第5章-18 胸糞悪い有名税
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これからもよろしくお願いします。
ご指摘がありまして確かめたところ、テンマが自分を生んだ親がいると疑問に思うのはおかしいと思い、以下の様に変更しました。
変更前)
この時になって初めて気になったのだが、この世界に俺を生んだ両親はいるのだろうか?
いたところで、赤ん坊の俺をあんな所に放置した奴らを親だと思う事など絶対に無いが、いずれあんな所に赤ん坊の俺が放置された事を神達にでも聞いてみたいと思った。
変更後)
この時になって初めて気になったのだが、この世界に俺と同じ血が流れている人間はいるのだろうか?
いたところでどうと言う事も無いけど、少し気になってしまった。
それに今更だが、神達がなぜ俺をあんなところに置いたのかが気になる。いずれあんな所に、赤ん坊の俺を放置した事を神達にでも聞いてみたいと思った。
に書き換えました。
「準決勝第二試合、『オラシオン』対『ブルーホーネット』!試合開始!」
審判が合図とともに後ろに下がったのを見てから、俺達は互いに動き始めた。
相手チームは前回の優勝チームであり、万全ではなかったとは言え、暁の剣相手を手玉に取る程の強さを持っている。
相手のチーム構成は、剣士一人、戦士二人、魔法使い二人で、前列に戦士二人が並び、戦士の後ろに隠れるように魔法使いがいる。そして、剣士は魔法使い達の後ろの位置にいた。
剣士が後ろに控えるといった珍しい陣形だが、おそらくは俺達の速度を警戒し、魔法使いの後ろに回り込まれた時の対策なのだろう。
相手は全員決して若いとは言えないが、その代わり『経験豊富な歴戦の猛者』と言った雰囲気を醸し出している。
間違いなく、俺が今大会で戦った中で最強のチームだろう。下手をすると、シロウマルとソロモンは大怪我を負うかもしれない。スラリンに関しては……皇帝様になれば大丈夫だと思う。
「テンマ、相手さん方思った以上にやりそうやで……どないする?正面突破で強引に行っても、ほぼ勝てるやろうけど……被害も相応に大きくなるで」
ナミタロウも雰囲気から手強い相手だと感じたようだ。
「そうだな……ちょっとした小細工でもしてみるか。シロウマル、ソロモン!」
俺はいつ飛び出そうかと構えていた二匹を呼んで、思いついた小細工に参加させる事にした。
「ファイヤーウォール!」
相手側の魔法使いが先手を打って魔法を使ってきたので、防御と俺達の姿を隠す為にファイヤーウォールを展開する。相手の魔法はファイヤーボールにエアカッターで、両方とも威力よりも速度を重視していた為に俺の魔法を貫通する事は出来なかった。
「ウォーターボール!」
続いて俺は、自分の周りに十発の大き目に作った水球を作り出した。
観客達は、大会で使われる事が珍しい水魔法を見て、歓声を上げている。しかし、相手側からは水球が炎に隠れて見えていないみたいで、突然上がった歓声に警戒を強めたようだ。二人の魔法使いが魔力を高めて、いつでも魔法を放つ準備をしている気配を感じる。
「行け!」
俺は水球を自分で作り出したファイヤーウォールに向けて放った。
水球は炎が立ち上っている場所に着弾し、炎を消すと同時に大量の水蒸気を広範囲に作り出した。
「シロウマル!ソロモン!遊んで来い!」
俺はシロウマルとソロモンに同時に指示を出した。二匹は俺の指示を聞いた瞬間に左右に分かれて飛び出し、相手チームを回り込む様にして向かって行った。
相手側の戦士は、突然飛び出したシロウマルとソロモンを見ても動揺する事無く、魔法使いを守るように
構えた。
魔法使いも飛び出したシロウマル達に無闇に魔法を放つ事などはせずに、俺の居る方角を警戒し続けている。
シロウマルは遠回りをしながら、時折ジグザグに走り、ちらちらと相手を見ており、ソロモンは1~2m程の高さを飛行しながら、こちらも遠回りで回転したり旋回したりしながら相手を見ていた。
そして、二匹が戦士達の真横に来た瞬間、急加速してそのまま通り過ぎた。
予想外の出来事に、一瞬相手チームが動きを止めたが、すぐに異変に気付いた様で迎撃態勢に移った。
相手が迎撃態勢に入った瞬間、水蒸気をかき消すような速度で向かっていく弾丸があった。
