〜Ⅰ〜
むかしむかし ちいさなくにがありました
そのむらには けしてやぶってはいけない おきてがありましたー…
「リックー、ちょっとおつかいに行ってきてもらえないかしら?王子様に薬を届けて欲しいの。お願いできる?」
「もちろんだよ!母さんはゆっくり休んでて。」
「ごめんねリック。今日のごはんはリックの大好きな豆のスープにするからね…。夜は暗くなるから気をつけてね」
「大丈夫だよ!いってきます!」
僕は母さんと2人で暮らしている。国のはずれにある小さな小屋。それなりの暮らしだが母さんと一緒だから毎日が楽しい。母さんは薬屋をやっていてどんな病気でも治せる。これから薬を届ける王子は僕と同い年だが小さい頃から身体が弱く月に一度母さんの薬を飲まないと危ないらしい。
川とお花畑を抜けると市場にでる。
僕はこの場所が嫌いだ。なんでかって?それはー
「おい、見ろよ。裏切り者の子供だよ。王子様もよくあんな奴らの薬を飲もうと思うよなー。」
「だよなー。つか、あいつの母親病気なんだって?薬屋なのに病気とか。自分の病気も治せない奴が作る薬なんて効くのかよ。」
「やだ、裏切り者の子供よ!怖いわ〜。」
「こっち見たわよ!きゃ、目が合っちゃったわ‼︎」
『裏切り者の子供よ』
『掟破りの…』
『怖いわー』
みんなが口々に僕を見て言う。
大丈夫。大丈夫。もうとっくに慣れたから。
早足で市場を抜ける。
人々の嫌味な言葉と好奇な目が僕を追ってくる。
振り払え。逃げろ。逃げろ。
王宮はもうすぐそこだ…
Lonely bear 〜Ⅰ〜 to be continued