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時刻神さまの仰せのままに  作者: Mono―
第一章:学園
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25話:二つの剣

姫乃と結をはじめとした大観衆が見守る中、歓声とともに姿を見せた”少年”の素顔とは…?


 天空そらを絶ち、生命いのち飛翔はばたかせる剣。


 “天絶あまつ翔命しょうめい流剣術”と名付けられたその剣戟は、痛みに強い野生動物、そして高度な治癒術を持つが故に、極めて生存能力の高い人間の双方に対し、絶大な効果を示す。

対人戦闘は勿論、対大多数を想定する異進種戦においても圧倒的な戦闘力を持ち、読んで時の如く”最強”の剣技と言えるであろう。


 その由縁たるや、流派の思想が”対象の殺傷”を目的としており、急所、弱点といった一部位に致命傷を与える攻撃を得意としているからである。

さらに言えば、使い手側が”殺傷”という目的に固執するため、一遍の価値観に囚われることがなく、ある技に対し策を講じても、次に出会う時にはさらに裏をかかれ返り討ちに遭うといった風に、手が読めない。つまり、要約するならば、天絶翔命流には、”型”が無い。加えて、代々の使い手も言わずと超絶技巧であり、並大抵の人間ではまるで歯が立たないのだ。


 …と。ここまでの話を聞く限り、天絶翔命流は完全無欠、と思われる方も多いだろう。いやはや、無論その通りである。流派の人間が、戦いにおいて死んだなんて話は古今聞いたことがない。


 …しかし。


 ただ唯一、”欠点”と呼べるものならば、あるのかも知れない。

 

 それは__




 同じ時を生きる人間の中で、その奥義”全て”を習得できる者が、”1人しか存在できない”__




 と、いうことであろうか…?

 





※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※






 1月。 冬らしく澄んだ空気があたりを包み、乾いた空気は呼吸器から取り込まれ、俺の脳を活性化させる___



「…訳無いだろ。クソが」



 誰にでもなく、日差しの強い空を見上げ吐き捨てる。狩り揃えられた芝生を踏みしめながら、窮屈極まりない首元のボタンを外し。同時に、辺りの喧噪を見渡す。



「…」



 ”演習” とは名ばかりの、こんな幼稚で、陳腐で滑稽な運動会おままごとのために、なぜ自分が時間を割かなくてはならないのか。

準備の段階から”楽しみでしょうがない”と言わんばかりに意気込むクラスメイトたちの姿を思い出し、そして、参加する生徒と観客の熱気と雑言が相まって、俺にとって最低最悪の環境を作り出しているこの場に対して、青空の下、一人ため息をつく。



「……」



 しかし、いくら不平不満を並べたところで、時間が止まるわけでも戻るわけでもない。過去を顧みる間も惜しいと、足早に時間は進んでゆく。

その流れに身を任せ、競技開始まで残りわずかとなったところで、一足先に競技場に出ていた俺の周りにクラスメイトたちが光に集まる蛾のように集まり始める。こちらの気も知れず、相変わらずやる気だけはあるようで__



「行くぞ、シロー!」


「お前が居れば、俺たちの勝利は間違いなしだ!」


「頑張ろうね、天城アマシロくん!」



 などと、独自の言語で話し始める。その鬱陶しさに耐え兼ね人だかりから抜け出すと、同じく群れを成す、相手クラスの人間たちが目に入る。



「……」



 …もう一度言うが、俺はこんなイベントに参加することに乗り気ではない。乗り気なわけがない。むしろ嫌で嫌で仕方がないし、第一、人前で剣技を晒せば、その分自分の手の内を知られることに繋がりかねない。挙句の果て、その労力が自分以外の名声を高める効果を持つのだから、吐き気がする。



「……」



 …しかし、つい先刻までそんなことを考えていた俺の頭は、今や、きれいさっぱりそんなこと忘れている。なぜなら、



「…其処に居たか」



 相手クラスの生物たちからなる群生地帯の、その中央。そこに目を凝らし、ある”人物”を探し出す。そして、その人物を捉えた瞬間、体中を言葉では言い表せないほどの衝迫と、高揚感が襲う。



「……」



 それに目を奪われ、自分が無意識のうちに刀の柄を握りしめていることに気付いたのは、その数秒後のことだ。

…今一度、深く呼吸をする。相変わらず吸い込む空気は湿気ているが、不思議なことに、先ほどまで抱いていた嫌悪感は消え去っている。

既に勝った気でいるらしい、騒がしいクラスメイトたちの声と、同じく不愉快な観客の声。さらには会場を駆け抜ける風の音までをも意識から削ぎ落とし、最後にもう一度だけ、あの人物を目に焼き付ける。すると、こちらの視線に気づいたのか、”彼女”は俺と目を合わせ、やんわりと微笑みかけてくる。



「…フッ」



 その笑みを受け、こちらも意図せず頬が緩む。

…この競技は集団戦__卓越した連携こそが物を言う。確かに前の試合を見ていても、その精神を深く掘り下げていた側が勝ちを拾う結果となった。…しかし。



『圧倒的な個の力の前に、知恵も言葉も不要___』



 頭の中を、一筋の言葉が走る。あの日の誓いと思いが詰め込まれた、圧倒的な質量を持つそれに応えるかのように全身の神経が研ぎ澄まされ、余計な思考が削ぎ落とされ、そして__



「…応えよ。我は、天絶アマツの名を語りし者」



 旗手の合図を待たずして、唱える。



「今__この身に抱きし報いを宿命カタチにせん」



 あの日の誓いを、”彼女”に届けるため。思いだけでも、強さだけでもなく、すべてを。



「鬼神の行く果てに__我が命を翔かせよ__」



 俺が呟いたその瞬間。行く先で、かすかに”彼女”の唇も動く。それを確かめた途端、より一層体は軽くなり、速く、速く、さらに速く。どこまでも加速してゆく。そして、視界の隅で旗が振られる一瞬を感じ、飛び出す。

肌で感じる速度と、体で感じる大気の震え。そのすべてを追い抜き、翔る。



「…天絶あまつ翔命しょうめい流剣術__」



 鞘から刀身を引き抜き、さらに加速する。そんな、自身に繰り出される迅速の一閃を前に”彼女”は、聡明たる、剣の名で応える。



鳴風なるかぜ創命そうめい流剣術__」



 “彼女”もまた、剣を愛し、剣に愛された者である。故に情や情けに囚われることなく、力を手に取り、剣を振るうのだ。


 方や、そらを絶ち、命を翔かせる剣。 


 方や、風を鳴らし、命を創る剣。




「___ 蒼空(蒼き空)!」


「___ ウグイス!」




 冬の、青く澄んだ空の下。少年、少女の叫びと共に、2つのけんが、交錯した。







 coming soon…



お読みいただき、ありがとうございましたm(_ _)m


続くお話も、是非お楽しみくださいませ。

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