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時刻神さまの仰せのままに  作者: Mono―
第一章:学園
34/67

30話:輝きを齎すもの

彼方達の前にすがたを表したウルド。

再び彼女がコンタクトを取ってきたのには、ある理由があった。


そして、同じ時の流れの中。物語を創る少年・少女たちの元にも、変化の時が訪れる__

居住区第52区の北部山中に位置する、Skuld第8活動拠点。


精神に響くウルドの声に誘われ、彼方・逢里・綾音・健慈の4人は、この施設内に存在する一番大きな鏡のある場所を目指し、歩みを進めていた。


そして数分後、目的地である”ある場所”に到着し、先頭を行く健慈がふと足を止める。


そして、その空間へと繋がる入り口にある青い暖簾を手でのけ、その先へと足を踏み入れる。



「こ…ここって…!?」



最後尾の綾音を戦慄させるその場所は、隣にも同じような模様の描かれた、桃色の暖簾がかかっている。


青と桃。その二つの色が意味するのは、”男女”。



「ちょっと待って!? こら、止まりなさいっての!」


「ぐっ…」



同じくその暖簾を目にした綾音が、奥に消えかけていた健慈のコートを掴み引き戻す。



「お前なぁ… 少しは加減しろっての」


「なななっ…! なんで自然な流れで私を男湯に連れ込もうとしてるわけ!?」


「風呂に鏡があるんだから、仕方ないだろ?」


「だからってなんでそっちに!? お風呂ならこっちにもあるでしょ!?」



と、”女”と書かれた暖簾を指差して綾音が言う。

それを聞いた健慈は、あ〜…と髭を触りながら静かに呟く。



「安心しろ。今、この浴場を使ってる奴はいないさ。ひと月前辺りから、温泉が出なくなったらしいからな」



確かに、青い暖簾と赤い暖簾が掛けられた間の壁には、その旨を伝える張り紙がしてある。


大浴場の醍醐味といえば、やはり個室の風呂には無い大きな浴槽だろう。

しかし、元々観光客の来るような場所では無いこともあり、来客は別途に存在するシャワールームや、宿舎の子風呂で事足りるわけで、施設の運営自体には影響がないらしい。



「同じく女湯も湯が出ねぇらしい。つまり、お前が思ってるような全裸の大衆に出迎えられる、なんてオチはないってこった。…なんだその顔は。何が不満なんだ?」


「人が居る居ないじゃなくて! なんて言うか…モラルってモノがあるでしょ!?」


「行くぞ」


「ちょっ!? 」



お堅い風紀委員の相手をするのが面倒臭くなったのか、健慈はすぃーと音が出るように暖簾の奥へと入っていく。



「…男3人で女湯に押し入る方が…ヤバくね?」


「もう…いいわ…」



彼方の呟きになんとなく収まりが着いた綾音を最後尾に、一行は大浴場(男湯)へと足を踏み入れる。


健慈の言った通り、浴場には一切の温もりが感じられず、明かりが灯っただけの無機質な空間と成り果てていた。

湿気と人気が無いだけでこうも雰囲気が変わるものかと思わせる程に不気味で、ある種の廃墟感を醸し出している。


そんな空間で、この場にいる唯一の成人_健慈が、規則正しく積み上げられた桶をぼーっと眺めていた逢里になにやら話しかける。



「…なあ幸坂。女湯に男が入ったら、一発でこれじゃん?」



ん? といった顔で健慈を見やった逢里に、当の本人は手首に手錠をされた様な仕草をする。

それに、逢里がうんと頷き。



「同じく、男湯に女の子が入ってきたとしても、一発でコレ、だよな?」


「…まあ、法律的には」



それに、少しの間を置いて健慈が続ける。



