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第5章-9 ブランカの本性

 俺は殺気から逃げるように右方向へと跳んで躱そうとしたが、殺気は俺の反応よりも早く左手に食らいついた。


「ぐ、がっ!」


 グシャっという音と共に、俺の左肘の辺りに激痛が走った。どうやら左肘か、その上辺りの骨を砕かれたみたいだ。

 その場より半ば弾き飛ばされながら距離を取り状況を確かめると、俺が先程までいた場所に右手を振り下ろした体勢のブランカがいた。

 ブランカは槍を持っておらず、槍は俺がいた位置の左後ろ3mの辺りに柄が曲がった状態で床に刺さっていた。


「俺の愛槍を犠牲にしたというのに、左腕一本しか取れなかったか……」


 そう呟いたブランカの姿がぶれたと思ったら、今度は目の前まで迫って来ていた。

 俺は腕の激痛に耐えながらなんとか回避をすると、ブランカは俺の横を5m程通り過ぎて止まっていた。

 ブランカの足元をよく見てみると、闘技台に軽くえぐられたような跡が二本出来ており、その跡はブランカの足へとつながっていた。


「強化魔法による高速移動か……」

 

 俺の呟きにブランカは感心したように笑っている。


「ほぅ、気がついたようだな。確かに強化魔法は使っている。しかし、これまでこれを使った相手は誰一人として気がつかずに死んでいったんだがな!」


 そう言って、再び強化魔法を発動させて間を詰めてくるブランカ。

 その勢いを今の状態で止めるのは不可能だと感じたので、反撃の機会が訪れるまで俺は避ける事に集中した。


 何度か避けている内に、目が慣れてきたのだろうか。先程までは見ることの出来なかったブランカの姿を、徐々にだが目で追えるようになってきた。

 姿を見ることができるようになって分かったのだが、このブランカの技は実は単純なものであった。

 

 簡単に説明すると、強化魔法を使って身体能力を一時的に上昇させて、高速で突っ込んでくるというものである。

 ただし、技を出す直前に僅かにフェイントを入れて、相手の意識が一瞬でもそれた隙に身をかがめて突っ込んできているのだ。

 わずかでも意識がそれた瞬間に身をかがませて突っ込むことで、一瞬で自分を対戦相手の意識の範囲外に移動させることで消えたように見せているのだろう。

 この技は俺のように多数の手札を持っている相手には効果が高いようだ。

 何通りかの攻撃方法がある奴は、相手(ブランカ)の動きに合わせて攻撃方法を変えようと、無意識の内に細かな動きまで目で追っているので意識が外される機会が多い。しかも、そこまで精度の高いものではないが、ブランカは認識阻害の効果のある魔法を併用しているようで、その影響もあるのかもしれない。


 なんにしろ、種がわかれば対処はそう難しくはない。それに弱点も見えてきた。

 ブランカのこの技は、速度と威力は極端に高いが直線的にしか動けないようで、最初に食らった時は自分の槍を使って無理矢理に方向転換をしただけのようだ。

 その代償として、愛用の槍はこの試合でもう使用不可能になってしまっていた。ブランカとしてはその一撃で決めたかったのだろう。その証拠に、現在繰り出している直線的な技を俺に躱され続けて、少し焦りが出てきているみたいだ。


