表世で初めてのエレキラ
「フレイル、心の整理つけたいってまずどこに行くの?」
「とりあえずここ。」
「ここって・・・カフェよね?」
「うん、私もレイラもここの常連でさ。よく学校帰りに寄ってたの。」
それで・・・。
その時、店員さんが来た。
「お待たせしました。チーズケーキとレモンティー。あとこちらホットコーヒーでございます。」
このチーズケーキとレモンティーをいつも頼んでたんだ・・・。
「最後かもしれないから・・・食べておきたかったんだ。」
「そう・・・後悔ないように出来るのは素敵だわ。」
姫はそう言ってコーヒーを飲んだ。
「姫も・・・後悔したことってあるの?」
一瞬、姫の動きが止まった。
「あっゴメンっ変なこと聞いて。」
「後悔・・・ね、もちろんあるわよ。・・・後悔しない人なんていないわ。でも後悔しないように尽くせる人って少ないのよね。」
そう言って姫はもう一口飲んで・・・。
「チーズケーキ追加で一つお願いします。」
追加注文した。
「姫も食べるの?」
「せっかくだからね、常連になるくらい食べに来ているのだもの。 気になるじゃない。」
「うん、やっぱり美味しいよ。」
チーズケーキを食べる・・・。
けど・・・。
何だか物足りない感じがした。
「本当はレイラさんと来たかったんでしょ?」
そっか・・・。
だから物足りなかったのか。
「そうだね・・・でもレイラにとって私は・・・もう赤の他人だから。・・・姫が一緒に来てくれてよかった。一人で来てたら・・・私。」
「ごめんなさい、辛かったわよね。」
はっ!?
つい暗く・・・。
よしっ話題を変えよう。
「姫っ日本ってどんなところ?」
「え?」
「姫の反応見る限り、私って主に騙されてるみたいだし・・・。」
「う~ん、主の言っていることが数百年前の話ならあながち間違えちゃいないのよね。」
「大名行列と忍者っ!?」
「そうそう。」
実在してた・・・。
「ただ、それはさっき言ったように数百年も前の話だから。でも着物は現在にも残っているわよ。」
「本当っ!?」
「日常的に着ている人は表世には少ないけどね。」
その時に姫のチーズケーキが来た。
姫は一口食べると「美味しい。」と言葉を漏らした。
「それで表世って?」
「ここの世界のこと。本当はエレキラっていうのは裏世・・・。もう一つの世界から始まったものなのだけど・・・。」
それで姫から説明を受けること数分・・・。
電子音が鳴った。
「ちょっとごめんなさい。」
姫はそう言って携帯電話を取り出して通話をし始めた。
って携帯電話持ってるの!?
二、三会話をして姫は通話を切って・・・。
「ごめんなさいね・・・ってフレイル?」
「姫っそれ姫の携帯電話?」
「えっ?えぇ・・・。」
「い~な~。私まだ持ってないんだよね。」
「仕事で使うし、フレイルの分、頼んどきましょうか?」
「えっ!?携帯電話持てるの!?」
「記憶処理班は出張が多いから。」
「私海外旅行とか行ったことないよ。」
「誰も一人でなんて言ってないわよ。でも何かあった時にすぐに連絡を取れるのは便利だしね。」
そっか・・・海外出たりもするんだ・・・。
「さてとお茶もそろそろ終わりそうだけどこれからどうする?」
「学校に寄ってみたいなって・・・。あっでもその前に服屋。」
「明日の服?」
「ううん、姫の服。」
「私?」
「だって姫、その格好で学校は入れないでしょ? 私服着たら高校生くらいに見えるよ。」
「そりゃ実年齢が実年齢だし・・・。」
「え?」
「まあ、フレイルを一人にするのは危ないものね。分かったわ。」
その後、服屋に寄って・・・。
「ちょっと色派手すぎない?」
「そんなことないよ。」
そして学校へ・・・。
警備員さんの前を難なくクリア。
そして教室へ・・・。
教室には誰もいなかった。
そして・・・。
「やっぱり・・・なくなってるね。」
私の席がなくなってた。
「フレイル・・・。」
「ちょっと確かめたかっただけだから・・・。ゴメンね、付き合わせて。」
「日本で学校行ってもいいのよ?」
「知らず知らずのうちに記憶消しちゃうかもしれないから・・・それはいいよ。」
「そう・・・。」
「これで行きたかったところは全部かな。」
「え?これだけ?」
「本当は家やレイラのところも考えたけど行ってもどうにもならないしね。」
「じゃあホテルに行きましょうか。」
「ツイン取れたの?」
「えぇ、でも場所がイマイチ分からなくて・・・ルチアホテルって知っているかしら。」
知っているも何も・・・。
「この辺りじゃあるホテルはそれくらいだもんね。」
私は先導した。
「近いところ選んだつもりだけどどういうところなの?」
「私は行ったことないけど評判はいいみたいだよ。」
「なら良かったわ。」
「ねぇ、姫。」
「何?」
「私のこの魔法って制御できるの?」
「まあ魔法との相性もあるでしょうけど自分から発した魔力だもの。 制御はできるようになるわ。」
「今でも私は誰かの記憶を消してるのかな?」
「さっきのは発動の弾みだから。普通はエレキラが念じることでエレメントは発動するわ。」
「じゃあ・・・大丈夫なんだよね?」
「えぇ・・・今のところは。」
「今のところはって?」
「エレキラ・・・っていうか魔導師って慣れないうちに力を使いすぎると暴走っていうのが起きるの。 発動と同じくらいの被害を起こすね。」
「そう・・・なんだ。」
もしかしたら知らないうちに・・・。
またママ達みたいな人を増やすくらいなら・・・。
さっきの人達に殺されてたほうがよかったのかな・・・。
これ以上被害を出したくないなら・・・。
「だからって殺される必要なんてないのよ。」
「えっ!?」
姫の方を見るとため息をついてた。
「精神的な負荷をかけてくるのはあっちだし、結局ハンターはエレキラを殺してその力を自分のものにしているのだもの。そんなのに殺されるのもたまったものじゃないでしょ?」
「エレキラを殺したらその力を自分のものにできるの?」
「できるみたいだけどほとんどは相性が悪いのか力を十分に発揮できないか使えないかね。とりあえず、あなたが殺される必要はないの。」
「・・・姫はそういうのをたくさん見てきたの?」
「えぇ・・・仕事上ね。防げなかったことも多かった。」
「ハンターがエレキラを殺すのを?」
「エレキラ発動の被害を防ぐのもね。私達がエレキラを見つけ出す方法は・・・悔しいけどハンターを追うことでしか掴めないの。」
「ハンターの行き先にエレキラがいるの?」
「そう。」
「ハンターはどうやって調べてるんだろ?」
「分かったら苦労しないわ。」
「そうだよね・・・法則とか遺伝とかは?」
「見つかってないわ。ランダムで・・・あなたの家族や親戚にもエレキラはいるはずないわよね?」
「そりゃ聞いたことないけどえらく断定するね。」
「だって私が知る限り、表世で初めてのエレキラになったのがあなただもの。」
え?
「えぇ~っ!?」