「…でもよ? 風呂に女の子が入ってきて、不快になる男なんているのか? あ?」


「誰にキレてるのか知りませんが… まあ、逆よりはマシかと」


「女の子がなんだって?」



「い・い・加減に! しなさいっ!」



「「「ぐはぁ!?」」」



話を本筋に戻すためと、あと…なんかもう色々と突っ込みたいことをひとつにまとめ、綾音が男3人衆の後頭部へとケロリンを投げつける。…この場唯一の成人にはイスを。



「何故…俺だけ…イス…なんだ…?」


「本当、教師の風上にも置けない男ねあんたって。サイッテー」



南極に吹き付けるブリザードを優に超える絶対零度の視線を向けながら、綾音の心からの軽蔑が健慈に刺さる。


後頭部を抑えしゃがみ込む逢里と、同じく的になった彼方を他所に。綾音は、湯の抜け底が露わになった浴槽へと歩を進めていく。



「さっさと用事を済ませて出るわよ。こんなトコ」


「「ハイ」」



これ以上彼女を刺激してはならない… そう暗黙の了解を敷いた2人も、綾音に続き壁面へ設置された巨大な一枚鏡へと歩み寄る。



「なるほど、富士山の麓にある湖が鏡になってるんだ」


「洗い場の鏡に見向きもしないと思ったら… こんな場所にも設置されてたのね」



簡単の声を漏らす少年少女に、背後から声が届く。



「この鏡は、両面が鏡面になってる。浴場を隔てる壁を作る時、壁に埋め込む形で作られたんだ」


「じゃあこの鏡を割ったら、女湯むこうがわが見えるのか!?」


「ああ、その通りだ。…設計者、良いセンスしてるぜ」


「…おい」


「ったく! 設計ミスもいいとこだよな!? 事故で割れたらどうするつもりなんだって話で__」


「全くだよな!? アハハ…」



その容姿にそぐわない綾音の低い声音のツッコミにより、再び話が本質へと戻される。

そして、しどろもどろに言葉を濁す健慈が言葉を詰まられた、その時。



『…大変じゃのう女子おなご。こんな普遍な奴らに囲まれおって』


「ホンっと、あと何回桶をぶつけたら煩悩が消えるのかしら。…………え?」



不意に語りかけられ、思わず会話はんのうしてしまった綾音。


綾音を含め、声を感じた4人が鏡を見た時には、既に”ソレ”は現れていた。




『ふふ。そなたとは話しが合いそうじゃのう、女子。…アヤネ、と言ったか? 中々の器量よしと見たぞ』




その姿に、綾音、逢里、そして健慈も。そして、その姿を一度目にし、語らっている彼方でさえ目を奪われる。



『さて、自己紹介といこうかの。…我が名は”ウルド”。 人が、”過去を司りし者”__と呼ぶ者じゃ』






**********






”存在感”とはこのことを言うのだろう。


この世のものでない者が、目の前に在る。


その現象に、頭も身体も動くことを忘れ、空間に静寂が広がっていく。



『む… わらわの姿はそんなに異質か?』



一言一言が、耳ではなく意志に直接響く。その感覚に慣れるまでの数秒間、この場の人間達は話す口を失う。


ただ唯一、彼女と相見えた事のある黒髪の少年__彼方がようやく口を開くまで、たっぷりと10数秒を費やした。



「あ…ごめん、ウルド。…なんか前に見た時と、少し違う感じがして…」


『見違えたか?』


「割と本気で」



ふふ…と柔らかい笑みを浮かべる”ウルド”に、緊張の糸が解けた彼方が言葉をかける。



「前に会った時は…なんて言うか、本当に夢を見てるみたいだったからさ」


『それは正しい表現じゃな。あの世界は”わらわの世界”であって、現世こことは違う。…とは言え、他の人間がわらわと会った時どんな反応をするものか、少し期待していたのじゃが…。 やはり、お主のようには行かぬか』


