〜Ⅲ〜
「ただいまー」
返事がない。
随分遅くなってしまった。
日が落ちる前には家に着く予定だったのに。
きっと母さんはもう寝ているな。そういえば晩ご飯は僕の大好きな豆のスープを作ってくれると言っていたな。
もう豆のスープは冷えているかな…。
あれ?暖炉の火がついている。
今にも消えそうな小さな小さな炎。
その前で母さんが眠っていた。
灯は暖炉の火しかないのでよく見えないがこちらに背を向けているようだ。
「もー、母さん。こんなところで寝たら体調悪くなるよー?ただでさえ今はあんまり良くないんだから。」
母さんの顔を覗き込む。
紅い。紅い。炎のような紅が広がっている。
その瞬間わずかについていた炎が消えた。
今のはきっと見間違いだ。
炎の色が写っていたのだ。きっとそうだ。
母さんの頬に触れてみる。
ー冷たい。
なんで?暖炉の前で寝てたなら暖かいはずだ。
そんなはずはない。
部屋の灯をともしてみる。
紅かった。母さんは紅く染まっていた。
「ねぇ、母さん?母さんってば!起きてよ…僕ちゃんとお使いできたよ?ねぇ、夜ごはんは豆のスープなんでしょ?あっためて一緒に食べようよ!母さんすごく冷えてるからあったかいスープを飲んだ方がいいよ。母さん。起きて…」
冷たくなった母さん。辺りに広がる血。分かってる。でも信じたくない。
母さんまで失ったら僕はどうすればいいの?
母さん。母さん。母さん…。
涙がぽろぽろ溢れてくる。
違うよ。
母さんは少し身体が悪かったけど治るって言ってたもん。
違うよ。
だつて母さんは薬を作れるんだよ?
どんな病でも治せるんだよ?
母さんが…母さんが…。
そんなはずないよー…。
涙はあとからあとから溢れ出て、紅い血の横に涙の水溜りを作っていた。
Lonely bear 〜Ⅲ〜 to be continued