「やはり来たぞ!迎え撃て!テイマーを倒せば終わりだ!」
後ろに陣取っていた剣士が他の仲間に指示を出し、自身はタイミングを合わせて攻撃して来るであろうシロウマル達の方を向いた。
そして、警戒する戦士達の前に姿を現したのは……
「テンマやと思った?残念っ!ナミちゃんやで~~~」
高速で滑るナミタロウだった。
「「「「えっ!」」」」
「気を抜くなっ!どこからか来るぞっ!」
ナミタロウの登場に、一瞬動きの止まった仲間達を剣士が叱りつけた。ナミタロウはそんな戦士達の間をすり抜けて、そのまま剣士に向かって行く。
剣士は高速で突っ込んで来るナミタロウを躱したが、そのはずみでシロウマル達から視線を外してしまう。
「しまった!狼と龍に気を付けろ!」
その言葉に他の四人が反射的にシロウマル達を見たが、シロウマルとソロモンは無軌道に移動しながら追いかけっこを始めていた。
「ぐあっ!」
「げほっ!」
剣士が仲間のうめき声を聞いて振り向いた時には、片側にいた戦士と魔法使いの二人が倒れていた。犯人は俺だ。
「どこに居やがったっ!」
剣士が仲間を倒した俺に吠えた。そんな事を聞く前に、体勢を整えるなりすればいいと思うが、突然の事に混乱しているのかもしれない。
なのでその問いに俺は……
「上」
空に向かって指をさした。
実は俺の言った小細工とは、シロウマルとソロモンの行動で警戒させ注意を向けさせた上に、本命に見せかけたナミタロウで更にフェイントをかけて、水蒸気に隠れて上空へ飛んだ俺の攻撃で戦力を削ぐというものだった。
しかも、この小細工にはまだ続きがあった。
「ファイヤーボ、ごぼっ!」
「どうし、ごぼっ!」
俺に攻撃を仕掛けようとしていた二人が、こっそりと背後に現れた大きな水の塊に引き込まれ苦しそうに息を吐き出した。
「おいっ!どうし……くそっ!スライムか!」
ここに来て剣士は姿を隠していたスラリンを思い出したようだ。
二人を引きずり込んだのは、皇帝様となったスラリンだ。
スラリンは元々俺達のフォローの為に控えている予定だったのだが、チャンスとみたスラリンは自分の判断で攻撃に回ったのだろう。そして、きっちりと結果を出した事で、この試合の勝敗は決まったようなものだ。ちなみに、スラリンは移動する時、ちゃっかりとナミタロウの背に乗っていたのを確認している。
「まだ終わっちゃいねぇ!」
剣士が両手に剣を構え、俺に向かって走って来る。先ほどまで警戒していたシロウマル達を完全に無視して、乾坤一擲の勝負を仕掛けるつもりのようだ。
そんな剣士に対して、背後からシロウマルとナミタロウが襲い掛かろうとしているが、俺は刀を鞘から抜いて構えた。
「シロウマル、ナミタロウ!手を出すな!」
俺の言葉を聞いて、シロウマルとナミタロウは攻撃を中止した。
「その余裕が命取りだ!」
剣士は両方の剣で切り付けて来る。技量としては、ケイオスより少し劣るくらいみたいだ。
他のメンバーもこれに近い実力を持っていたとしたならば、確かに優勝チームにふさわしい実力だ。
しかも、全員が個人戦に出ずに完璧な状態でチーム戦に出るのならば尚更だろう。
だが、この剣士は個人の力で戦うよりも、仲間と連携して戦う方になれているタイプのようだ。しかも、外野の邪魔が入る前に俺を倒そうとか考えているみたいで、焦っているのか攻撃がやや雑で大振りが目立つ。
そのせいか、個人戦で強豪と戦った俺としては、いささか物足りなく感じてしまう。
「どうした。命取りじゃなかったのか?」
相手の攻撃を全ていなしながら、わざと余裕な態度で挑発してみる。
「フゥ~……フッ!」
挑発された事で、逆に冷静さが戻って来たようで、気合を入れ直した剣士は先程までと比べると、動きの鋭さが増していた。
剣士は途中で二刀流を止め、大振りな攻撃から小さく鋭い攻撃に切り替わり、なかなか手強くなってきた。
だが、それでも負けると感じる事は無かった。相手が冷静になった分だけ気は抜けなくなったが、ようやくケイオスと同格になったくらいだ。
俺は徐々に攻撃の速度を上げていき、相手が俺の動きに付いて来れなくなった所で剣を弾き飛ばした。
「参った。降参だ」
刀で剣を弾き、返す刀で切っ先を喉元へと突きつけると、剣士は両手を上げて降参した。
「それまで!勝者、『オラシオン』!」