「あー…。そうだ、紹介するよ。…俺が行方不明だった時、この人…? …ウルドと会ったんだ。綾音には少し話したけど、この人が”女神様”だ」



それを聞きふらりと鏡へと近付くのは、無意識ではあるが、3人うち唯一言葉を交わすこととなった少女。


一歩、二歩、三歩と、彼方のすぐ前まで来た綾音は、鏡の中の存在へと言葉をかける。



「…貴女あなたが、ウルドさん…なんですね…?」


『そうとも。これからこやつが世話になるからの。よろしく頼むぞ?』


「…? はい、こちらこそよろしく…お願いします」



彼方を目線で指しながら、綾音へと語りかけるウルド。それに表情を強張らせながらも応え、綾音もウルドとの初対面を済ませる。



「ふふっ。何だか、想像していたよりも可愛くて、打ち解けやすい方で良かったです」


『そんな言われをしたのは初めてじゃのう』


「あ…可愛いなんて失礼ですよね、ごめんなさい…」


『よいよい。悪い意味で言っていないのは目を見れば分かるからの。それにしてもお主、澄んだ心をしておるの。わらわに近寄る時、こんなにも欲望を抱えていない人間は初めてじゃ』


「そ…そうですか…? えへへ…」



素直に褒められることに慣れていない綾音の緩み切った表情を見て、逢里も意を決したのか鏡へと歩を進める。


そして綾音の少し後ろまで来た所で彼方へと目配せをし、もう一度鏡を見やり、謎に黙りこくる。



「……」


「何黙ってんだよ?」


「いや…君たち普通に話してるけど、相手は神様なんだよね? …僕なんかが話しかけて頭が高くないかな〜って」



それを聞いて、ウルドが口を開く。



『そんなことで謙遜するでない。所詮は無象の時を守護しているのみじゃ。なんの権威も力も持ち合わせてはおらん』


「…そんなこと言われたら、僕なんてちっぽけな人族ですよ」


『ふふ。言いよるの、コウサカアイリ』



そんな、”らしい”話で打ち解けた逢里に続き、最後の一人となった健慈もふーっと息をつき、輪の中へ混じる。



「…こういうのは柄じゃねぇんだけどなぁ」


『そういう性格だから、女が寄り付かんのじゃ』


「なんで神様にまでそのネタで弄られんのかねぇ…」



全てを悟られ済みの健慈はポケットに手を突っ込みながら、ため息混じりに名乗る。



「つーわけで、こいつらのセンセーやってます。以上」


『無愛想な奴じゃのう。わらわを若い人の女だと思って口説いてみよ。ほれ』


「なんで神様に色気事をレクチャーされなきゃなんねぇんだよ!」



お決まりの展開に治まりつつあったが、すっかり疲れた様子の健慈の携帯端末から、在り来りな着信音が鳴り響く。



「…悪い。少し待ってくれ。急ぎの案件だ」



輪から離れ、すたすたと洗い場の方へ消えていく健慈を見て。ウルドが、嘲笑うかのように吐き捨てる。



『…落ち着きのないやつじゃ。…教え子がこうなった理由が何となくわかるわい』


「彼方は元々こんな感じですよ。あの人と会ってから、さら悪化しましたけど」


「男性陣の部が悪すぎませんかね…」


「僕は別口ね」



健慈が席を外したあとも、ウルドという強力なツッコミ役が加わったことにより、キレを増した会話が繰り広げられる。

ふと、忘れかけていた日常を思い出していた3人だったが、電話を終え、舞い戻った健慈の言葉によって、またも災厄の渦中へと誘われる結果となる。



「あ、電話終わったみたいだぞ。じゃあ続きを__」



健慈の姿を視界に捉えた彼方が言うが、当の健慈は静かに首を横に振り、答える。



「いや。…どうやら、俺はゆっくり話をしている余裕は無さそうだ」


「え?」



そう言って健慈は、鏡に歩み寄るどころか一歩下がり、そそくさと端末をポケットに滑り込ませる。



「せっかくウルドがいるんだからさ、もうちょい話合わせていけば良いだろ? …ほら、大人の口説き方__的な?」


「もういいよその話は…」


『………』



頭かぶりを振る健慈を無言で見つめるウルドに、立ち尽くす生徒3人。


そんな彼らに背を向けようとする動作の中で、刹那。動きを止めた健慈が言う。