 しかしながら、俺の怪我も軽くはないので、余裕があるわけでもない。できるならば早めにケリをつけたいところなので、そろそろ勝負を仕掛けることにする。

 ここに来て流石にブランカの動きがわずかに鈍りだしたので、最初に比べればタイミングは合わせやすい。

 俺はブランカが技を放つ瞬間を見極めて、前に飛び出した。

 ブランカはまさか自分の技にカウンターを仕掛けてくるとは思っていなかったようで、技の鋭さが明らかに鈍っている。

 それでもブランカは俺に攻撃しようと右手を振りかざしてきた。

 俺はそれ(右手)を掻い潜るように身を屈めながら左手に魔力を纏わせて、先程ブランカにダメージを与えた場所を思いっきり殴った。

 殴った瞬間に左手に纏った魔力を解放する。解放された魔力は瞬時に衝撃の波となり、ブランカの全身を駆け巡り、ダメージを何倍にも増幅させる。

 おまけに高速で迫り来るブランカにカウンターを合わせた事で、通常ではありえないくらいの威力となり、俺の拳がブランカの体にめり込んだ。

 幸い漫画のように拳が体を貫通することはなかったが、それでも拳に伝わる感触から、ブランカの右側の肋骨のほとんどを砕き、ついでに肺を潰してしまったようだ。


 ブランカは俺の拳をめり込ませたまま口から大量の血を吐き出し、そのままぐったりとしてしまった。

 審判はその様子を見るなり、俺の勝利宣告もせず治療班を呼びブランカを運ばせた。


「勝者、テンマ!」


 ブランカがタンカで運ばれたところで、ようやく審判が俺の勝ちを宣告した。

 しかし、俺はそれどころでは無く、激痛に身悶えていた。何せ、骨が砕けている左腕で殴りつけたのだ、当然である。

 いくら魔力を纏って固定しても、その衝撃まで殺せはしなかった。おまけにカウンターだったので、俺の腕にかかる負担も大きかった。

 俺は激痛に耐え、腕を魔法で治療しながら控え室の方へとヨロヨロと歩いて行った。当然の事ながら観客の声援に応えることはできなかったが、観客達は俺の姿に激闘であった事を理解したようで、逆に歓声が大きくなっていた。

 通路に入り控え室に戻る前に係員の一人が俺の様子に気づき、治療室へと連れて行かれた。

 

 治療室に入るとそこは野戦病院のような慌ただしさがあった。原因はブランカで、もっと言えば俺のせいでもある。

 ブランカの傷は俺が思っていたよりも酷く、今はなんとか死んでいないという感じの状態で、いつ容態が悪化してもおかしくないと医者が叫んでいる。


「命に別状が無いなら我慢していてくれ!」


 医者は俺の姿を横目で見るなりそう叫んだ。俺は部屋の隅の椅子に連れて行かれ、座って待っているように言われたのでそこで自分の腕の治療を開始した。

 腕を魔法で検査した結果、予想通り骨が砕けており、通常であったらもう二度と腕が動かなくなるような怪我であったが、幸い怪我したばかりの上、俺自身がこのような怪我の治療を手伝った経験があるのでなんとか治せそうである。


 まず魔法で痛覚を鈍らせて、骨を魔法で大まかに固定する。この時に骨の欠片がどうしても筋肉の中に残ってしまうのだが、それはあえて無視をする。

 次にある程度固定した骨に回復魔法をかけて本格的に固めていく。この時点で代謝が促進されて、癒着を起こしてしまう事があるので、ある程度魔法で回復させて腕を動かして癒着を剥がし、再度魔法をかけて癒着を剥がしという行程を繰り返していく。

 ほとんど骨が固まって痛みが小さくなってきたところで、今度はブランカの治療を手伝うことにした。


 最初に手伝いを申し出た時には、医者に素人はダメだと言われたが、腕の怪我を治したことや母さん(シーリア)の名前を出して見たところ、この医者も母さん(シーリア)の事を知っており、俺の腕の怪我を確かめてから手伝いをする事を許可した。


 最も、俺がする事など医者が治療している最中、ブランカに回復魔法をかけ続けて死なないようにするだけだったので、特に難しいことではなかった。

 俺が回復魔法をかけ続けるのを見た医者は、本格的にブランカの治療をおこない始めた。

 この医者は思っていた以上に腕が良いようで、聞くところによると、どうやらダンジョン都市などを巡って医者として働いていたそうだが、数日前に王家から勧誘されて王都にやってきたそうだ。

