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時刻神さまの仰せのままに  作者: Mono―
第ニ章:世界と、セカイと、せかいと
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39話前編:神”童”の力

平行世界パラレルワールドへ誘われた姫乃、結、芽衣、芽愛の一行は、大型異進種との戦闘を開始___

大型異進種の凶刃に立ち向かう人間たちに、神々は____

 

  対人戦闘において、対象の殲滅や完全な鎮静化が目的でない限り、必要最低限の攻撃で相手を戦闘不能にすることが求められる場面が多々ある。

  人間が情報を得るために使う器官のうち、一番重要とされている器官は、瞳___眼球である。


  相手の視界を奪うという手段は、一番手っ取り早く、それでいて確実性の高い手段__よって、古今東西使われる常套手段として、目眩し、目潰しなどの手法が用いられて来た。


  …そして、どうやらその手段は相手が人間でなくても、効果的であるらしい____



「大人しくしていなさい、獣ッ__!」



  仕込み刃の使い道として、立体機動を行う他に、”蹴り”という打撃攻撃に、斬撃属性のダメージを付与する、というものが存在する。勿論、近接戦となれば相応のリスクを伴うが、ここまで対象が大きく、小回りの聞かない大物となると話は変わってくる。

  跳躍と同時に、腰を軸として上・下半身を左右別々の方向へと捻じる。そして、跳躍による一時の飛翔が最高点に達した瞬時___



「___ッ!!!」



  体というバネが生み出す弾性力を最大限に利用し、懇親の力を込め、回し蹴りを繰り出す。


  大熊と芽衣の決定的な差___”速さ”によって生み出された決定的な隙により、”その場所”へ、その攻撃は一寸の狂いもなく当てられた。



『___!?!?!!!!』



  回転によるエネルギーも相まり、堅牢な守りを誇った大型異進種の右眼は、目頭から目尻を斜めに切り裂かれ、吹き出した黒ずんだ鮮血を大地に注いだ。



「…まだ、足りませか? ならッ___!」



  明らかに先程とは違う__悲鳴にも似た咆哮を轟かせ、大熊は雑多な攻撃を芽衣へと浴びせる。…勿論、そんな粗雑な代物を、芽衣が頂戴する訳は無く___



「やれやれ…貴方の相手は、国税で動く方々が務めてくれると言うのに。…私の手を焼かせるとは、高くつきますよ…?」


『______!!!!!!』



  攻撃パターンが一本化した獣に、そんな冗句ともとれる呟きを残し。

  前後左右、更には上下を混じえ。いわゆる方向から接近しては離脱を繰り返し、皮膚の薄い粘膜付近や関節、先程の一撃のダメージが色濃く残る右眼へ。容赦のない攻撃が加えられる。そして___



「行くよっ! ねーちゃん!!」



  一通りの彫刻を終えた芽衣の耳に、付近の安全を確保し、見慣れぬ連結砲ロングライフルを構えた芽愛から、矢のような言葉が届く。



「チェック…メイト」



  後退しながら呟く芽衣の頭上を、弾速、殺傷能力共に倍になった鉛玉が通り過ぎ。その、0コンマ数秒後___目線の先で体勢を崩す大熊の右目を、質量の塊が的確に撃ち抜く。



『__________!!!!!』



  視界を奪うだけでなく、眼球そのものを完全に破壊し、更にはその奥に位置する司令塔__脳髄にまで達した連結砲の片割れは、それさえも貫き。硬質な頭蓋をも内側から切削し、回転が止まった段階でその半身を外部へと露出させていた。



