〜Ⅱ〜
「すみません。リック・ブロードです。母の代わりに薬を届けにきました。」
「よし。入れ。」
王宮の門をくぐると目の前には広い庭が広がっている。
庭のむこうの宮殿の二階。南廊下の突き当たりの部屋が王子の部屋だ。
階段をのぼって王子の部屋の前に立つ。
『コンコン』
ドアを数回ノックする。
「リック・ブロードです。薬を届けに参りました。」
「リックか…どうぞ。」
「失礼します。」
このドアを開けるのはいつぶりだろう?
王子に会うのはいつぶりだろう?
僕が…ブロード家が裏切り者と言われる前はずっと一緒だったのに…
ドアを開け部屋を見渡す。
最後に来た時とあまり変わってないようだ。
中央にある大きなベッドに王子は寝ていた。
「王子様。お久しぶりでございます。本日は母の代わりに薬を届けに参りました。お身体の具合はいかがでしょうか?」
床に片膝をつき、王子を見上げる。
「リック…久しいな。元気だったか?それと堅くならなくていいのに…僕と君との仲じゃないか!
身体は…まぁ、見ての通りだよ。」
「流石に王子と裏切り者のブロード家が対等に話すのは少々…。」
裏切り者のブロード家。少し自嘲気味に言ってみる。
「リック!そんな周りの言う事なんて気にしなくて良いんだよ!なんたって君は元ー」
「そんなんじゃないんだよっ!」
つい声を荒げてしまった。
王子はバツの悪そうな顔をし、下を向いた。
無言で薬をベッドの側にある机に置く。
「それでは、お大事に。」
王子は最後まで下を向いたままだった。
王子の部屋を出て玄関まできた時ー
「おや?君は元もしかして裏切り者のブロード家のリック君じゃないかね?」
背後から声が聞こえた。
何度も聞いた声だから知っている。それと同時に聞きたくない過去の声が聞こえてくる。
『ユーセフ・ブロードは国の掟を破った。処刑だ。』1番会いたくなかった人に最後に会ってしまうなんて。
「ご無沙汰しています。国王陛下。本日は母の代わりに薬を届けてきました。」
「そーかそーか。ラックとは何か話したか?ん?
そーいえばお前が使いに来たということは相当やばいのか?フィーナのやつ。どーせ治らないのだろ?
ユーセフじゃなくて我を選んでおればこんな事にはならなかったのにのう。」
父さんと母さんの事悪く言うな…。
「それでは、国王陛下。失礼します。」
踵を返し玄関をでる。
空を見上げると陽が傾いてぽつりぽつりと星が見えていた…
Lonely bear 〜Ⅱ〜 to be continued