 まだ王都で開業するかは決めかねているそうだが、時間があるので武闘大会の治療室で働く事になったそうだ。


「なんとか間に合ったか……常人ならとっくに死んでいただろうが、さすがは獣人だ。生命力が強い」


 俺が手伝いに入ってからわずか20分足らずで治療を終えた医者は、ブランカの生命力の高さに感心しながら一息入れていた。


「次はお前の番だな。一応最低限の治療はしているようだが、ちゃんと治しといてやろう」


 そう言って俺の腕を掴んで揉み始めた医者。最初はかなり痛かったのだが、回復魔法などを併用しているようで、徐々に痛みは薄れてきた。

 

「まあ、こんなもんだろう。痛みは完全に無くなったはずだ。骨の欠片も大きいものは欠けていた所にはめたし、細かいものはいずれ体に吸収されるだろう……どうしても痛みが残るようなら、摘出手術をしなければならないがな」


 わずが5分程で治療は終わった。念の為、腕を色々と動かしてみても違和感はない。


「全然痛くないです。ありがとうございます!」 


 俺が医者に礼を言っていると、またも患者が運ばれてきた。

 確かこいつは俺と同じブロックのもう一つの準々決勝を戦うはずの男で、前回の優勝者が相手であり、下馬評では勝ち目が低いと言われていたはずだ。

 見た感じではブランカ程酷くはないが、全身に切り傷を負い、かなりの血を失っているようだ。


「全く、こいつもひでぇもんだ……この傷から言って、かなり嬲られたようだな」


 医者はそう呟くと、てきぱきと看護婦に指示を出していく。今回は俺の手伝いはいらない様で、俺に何も言ってこなかった。

 医者の後ろから覗き込むようにして患者を見てみると、その体には幾つもの浅い切り傷が付けられており、同じ場所を何度も切りつけているようで、傷口がぐちゃぐちゃになっていた。


「ここまでされると、流石に完全に傷を消すのは無理だな……」


 そう言いながらも、医者は治療を施していく。最終的に全身をミイラ男のように包帯でぐるぐる巻きにして、増血剤や回復薬を飲ませて治療を終えていた。


「対戦相手の男は評判通りのようだな……」


 ポツリと呟いた言葉に俺は心の中で同意した。前回の優勝者の評判とは、かなりのサディストで自分より弱い相手を嬲るのが大好きな最低野郎、というものだ。正直、これで優勝者でなかったならば、何かの罪を着せられて投獄されている、とまで言われている。


 ちなみに前回は決勝でアッシュが、準決勝でブランカが敗れていた。


「よおっ、さっきの雑魚は死んだか?」


 少し考え事をしていたら、急に治療室のドアが蹴り開けられ、一人の男が入ってきた。

 こいつが先程の男を嬲った犯人、前回優勝者のケイオス・マイセイルズ……だったと思う。


「おうおう、死にぞこないが2匹もいるねぇ……ここは墓場の一歩手前かよ!」


 自分が嬲った相手と、治療が終わり眠っているブランカを指差して笑い声を上げるケイオス。

 そんな様子のケイオスに医者が立ちはだかった。


「ここは怪我人を治す所なのでな。残念ながら頭の病気の治療はやっておらんのだよ……出て行きなさい!」


 医者とは思えないほどの迫力でケイオスを追い出そうとするが、ケイオスはこめかみをヒクつかせながらその場を動かない。


「たかが医者の分際で俺様に楯突くのか……いい度胸だな、おいっ!」


 ケイオスが医者の首元を掴もうと手を動かしたが、間一髪のところでその腕を抑えることに成功した。


「たかが医者だというが、この人は王家からの要請でこの場にいるんだぞ。馬鹿でないならその意味がわかるはずだ」


 腕を掴んだ俺を睨んでいたケイオスだが、王家と聞くなり忌々しげにしながら手を引っ込めた。


「けっ!王家を出さないとなんにも出来ないガキが……いや、お前はさっきブランカを殺しそこねた奴か……ちょうどいい、次の試合ではせいぜい自分の命が助かる事を祈るんだな!」