思った以上に小細工が効果を発揮し、俺達は怪我をする事無く勝利する事が出来た。
これも、相手が俺の小細工に対して深読みしてくれたからだろう。もし対戦相手が一回戦の竜撃隊の様にガンガン前に出て来るタイプだったり、ジン達の様に俺(の性格)をある程度知っているチームならば、ここまでの効果は無かっただろう。
……要するに脳筋寄りのチームには効果が薄く、考えながら戦うチームには高い効果が得られやすいと言う事だ。
ともかく、これで今日の試合が全て終わり、残るは三日後の決勝戦のみである。
俺は観客の声に軽く手を振って答えながら、頭の中で休息日の予定を考えていた。
決勝までの二日間の休息で疲れを癒してから、武器の手入れに武器の調達、屋台や露店への冷やかしなどやりたい事ややらなければならない事があり、二日しか暇が無いのが悔しいくらいだ。
特に屋台や露店などでは、一日で商品の入れ替えや売り切れなどが頻繁に起こるそうなので、掘り出し物はすぐに売れてしまう事が多々あるそうだ。
それはそうと余談ではあるが、俺はこの大会でいくつかの新記録を作ったらしい。
まず、最年少での個人戦決勝進出(チーム戦は二例目)、個人・チーム戦同時の決勝進出、個人本選最短時間勝利(オッゴ戦)。そして、極め付けが親子三代(正確には、親子二代に大叔父)での決勝進出である。
前に父さんと母さんが王様達と挑んだチーム戦で優勝したというのは聞いたが、何とじいちゃんも個人戦での優勝経験があるそうだ。父さん達は一度だけだが、じいちゃんは二連覇したらしい。その後、試合に出るのに飽きたそうで連続優勝記録が途切れたそうだ。
親子と言っても、俺は養子なのでその辺はどうなのかと思ったが、俺が赤ん坊の時から育てられているのと、この世界では養子などよくある話なのだそうで(特に貴族)、特におかしくは無いそうだ……特には……
「じいちゃん……親戚がいきなり増えたね……」
「そうじゃのう……消すか?」
じいちゃんが、かなり物騒な事を言っているが、危うく俺も同意しかけた。
休息日の一日目、屋敷の前には数十人の人だかりができていた。これがただのやじ馬ならば、俺達はこんなささくれた感情になる事は無かっただろう。
こうなったのも、すべてはあそこにいる連中のせいだ。
あそこには様々な人間がいる。薄汚れた乞食風の男にケバい化粧の娼婦の様な女。高そうな服に身を包んだ豚商人に腕の悪そうな傭兵。中には落ちぶれていそうな貴族に頭の悪そうな貴族まで混じっていた。
こいつらは全て、『俺の親、もしくは親族』を語る詐欺師達だ。
騒ぎは昨日準決勝を終えて、帰宅しようと会場から出た時から始まった。
準決勝の後、係員から決勝の説明を受け、観客が帰った時間よりも遅れて会場から出たのに、俺の本当の両親を名乗る男女に声を掛けられた。
奴らは俺の情報をどこからか仕入れ、うまい汁を吸おうと近づいて来たのだが、その時は詐欺師として会場の近くにいた警備兵に突き出したので、話はそこで終わったと思ったのだが、今朝になって屋敷の門の前に不審な気配を感じて起きてみると、多くの自称両親・親族が集まっていた。
昨日屋敷に帰ってからじいちゃん達には詐欺師が出た事を説明しておいたのだが、昨日の今日でいきなり集まって来るとは思っていなかった上に、口々に俺の親だの、親族だのとほざき、俺を迎え入れたいと叫んでいるのでいい加減限界が近くなってきていたのだ。
現在は門番ゴーレムや警備ゴーレム達が、門の内側で並んで立っているので侵入する馬鹿は出ていないが、俺としては侵入しようとしてくれた方が犯罪者として堂々と排除できるので、一人くらい勇者が現れてくれないかなとか思っていた。
とにかく、今の俺やじいちゃんが奴らの近くに行くと、何かのはずみでうっかり殲滅しかねないので、スラリンとシロウマルに頼んで王城に手紙を届けに行ってもらった。
近くの警備隊の詰め所でも良かったのだが、ここはこの国一の権力者に助けてもらうのが一番早く、確実に対応してくれると思ったのだ。
スラリンとシロウマルなら王城でも有名なので、王族の誰かに話が行くだろうし、最悪の場合、スラリンなら警備兵に気付かれずに忍び込んで、王様達に手紙を渡すくらいは可能だろうと考えたのだ。
手紙を持って行ってもらったのが一時間半くらい前なので順調に行けば、あと一時間もくらいで助けが来ると思う。