「…あ〜あ。もう少し頑丈に作ってくれないと…これじゃあ一発しか持たないや」



  芽衣の背後から、芽愛のつまらなさそうな声が聞こえると同時に。



「…随分と、呆気ないものですね」



  巨躯から距離を取り、その影が倒れるのを見届けた芽衣が、今度は大気ではなく__大地を揺らして倒れ伏した骸へ、吐き捨てる。



「ねーちゃん、怪我は?」


「…特には。…少し、袖口が汚れましたが」



  異進種の沈黙を確認した芽愛が、身を潜めていた茂みから姫乃と結を呼び寄せ、同じく踵を返し歩み寄る芽衣へと語りかける。



「どうかしたの? ねーちゃん」



  その姉弟が、たがいに手が届く距離まで近づいた時。不意にメイが背後に振り返る。



「……いいえ、なんでもありません。…この場所は、脅威の有無に関わらず、あまり居心地のいい場所ではありませんね」


「そりゃあそうだよ。第一、ここがどこなのかも分からないんだし」


「……」



(今の殺気は……死に際の憎悪__か…)


  硬い表情のまま息をついた芽衣は、メアの後ろで寄り添うように佇む2人の少女へ向け、口を開く。



「お見苦しい所をお見せ致しました事、深くお詫び申し上げます。申し訳ありません」


「いえ…もしも2人が居なかったら、こうして立ってはいれませんでしたから。…ありがとうございます」


「ひめのんの言う通りだよっ! あんな大迫力のバトルシーン、漫画とかアニメでしか見たことなかったもん!」



  その言葉に、少しだけ口元を緩め。芽衣は僅かに刃こぼれした2本のクナイを収納し、肩越しに3人を先導すべく目線を送る。



「あの死体にハイエナが群がる前に、この場から離れましょう。…芽愛、後方監視を」


「ねぇねぇ芽衣さん、ひとつだけ…聞きたいことがあるんだけど」


「…?」



  芽衣が踏み出したその時、姫乃と肩を並べる結から、声が掛かる。

  振り向いた芽衣に、デバイスの画面を向け。



「みんなのデバイスにさ、”電波”って届いてる?」



  その言葉にいち早く反応したのは、芽衣ではなく、芽愛。



「えぇっ!? 結さんのデバイス、電波来てるんですか!?」


「うん。逃げることに夢中で忘れてたけど、さっきメールが来て思い出したんだ」



  結の隣でデバイスを取り出した姫乃も、その画面を確認する。…しかしそのデバイスには、…そして同じく手に取った姉弟のそれにも、”圏外”と表示されているのみで___



「同じ機種を使っているはずなのに、なんで結さんのだけ…?」


「確かに不自然ですが、この際使えるものは使いましょう。…恋羽様、今私たちのいる位置を、正確に把握出来ますか?」


「まっかせて〜!」



  数秒後、GPSを利用したマップアプリを立ち上げた結のデバイスを、芽衣が覗き込む。



「位置情報が使えるってことは…この世界、衛星が機能しているんじゃないのかな?」


「………」



  思考を巡らせる芽衣の瞳が、デバイスの画面にポップアップするメッセージを捉え__



「__! …恋羽様、先程”メールが来た”と仰っていましたが、それはどなたからですか?」


「えっ? …んっと、友達からどこに行ったのー?って言うメールと、あと学園から……学園から!?」



  追試や補習の常習犯である結は、定期的に学園から呼び出しの連絡が届く。

  …その度に助けを求められる姫乃が、固唾を飲んで見つめる中。開かれたメールを見た4人は、固唾ではなく、息を呑む事となる。



「53区の一部が…危険地域に指定……」


「えぇっ!? 僕たちがいる場所、その真ん真ん中じゃないですか!?」


「……危険指定? なにが危ないの?」



  唯一首を傾げる結に、姫乃が重い口を開き、説明する。



「危険指定は__”異進種”が多数出現し、一般人に避難勧告が発令されるレベルの非常事態です。…まさか…異進種が…そんなに……?」


「異進種って、さっきのでっかいやつでしょ? あんなのがいっぱい出てきたらやばいじゃん!?」


「…全てがあの大きさでは無いでしょうが、少なくとも準中型以上の個体でしょう。あの…狼のようなッ____!」


「___!!」



  (この数…どこから…?)


  中央の少女2人を前後で挟むように身構える、姉弟の目線の先に。



『『『ガァァァアッ!!!』』』



  新たな脅威が、迫っていた。






お読み頂きありがとうございました!


次の更新もお楽しみに!

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