 捨て台詞を吐きながら、治療室から出て行くケイオス。


「何しに来たんだ、あいつは……」


 俺の呟きを聞いた医者が、その答えを知っていた。


「あいつは自分が嬲った相手の様子を見るのが好きなんだろう。2回戦が終わった後も、同じようにここに来ていたからな」


 医者の吐き捨てるような言葉に俺は納得したが、それでも分からない事があった。


「でも、あいつは絶対ブランカより弱そうなんだけどな……アッシュよりも弱そうだし……」


 俺の最大の疑問は、ブランカ程の強さを感じないので、前回の大会でブランカに勝ったというのが信じられないのだ。


「あんな奴と本気出してまで戦っても面白くなさそうだったのでな……適当なところで場外に落ちたんだよ」


 俺の問いに答えたのは、ベッドで横になっていたブランカだった。

 

「もう目が覚めたのか……流石に獣人は回復力が高いな」


 そう言いながら医者がブランカの様子を確かめる。


「不愉快な気配がして目が覚めただけだ。まだ横になってしゃべるのがやっとだ」


 医者に自分の状態を話してから、ブランカは俺を見た。

 

「せめてあいつ(ケイオス)がお前の半分位の面白さがあったら、前回の大会は俺が優勝していたんだがな……」


 そんな事をぼやいているブランカに俺はもう一つ気になっている事を聞いた。


「アッシュは前回なんで負けたんだ?俺の目には両者にほとんど差が……っていうか、若干アッシュの方が強そうに見えたんだが」


「そりゃ単純に、前回のときはケイオスの方が強かっただけの事だ。アッシュとは強さに明確な差があった。しかし、今回ではわずかとはいえ逆転されているし、この調子なら来年はアッシュとの差が確実に広がっているだろうな。今回のアッシュなら本気で戦ってみたかったんだがな……」


 ブランカは吐き捨てるように言っている。要はケイオスは鍛錬を怠り、アッシュは鍛錬を欠かさなかったということだ。そして、ブランカにとって『名誉より強者との戦い』が好物であり、さらに言えば『強者との面白い(ブランカにとって)戦い』が大好物である。しかし、『馬鹿は除く』との条件がある。その条件にケイオスは引っかかっており、本気を出したくないそうだ。