だが、俺の予想以上にスラリン達はがんばり、王様達も速攻で動いてくれたようだ。
速くてもあと一時間はかかると思っていたが、それから三十分もしない内にスラリン達が戻って来た。
「お疲れさま。手紙は……無事に渡せた様だな」
スラリンとシロウマルにねぎらいの言葉をかけていると、外にいる詐欺師達を取り囲む様にして動いている気配を多数感じた。
「一人として逃がすな!生きてさえいれば、怪我を負わせても構わん!」
大声で指揮しているのは、なんとディンさんだった。他にもエドガーさんやクリスさんもいる。さらに、ディンさんの指揮下に入っているのは近衛兵だけで無く、騎士団員なども混じっている様だ。
彼らは街中だというのに馬に騎乗しており、助けに来たというよりは殲滅しに来たといった感じに見える。
そんなこの国の精鋭軍とも言える二百近い騎士達により、門前にいた詐欺師達は早々に一人残らず捕縛された。
全ての詐欺師達に縄がかけられ、口に猿轡がされたところで、ディンさんが門の前に立ち門番のゴーレムと向かい合っている。
ディンさんは王様の関係でこの屋敷の関係者と認識されており、ゴーレムは門を開けてディンさんだけを通した(ディンさんは王様がサボって遊びに来た時の為に、門を通過出来る様にとゴーレムに設定がされている)。
ディンさんがこちらに歩いて来ているのを見て、俺とじいちゃんは急いで出迎えに行った。
「お騒がせして申し訳ありません、マーリン様。それと不愉快でしょうが、確認の為門までご同行願います」
硬い口調のディンさんの後に続いて門の前まで行くと、俺達は捕縛された詐欺師達の顔を確認させられた。
「この中に知り合いはおられますか?」
そう言われたので、俺とじいちゃんは揃って首を横に振る。
「分かりました。おいっ!こいつらを詰所の牢屋に連れていけ!」
「はっ!」
ディンさんは近くにいた騎士に命令し、この場に十数人の騎士を残して詐欺師達を連行させた。残った騎士達には屋敷の周りを巡回させるようだ。
この時、俺達を遠巻きに見ているやじ馬が増えており、興味深そうに皆聞き耳を立てていた。
「実は最近、ある犯罪者集団が出没しているとの情報がありまして、特別警戒中だったのですが、今朝早くに異様な集団がある屋敷に押しかけて騒いでいるとの情報が住民より届けられまして、陛下の命で取り押さえに来たのですが……まさか、マーリン様のお屋敷とは思いもしませんでした」
などと、ここに来たのは第三者の情報であり、王様直々の命令だと周りに聞こえるくらいの声で説明をするディンさん。
無論これは建前であり、俺の頼みを聞いて派遣されたのは明白ではあるが、大会中に王族が参加者と連絡を取ったのを問題視する者も少なからずいる為、このような形式を取っているのだろう。
「本当に助かりました。決勝を控えていると言う事もあり、門の前で騒いでいるというだけで無闇に排除する訳にもいかずに困っていた所でした」
俺もディンさんに大げさに礼を述べた。
「それとマリア様から言付けがある」
ディンさんは小さな声で俺とじいちゃんにだけ聞こえる様に、マリア様の言葉を話し始めた。
「『もし、次にそんな馬鹿達が出てきたら、捕縛してもいいわよ。後は私が責任をもって始末するから』だそうだ……かなり頭に来ているみたいだったから、大会が終わったら顔を見せに行ってほしい」
ディンさんの顔がかなり真剣だったので、マリア様の怒りはかなりの物なのだろう。俺は、マリア様の所へは必ず顔を見せに行く、と約束した。
「ああ頼む……では私達は引き上げますが、大会が終わるまではこの辺りを警備兵達に定期的に巡回させます。しかし、護衛を付ける事などは出来ませんので、外出の際はくれぐれもお気を付けください……あっ、それと、もし襲われた場合はなるべく犯人を殺さない様にお願いします。今回の出来事は陛下や軍務卿や他の関係者にも報告させていただきますので、大概の場合は正当防衛が適用される可能性が高いと思いますが、それとは別に後処理と調査が大変になりますので……」
そう言ってディンさんは周りのやじ馬達に釘を刺してから、残っていた騎士達と共に戻って行った。
「もう歳じゃから、手加減できるか怪しいのう……困ったもんじゃわい!」