「…あんた、ウルドって言ったな?」


『だったらなんじゃ?』


「……」



背中越しに、少しだけ目線を向けた健慈が。意味あり気な声音を響かせる。



「…そいつらを、頼むぞ」


『………』



それ以上、何をするでもなく。来た時とはうって変わり、健慈は早々にその場を後にする。


有無を言わせぬ退場劇に、その背中を見送るしか出来ない少年たちだったが、少しの間を開け、綾音が口を開く。



「…まったく、プロジェクトだの計画だの。あなたが居ないと進まないんじゃないの? せめて案内役ぐらい付けなさいよね! まともな!」


「まぁ…教官が忙しいのはいつもの事だからね。…今日は、いつにも増してって感じだったけど」


『………』



雰囲気の一転した浴場に、しばらくぶりに静寂が訪れる。

そして、鏡の中から無言を響かせる女神に、彼方が言う。



「そう言えば、なんで俺たちのところに顔を出したんだ? …挨拶するため__な訳無いよな?」


『ま、半分はその為じゃがな』


「あ〜… 一応顔合わせときたかったんだ」


『わらわの世界に入れるものが、心から信用する者。そんな者達を一度見ておきたかったのじゃ。…1人ほど、期待はずれな奴がおったがの』


「神様に言われるとか…なんか不憫だな…」



曖昧な笑みを浮かべる3人を見渡すと、ウルドは先の言葉に続けるように語り始める。



『…お主らにとって、あの男はどんな存在じゃ?』


「そりゃあ、一応命の恩人だし。あんな奴だけど、俺達の為に、って行動してくれてるのは確かだな」


「彼方と同じく」


「…ロクでも無い人だけど、少なくとも悪い人ではないのはないわ。ロクでも無い人だけど」


『一部辛烈じゃな』



こほん、と咳払いをして、ウルドは続ける。



『あの男、信用するかしないかはお主ら次第じゃ。…じゃが、いつか自分たちで決断し、行動しなくてはならぬ時が来る。その時は___…!?』


「…?」



言葉の途中で、何かに弾かれたように背後を見やるウルド。



「どうした?」


『奴らが…来おったの。そう近くはないようじゃが…』


「奴らって…?」


『時折、わらわの世界を穢そうと紛れ込んで来おる木偶人形でぐにんぎょう共じゃ。…彼方はあの時見ておるじゃろう?』


「ああ… あの気持ち悪いやつ…」



狭間に足を踏み入れその襲撃の情景を目にした彼方は、カタカタと今にも崩れ落ちそうな体勢で迫り来る奇妙な人形たちの姿が鮮明に記憶に残っている。

その不気味な存在を刹那に消し飛ばしたウルドの攻撃の凄まじさもさる事ながら、あんな物に常日頃襲われるとなると、直ぐに気が病みそうだ。



『個々の力は弱いが…束になって穴を作られると厄介じゃ。わらわも早々に行くとしよう』


「え? でもなんか話したいことがあるんじゃ…?」


『……』



鏡の奥が揺らぎ、ウルドの姿が一瞬霞むように明暗する。

だが、彼方の声を聞き。ウルドは振り向き掛けていた体を引き戻し、鏡の前の3人へ、左手を差し出す。



『お主らに、これを授ける。道に迷った時、各々開くが良い』


「…!?」



すると、ウルドの手のひらから暖かい光が溢れ出し、鏡の外の世界を優しく照らし、視界を埋め尽くす。



『そして。…ただ一つ、わらわの口から言えること。それは___』



微光から煌光へ、そして極光へ包まれた浴場で。



『…あの男には、気を付けよ』



彼女の言葉が、光と共に木霊していった。






**********






「…今、何時だ?」


「んーと、オヤジ」


「死ね」


「や」


「…真面目に答えろ。何時だ」


「えぇっと、夜中の2時」


「そうか」


「丑三つ時だよ? オバケが出るよ? でたらどうするの?」


「…知らん」



きゃーこわ〜い! と。如何にも頭の悪そうな、間延びした甘え声で、彼女は言う。

…それだけならともかく、隣を歩く俺の腕を抱え込み、頬を擦り付けて来るものだから邪魔で仕方がない。



「…2時なら、何でこんなに賑やかなんだ?」


