私のこと・・・覚えてる?
「これからどうしよう・・・。」
結局あの後・・・。
あてもなくただ歩いてた。
だけどそれは人気のないところを選んで歩いてるみたいで・・・。
「見つけた・・・。」
「奴か・・・。」
その声で私は久しぶりに顔を上げた。
いたのは拳銃を私に向けて構えてる男が二人・・・。
そっか・・・。
また殺しに来たんだ・・・。
「もういいよ。好きにして。」
私は目を瞑った。
ママもレイラも私を覚えてない。
帰るところなんてない。
いても・・・仕方ないよ。
二つの銃声が聞こえる。
でも痛みはない・・・。
あれ?
「男二人で女の子をいじめるなんて良い趣味とは思えないけど?」
目を開けると・・・。
そこには綺麗な黒髪でスーツ着た女性・・・。
主の店で会った女の人だ。
その人は銃口を向けている
二人の男に
男達は手を押さえてて
拳銃は足元に転がってた。
「そいつは世界を滅ぼす・・・貴様っ加担するつもりかっ!」
「まあ・・・世界滅ぼされたらたまらないけどそれはこの子の責任じゃないわ。それにあなた達が急かしたのでしょう?」
「我らは被害を防ごうとしただけだ。」
「人を殺すのよ?」
「世界と人の命一つ。どちらが大切かは一目瞭然。」
「そう言いながらあなた達はどれだけのエレキラを殺してきたのかしら。」
エレキラ?
「・・・時間をとりすぎてる。」
「ちっ行くぞ・・・。」
「あぁ・・・。」
そう言って二人の男は消えた。
女性は構えてた拳銃を懐にしまった。
「怪我は?」
「あっいえ、特に・・・。」
「そう、よかったわ。」
その人は床に転がってた拳銃を白いハンカチに包んだ。
「一つ・・・聞いていい?」
「何?」
「私のこと・・・覚えてる?」
「主のお店で会った子よね?覚えているわよ。」
覚えて・・・くれてた。
私はその言葉に涙が出てきて・・・。
「えっ?ちょっと・・・大丈夫?」
「ママもレイラも私のこと覚えてないの・・・。
家にあった私のベッドも机もないの。
私が写ってるはずの写真には私がいないの・・・。
だから・・・覚えてくれる人がいて・・・よかった~。」
「誰も・・・覚えていない?」
「うん。」
その人はびっくりしたような顔をして・・・。
「ちょっと・・・付き合ってもらっていいかしら?」
まあ、帰るとこもないし・・・。
そして着いたのは・・・。
「姫、思ったよりも早く・・・。フレイル?」
主のお店だった。
「主、来て早々悪いけど、この銃のメーカーから入手先を特定できないかしら?」
そう言って姫と呼ばれたその人は主の前にさっきのハンカチから拳銃を取り出した。
「了解、ちょいとお待ちよ。」
そう言って主は中に入っていった。
「あの・・・あなたは。それに主も・・・。」
「そうね、あなたももう無関係じゃないし。私は巴・ミリアナ・弓矢。」
「どこの人?」
「フランスと裏世ってとこのハーフよ。今は日本に住んでいるわ。」
「日本っ!?」
本当にっ!?
「日本に住んでるなら何で袴じゃないの?何で刀と苦無ってので戦わないの?」
「・・・現代でもそうって教えられているなら確実に主に騙されているわね・・・あなた。」
「え?」
「まあいいわ・・・フレリアさんでよかったかしら?」
「フレイルでいいよ。」
「そう・・・フレイル。今から私が話すことを信じることができるかしら?」
「ママ達のこと・・・さっきの人達のこと・・・説明してくれるの?」
「お母さん達のことは私の予想だけどあの人達のことなら。」
「予想でもいい・・・話して。」
「分かったわ。私がこの街に来た理由はここに魔力の反応があったからなの。」
「魔力の反応?」
「魔導師の反応よ。それでここに来たわけ。その魔力の反応を出してたのがさっきのハンター。そしてそのハンターが狙ってたのが新たに魔道師になったあなたなのよ。フレイル。」
「えっ?じゃあ私魔法使いになっちゃったの!?」
「簡単に言えばそういうことね。」
「何の?」
「あなたの話を聞く限り・・・記憶かしら。」
「記憶?」
「おそらくあなたのその魔力は自然の力を操るエレキラに分類されるでしょうけど・・・うん、記憶ね。」
「けど何でいきなり・・・。家に帰るまでは何事も・・・。」
あ・・・。
「帰る前に会ったあの人・・・。」
「そう・・・その人と会った時にあなたはエレキラになったの。」
「けどそれが何で・・・ママ達から私が消えたの?」
「それは・・・仕方ないことなの。エレキラのほとんどの覚醒にはある程度の犠牲はやむを得ないから。」
「じゃあ私がそのエレキラになったから・・・ママ達の記憶が・・・。」
「そう考えるのが自然ね。」
「でもそれじゃ何で・・・あなたと主は私の記憶が消えてなかったの?」
「私も主も記憶に関する術を持っているからそれで免疫もあったんでしょう。」
「記憶に関する術?」
「えぇ、記憶操作って言って、記憶を隠蔽する力。私達、記憶処理班の仕事はエレキラの覚醒で出た被害を隠蔽することなの。」
記憶・・・。