「その点お前との試合は面白かったぜぇ。何せ、何年かぶりに本気で殺しに行って、仕留めるどころか返り討ちにあったくらいだからなぁ」


 ブランカはそう言いながら、非常に嬉しそうな声で非常に凶暴そうに笑った……

 俺と医者が引き気味に距離を取った事に気づいたブランカは、慌てて顔を元に戻した。


「まあ、殺しにいったとかいうのは冗談だが、面白かったのは事実だ」


 冗談は嘘であろうが、面白かったのは本当らしい。それに雰囲気から特に生死の境を彷徨った事に関して、別段恨んでいるような様子も見られない。


 その時、闘技場の方から大きな歓声が上がった。どうやら山賊王の試合が始まったようだ。


「それじゃ俺は戻るからな」


 山賊王の試合はチェックしておかないといけないので、俺は治療室のドアへと向かった。


「おう!頑張れよ!」


 後ろから聞こえるブランカの声に、俺は軽く手を上げながら答えてドアから飛び出すと、そのまま試合が見える所まで走っていった。


 かなり急いだのだが、試合はほとんど終わりかけであった。山賊王の相手は今回の大会では数少ない純粋な魔法使い(本選では唯一)で、そこそこ有名な冒険者だそうだ。

 しかし、山賊王は魔法を食らう前に攻撃を当てたようで、相手は満身創痍の状態であった。


「げほっ!」


 そうこうしている内に、山賊王の石突での突きが相手の腹部に当たり、相手は場外へと飛ばされた。

 勝負ありという感じで、相手に背を向けて闘技台の中央部へと歩き出す山賊王。

 だが、勝負が完全に決まったわけではなかった。勝敗は決まっているが、相手の魔法攻撃が放たれていたのだ。


 相手の魔法使いは満身創痍の状態で魔法を放とうとしていたようで、その魔法が山賊王によって場外へと飛ばされた時に完成したのだ。

 魔法自体はファイヤーボールの威力を高めたやつだったのだが、油断していた山賊王はその攻撃が背中にかすってしまった。


 少し大げさな感じに転ける山賊王。幸い山賊王が装備している虎の毛皮は魔法耐性があったらしく、毛皮に火が燃え移る事は無かったが、山賊王は少し恥ずかしそうに控え室に戻っていった。

 その後審判達が集まって協議したが、今の魔法攻撃は攻撃を受けたはずみで発動したとみなされて罰則行為には当たらないとの判断が下された。


 次はジンの試合であったが、相手はジンよりだいぶ格下のようで、ここまで来れた事に満足している様であったので、どうせジンが勝つだろうと思い、控え室に戻ることにした。なお、勝敗は予想通りジンの圧勝だった。 


 控え室に戻る途中で、にやけた顔のケイオスと出会ってしまった。どうやら待ち構えていたようだ。


「なあそこのガキ。お前次の試合は棄権しろよ。どうせ腕がまだ痛いんだろ?」


 ケイオスは何かふざけた事を言い出したので、無視をして横を通り過ぎようとすると、正面に回り込んできた。


「無視するんじゃねえよ。俺は親切で言っているだけだぜ。何せ、流石にガキを殺したりなんかすると、いかにオレ様と言えども、1日くらいは後悔してしまうからな!」


 勝手に一人で盛り上がり大笑いをしているケイオス。俺は、またか……、と思いながらケイオスの横を通り抜けようとした。


「まだ返事を聞いてねぇだろうが!」


 ケイオスが急に怒鳴り声を上げて俺の方を掴もうとしていたので、半身をずらしてケイオスの手から逃れた。

 ケイオスが空振った隙に距離を取って対面すると、俺の態度が気に食わないケイオスは額に青筋を立てながらも、なんとか飛びかかってくるのは自制したようだ。


「クソガキがなめやがって……この大会が終わったら覚えていろよ!俺はこの大会が終われば貴族になるんだ!その時は貴様の……そうだな、確かお前の取り巻きは女だらけだったな……なら、その女達をお前の目の前で犯してやるよ!楽しみにしてるんだな!」


 ケイオスは嗤い声を上げて、一人愉悦に浸っている。正直この場でケイオスを切り捨てても、俺が殺ったという証拠を残す事なく始末する自信があった。実際、観客の歓声が聞こえて冷静にならなければ、行動を起こしていたであろう。それくらいこの男(ケイオス)の言葉に怒りをおぼえていた。


 ケイオスは俺の殺気に気づいてはおらず、いまだに嗤っていた。

 その時、ちょうど試合を終えたジンが通りかかり、すぐに俺の殺気に気がついた。


「おいおいおいっ!テンマ落ち着けって!何があったか知ら……とにかく落ち着け!」


 俺を止める途中でケイオスを見て、ケイオスが馬鹿な事した(言った)と察したジンは、俺の腕を掴んで控え室へと引張っていった。

 俺も抵抗することなくジンについて行ったので、ケイオスは俺がこの場から助けをもらって逃げ出したと勘違いしたのか、再度嗤い声を上げていた。


「お迎えが来てくれてよかったでちゅね~!でも試合では助けてなんてもらえまちぇんよ~!」


 その気持ち悪い言葉遣いに俺の怒りが少し冷めた。その隙にジンは、俺を引っ張っていく速度を速めて控え室を目指していた。

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