「んふぅ…ふーちゃんのぉ…腕ぇ…んふふふふ…」


「頼む、死んでくれ」


「い~や!」



いつもの事ながら、こいつは一種の病だと割り切り、話を進める。



「中等部が野営をするとは聞いていたが… 少し五月蝿すぎるぞ」


「仕方ないって。お泊まり会みたいなものなんだから。楽しいんだよ、きっと」


「いつまで起きているつもりなんだ? 奴らは」


「土曜日のふーちゃんみたいだね」


「…誰に邪魔をされていると思っているんだ?」


「わ〜た〜し!」



そう言ってさらに身体を近づけようと擦り寄って来るのを、腕を振り払って躱す。

すると彼女はああぁん…と気持ちの悪い声を出し、足早に距離とる俺に必死に追いすがる。



「あ、そだそだふーちゃん!」


「なんだ?」


「中等部ってさ、かな君の妹がいるんだよね? 気にならない?」


「…ならん」


「え〜? 折角なんだから顔ぐらい見て行こうよ〜? ね〜?」



足を止めた俺に追いつき、ポケットに滑り込ませたはずの左手をするりと引き抜き、握り締めてくる。



「…お前も、物好きだな」


「ふーちゃんほどじゃないよ?」


「……」



仕方なく。


…本当に仕方なく。俺とコイツは、佐倉彼方の妹が訓練を行っているであろう中等部野営訓練施設へと舵をとった。






**********






いつもと違う場所、いつもと違う時間、いつもと違う匂い。そんな”違和感”に、私たちは楽しさを見出すのかもしれません、


鳳凰祭の一環、野営訓練。

簡単に言えば”キャンプ”と言えるこの行事は、実際に屋外でテントを張り、薪でご飯を炊き、食材を調理し、そのままテントで一晩を過ごす。

そんな、アウトドアな人にはとても楽しいイベントだと思います。


…けど、私みたいな体力のない運動嫌いな女の子には、少し気の引ける行事なのです。


そんな私が今頑張れるのは、すぐ隣に心強い友達が、親友が居るから。そして__



「ひめのーん、こっちこっち! 早くー!」


「ちょっと…待って…結…走るの…速すぎ…ます…」


「やっぱり都会じゃ見れないからねー! こういうのは深い森の中で見るのが1番!」



私を巻くのではという勢いで結が走っていく先には、私たちがテントを張ったキャンプ場とは別の区画にある広場です。結が足を止めた側には、”憩の丘”と書かれた看板があります。



「見て見てひめのん! 満天の星空だね!」


「…!」



結が指差す先__暗闇の広がる空には、その闇を切り裂くような星々が光が輝いていました。



「綺麗…」


「でしょー? キャンプを抜けてきて正解だったね!」


「そうですね… たまには、悪くないかもしれません」



今見ているこの光は、あの星々が何年も前に生み出した光。

彼方遠い宇宙から私たちを照らす、美しい光。



「……」



”姫乃”と名付けられた私は、自分の名前があまり好きではありませんでした。


おとぎ話に出てくるお姫様、その文字を貰った私は、はたして彼女たちのように輝く存在なのだろうか。必要とされ、皆から敬われるような、立派な人間になれるのだろうか。いつからがそんな重荷を背負っていた私に、”王子様”は言ったのです。


「可愛くて、いい名前だね」と。


その時、思えたのです。


私は、一等星じゃなくても良い。五等星でも、六等星でも、名もない星屑でもいい。

あの人の瞳に、僅かな光として届いたなら。少しでも、夜道を照らしてあげられるのなら、それでいい。



「…ありがとうございます。結」


「へ? 私、何かしたっけ?」



隣で可愛らしく首を傾げる結に、そっと微笑み。


私は、夜空を彩る星々を眺めるのでした。






coming soon…


Skuld一章完結への第一歩となる、第30話。如何だったでしょうか。


年内での一章完結へ向け、全力で執筆して参りますので、これからもご声援のほどよろしくお願い致します!


それではまた、31話でお会いしましょう!

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