「じゃあっママ達の記憶も戻せるのっ!?」
「ごめんなさい、私達ができることは隠蔽・・・消すことで思い出させることはできないの。」
「そっか・・・。」
「そこで提案なのだけど・・・私達の組織に来ない?」
「え?」
「そのほうがハンターに狙われる心配も少ないしあなたの力も役に立つと思うのよ。」
「けど・・・いきなりそんな・・・。」
「別に強制してないわ。私達の組織に入るってことは日本に来るってことだもの。 住み慣れた場所からは離れにくいわよね。」
「えっ!?日本に行けるのっ!?」
「え・・・まあ本部は日本だし。」
「じゃあ行くっ!袴とか着物来てる人とか大名行列や寝殿造りっていう建物見てみたいっ!」
「江戸時代と平安時代が混ざっているわよ・・・。っていうかもう大名行列はないし服は基本的に洋服よ。」
「え?」
「それに観光じゃないからね。」
分かってる・・・。
「うん。でもここには帰る場所も知ってる人もいないの。」
「フレイル・・・。」
「だからお願い・・・姫っ私を姫の組織に入れてっ!」
私は頭を下げた。
「・・・そうね、こちらからもお願いするわ。」
「よかったっ!ありがとうっ姫っ!」
「ふふっ今時私のことを姫なんて呼ぶの主くらいかと思ったけど・・・。」
「そういえば主も姫と同じなの?」
「えぇ、主にはこの辺りの外国でハンターがいないか調べてもらっていたの。それで昨日連絡が来て今日来たわけ。エレキラ被害隠蔽の他にもハンター撲滅も私達の仕事だから。」
「ふぅん・・・主もただの日本好きじゃなかったんだね。」
「姫、確定したぞ。」
その時、主が奥から出てきた。
そして姫に紙を渡した。
「ありがとう。ちょっと席外すわね。」
「あぁ。だが外は何があるか分からぬ。奥を使うがいいよ。」
「ありがとう。」
姫はそう言って部屋の奥に行った。
「・・・まさか、お主がエレキラとはな。」
「魔法使いって言われてびっくりしたよ。」
「だろうな・・・。」
主は簪売り場に行って私がお気に入りだった簪を手にとった。
「フレイル、そこに座れ。」
「え?こう?」
「少しの間動くなよ。」
髪が触られる感覚がして・・・。
数分後・・・。
「ほれ。」
主は合わせ鏡で私の頭の後ろを写してくれた。
「えへへ~。やっぱ可愛いねっこれ。」
「餞別じゃ・・・やる。」
「えっ!?」
「お主欲しがっておったじゃろう。」
「だってこれっすごい高いじゃんっ私の月お小遣い半年くらいはするよっ!」
「最後にお主の月小遣いの値段教えられてもの・・・。いらぬならやらぬ。」
「い・・・いるいるっ欲しいっ!でも主も一緒に行くんでしょ?」
「行かぬよ、姫から聞いたのだろう? 妾はこの辺りのハンターを探すのだと。」
「だってそれはさっき見つけたでしょ?」
「お主みたいなエレキラが表世にも現れたのじゃ。またこの辺りに現れぬとは限らん。」
「じゃあ私も残るっ!」
「ここにもうお主の居場所はないよ。」
「っ!?」
「心配せずとも今からお主が行く記憶処理班は皆良い者達じゃ。 姫を見て分かったろう。」
「・・・・・・。」
「お主はそのエレメントを制御出来るよう尽くせ。そして記憶処理班を支えてくれ。 妾も暇があれば時々そちらに行こうぞ。」
「主・・・。」
「いきなりで辛いと思うが・・・頑張れよ。」
「うん・・・うん。ありがとう。」
「主、ありがとう。」
その時、姫が奥から出てきた。
「あぁ、どうなった?」
「あとはラギとホガに任せたわ。二人なら問題ないでしょ。」
「そうじゃな。」
「あら、可愛いじゃないの。」
姫は私を見てそう言った。
「似合ってる?」
「えぇ、とても。」
何か照れちゃうな~。
「そういえば姫はここまでどうやって来たのじゃ?」
「飛行機。」
・・・魔法使いが飛行機。
「フレイルをどうやって出国させる?パスポートはないしこの状態なら戸籍も抹消されとろう。」
「パスポートくらい偽造できるわよ。」
そう言って姫は胸ポケットからパスポートケースを出した。
・・・ここの国旗が描かれてる。
「何か間違えている情報あったら言って。書き換えるから。」
私は姫にパスポートを渡された。
「姫・・・それ表世・・・この世界では犯罪じゃぞ。」
「緊急事態だもの。あっ日本に行ったらちゃんとしたパスポート作ってあげるから。」
「えっと・・・犯罪者ならちょっと遠慮しとこうかな・・・。」
「まあまあ大丈夫よ。こういう手しかなくてしょうがなかったの。 組織って言ってもヤクザとかマフィアそっち系じゃないから。」
「・・・・・・。」
「そういうわけだからまあ出発は明日になっちゃうんだけど・・・。どうする?ホテル予約とっているのだけど一緒に来る? 旅行ピーク時じゃないなら部屋もツインに変更できるでしょ。」
「うん、寝れる場所提供してくれるだけでもありがたいよ。ただ・・・ちょっと心の整理つけたいから・・・一人じゃダメだよね。 姫、付き合ってくれる?」
「もちろんよ。」
私と姫は主にお礼を言って店から出た。