じいちゃんは大きな声で、手加減などするつもりはない、という意味を込めた言葉を発し、ローブの下のバッグから大きな杖を取り出して石畳を突いた。
杖で突かれた石畳は大きな音を立てて砕け散り、その音を聞いていた数人が青い顔をして、やじ馬の中から慌てた様子で離れていく。
「まだ居たみたいだね、じいちゃん……」
「あんなのは、ゴキブリみたいな生き物じゃからな……一匹見かければ三十匹はいると思え、じゃ」
このまま高性能な虫よけが効いてくれればいいが……本物の馬鹿にはどんな薬も効き目が無いかもしれない。
とにかく、次からは実力行使をしていいと言う事なので遠慮なくやろう。
「何か二人とも、めっちゃ悪い顔しとるで……」
俺とじいちゃんは、自分でも気付かない内にすごく悪い顔になっていたらしく、珍しくナミタロウがドン引きしていた。
その後、何とか表情を元に戻していると、騒ぎを聞きつけたマークおじさんとマーサおばさんが様子を見に来たので、じいちゃんが事の次第を話し始めた。
話を聞き終わった二人も詐欺師の出現が頭に来た様で、かなり腹を立てていた。
どうも、おじさん達には俺が父さんと母さんの子供であると同時に、ククリ村の子供と言う感覚が強いらしく、本当の親族であろうが詐欺師であろうが、今更出て来て都合のいい事を言うのが許せないみたいだ。
二人は他のククリ村出身の人達にもこの事を知らせて、詐欺師達に目を光らせて注意しておくと言って走って行った。
今日の騒ぎはすぐにでも王都中に広がると思うので、詐欺師達は現れる事は無くなるといいが、完全には無理だろう。
この時になって初めて気になったのだが、この世界に俺と同じ様な血が流れている人間はいるのだろうか?いたところでどうと言う事も無いけど、少し気になってしまった。
それに今更だが、神達もなぜ俺をあんなところに置いたのかが気になる。いずれあんな所に、赤ん坊の俺を放置した事を神達にでも聞いてみたいと思った。
「それじゃあ詐欺師達も消えた事だし、俺は武器屋に行ってくるよ。一応外に出ない様には言っておいたけど、念の為ジャンヌ達にはこのゴーレムの核を渡しておいて。起動の仕方は前に教えたから出来る筈だし」
俺はバッグからゴーレムの核を何個か取り出し、じいちゃんに渡した。
このゴーレムの核達は戦闘用に調整した物なので、一個だけでも複数の一流騎士を相手にしたとしても、ジャンヌ達が逃げる時間を稼ぐ事が出来るくらいの強さを持っている。
「一緒には連れて行かんのか?」
「変なのに絡まれた場合、二人を連れた状態で逃げながら用事を済ませる事が出来るとは思えないから……周りを全く気にしなくてもいいのなら、対処は可能だけどね」
俺の言葉を聞いてじいちゃんは納得した様で、屋敷に戻って行った。
シロウマルとソロモンは一緒に行きたそうにしていたが、二匹が一緒だと別の騒ぎが起きそうなので、お土産をたくさん買ってくるから留守番だと言うと、素直にお座りをしてよだれを垂らしていた。
スラリンとナミタロウは最初からついてくる気は無いみたいだが、お土産は期待している様だ。
そして、玄関のドアに隠れるようにして、ジャンヌとアウラもこちらを覗いている。
「土産は皆に買ってきてやるから、外出は我慢しろよ!」
ジャンヌとアウラに向かって声を掛けると、連れて行ってもらえない事にがっかりしたのか、多少肩を落としながらも、二人とも手を振って答えていた。
そのまま門をくぐって外へ出ると、まだ残っていたやじ馬が俺が出て来たのを見て、そそくさとその場から離れて行った。
俺はそんなやじ馬達を無視して目的地へと歩き出したのだが、五分もしない内に前方から走って来る人が見えた。
俺はその人とぶつからない様に進路をずらしながら歩いたのだが、どうやら前方の人物の目的は俺のようで、ずれた俺の方へと進路を修正しながら迫って来た。
感想に、血のつながりとあったので補足します。
テンマが言う同じ血とは、神達がテンマの体を創った時に、他の転生者と同じよう材料で創ったのだったら、自分と似た血(同じ血)を持つ者が存在する(していた)のではないか、と言った感じの物です。
なので、深く考えた末のセリフでは無く、本当に気になっただけなので、同じ血が流れている人物がいたとしても、テンマの中では赤の他人となります。
詳しくは、次に神達に会う(会わせる)機会があった時に書くつもりです。