2人の前に現れたのは、彼等だった___
物々しく蠢く大人たちの中に、その2人はいた。
「くそ…やっぱり繋がらない。…電波が届かない所にいるってさ」
「届かないって…そんな奥深くに行ってるの? 彼方」
「…けど、今の日本で圏外になる場所なんてそうそう無いだろうし___」
逢里と綾音は各々武器を携え、キャンプ場近くや宿泊施設付近をデバイス片手に見て周り、姫乃を探すと言い別れた彼方を探していた。
「学園からの連絡が確かなら、この辺りの森にも異進種が現れてもおかしくないはずだ。…もし1人で昨日みたいな異進種と戦闘になったら、ただ事じゃない」
「…先生には連絡したけど……あの人、既読すらつかないわ」
「…誰が既読つかないって? うん?」
デバイスを見つめながら、そう悪態をつく綾音の背後から。噂をすれば、ご本人様が登場する。
「な…先生!? 」
「ここも五月蝿くなったもんだな…二葉?」
「…視界をうろちょろされると目障りで仕方がない。…お前も含んで、な」
「ねー私は? 私は?」
「…静まれ」
辺りでバタバタと走り回る大人たちに、心底軽蔑するような目線を送る少年と。その青年にベッタリの桃色の髪の少女。
はぁ…とため息をつく健慈の横には、今朝方顔を合わせたばかりの先輩2人の姿もあった。
「どう…したんですか? なんか…役者が揃ってますけど」
「寝言は寝て言えよ、幸坂。…今が、その時ってことだ」
「え…?」
不敵な笑みを浮かべる健慈は、ついてこい、の一言を残し、二葉と月夜を両脇に従え、森へと歩いていく。
「ねえ…その時って、何のことかしら」
「……」
「ちょっと逢里? 聞いてる?」
「…もし、彼方がまた”例のセカイ”に行っているとしたら?」
「え…?」
「ウルドの事だよ。…彼方が”狭間”に居るのなら、電波は届かないんじゃないか!?」
互いに瞳に瞳を映した2人は、頷き合い、歩を進める健慈と先輩たちの背中を、無言で追いかけ始めた。
*****
「…ん? 誰だ、あそこで死んでんの」
健慈がそれを見つけたのは、後ろから中坊2人が走りよってくる気配を感じた、そのしばらくあとのことだった。
「うう……」
「…生きている。…目視できる範囲に、外傷はない」
「つうか深見じゃねえか。何してんだ?こんな所で」
「うう……誰か、大丈夫ですか?って聞いて下さいよぅ……」
「大丈夫だから口が利けるんだろうが」
「うう…酷いです…」
そう呟くと、自力で起き上がった丸ぶち眼鏡の女性___学園のいち教師である深見は、その場で女の子座りをしたまま、ズレた眼鏡を直し言う。
「こ…寿先生は、何故ここに?」
「連絡網は読んだろ? 仮にも戦闘員だからな、俺は。…あとこいつらも」
「……」
「早く施設内に行け。こんな所で昼寝してると食われるぞ」
「別に昼寝をしていた訳では無いのです! 走り回っていたら急に意識が遠くなって、気付いたら地べたに伏していたんです!!」
「…尚更だろ、そりゃ……」
「そうれす! そうなんれす…けど……」
月夜と綾音に肩を抱えられ、ようやく2本の足で立ち上がった深見だったが、直ぐによろよろと姿勢を崩す。
「けど…なんだ?」
「私の生徒である姫乃さんが、バスに戻ってこないんです。…それを知った彼方くんも森へ行ってしまって……だから、私も少しでも手がかりを探さなくては……!」
それを聞き、肩を支えていた綾音が深見に問いかける。
「え…? 姫乃ちゃんが居なくなった…? それ、どう言うことですか?」
「……」
「…引き込まれたんだよ。狭間に」
どう説明しようか一瞬言葉を詰まらせた深みに代わり。呟いたのは、神妙な面持ちで立ち尽くす健慈だった。
「へ…? 引き込まれた…? 何に!? 何処にですか!?」
「説明すると長くなる。悪いが、詳しいことはあとにさせてもらう。行くぞ」
「あの…ちょっ…!?」
偶然通り掛かった施設の警備員に深見を引渡し、再び健慈は無言で歩を進める。
「………」
「ねえ! 先生!」
「………」
「姫乃ちゃんが引き込まれたって、どういうことなの!? …それに彼方はどこに行ったのよ!? なんの手がかりもなく森に入って、どうするつもり!?」
「………」
「__ッ!! 黙ってないで答えなさいよッ!!」
一切の迷いのない足取りで進む健慈だったが、何も知らされずひたすら歩かされることに業を煮やし、詰め寄る綾音に進路を塞がれる。
「…うっさい女だな、お前は」
「………」
「なんだ? お前から話せと言っておいて、お前が黙るのか?」
「綾音…」
拳を固く握り締め、綾音は健慈に鋭い視線を向ける。
そして、自らを嘲笑するかのように目の前に立つ男へ向け。少女はその手を背後に伸ばしながら、言い放つ。
「…貴方は、何をしようとしているの!? …私たちを使って!利用して! 何を企んでいるの!?」
「………」
「答えてよ…先生!」
「………」
「答えなさい!! 寿健慈ッ__!!」
無言。
無音。
静寂。
静まり返る森の中に、風が吹く。そして、その風に背を押されたかのように男は__健慈は、口を開いた。
「……利用、だと?」
「…そ、そうよ! ウルドが言ってたわ!? 貴方は信用しちゃいけないって」
「あの女、そんなこと言ってたのか」
「__ッ!」
「…ひとつだけ、言っておく。俺の目的は、”俺の為に生きること”、じゃあない」
「………」
「以上だ」
「はぁっ!? どういう意味よ!?」
「……つまり__だ」
綾音のを目を見てそう口にした健慈は、僅かな足音をその場の4人に響かせ、数歩___対面する綾音を押し退けるように進み。背負った白い大剣に手を伸ばす。
「___ッッ!!!」
咄嗟に身構える綾音と、その後ろで同じく下肢に力を込める逢里。更には直立する二葉と月夜の前で、健慈はスラリと引き抜いた大剣を、大きく振りかぶり地面へと突き立てる。そして___
「…転移門・解錠」
健慈が叫ぶと同時に、突き立てた大剣から視界を埋め尽くす程の閃光が生まれ。
「試練だ。オマエら__」
地面から覗く半身の大剣を前に、健慈は先程の咆哮とはかけ離れた低く澄んだ呟きを零す。
「…ミッションの達成条件はただ一つ_____死ぬな!!!」
世界は、セカイへと______
繋ぐ光が、世界を覆い。新たなるセカイへと扉となり、命たちを眩く照らしだすのであった。
coming soon…
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次の更新もお楽しみに!
更新遅くなりまして、大変申し訳ありませんでしたm(_ _)m




