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第5章-5 情報の大切さ……

 テンマの元に我先に駆け寄ってきた貴族達を一喝した人物とは……


「「「「サンガ公爵様!?」」」」


 上位貴族にして、この国の有数の大貴族である『サンガ公爵』であった。

 さすがに駆け寄ってきた貴族達は、俺と共に公爵が歩いているなどとは思いもよらなかったようで、全員が顔を引きつらせていた。


「そなた達は礼儀というものを知らぬようだな……仮にも公爵であるこの私に詰めかけるとは……」


 それは完全に間違いではあるが、状況的にはそう取られても仕方がない。


「私が公的な事でこの場にいたのならば、先程のそなたらの行動は問答無用で切り捨てられてもおかしくないものであるぞ!」


 さらに声を荒げるサンガ公爵。しかし、俺にはこれが『公爵による芝居』であり、これこそが係員の言っていた『対策』であると聞いていたので驚くような事はせずに、寧ろ冷ややかな目で公爵に怒られている貴族達を見ていた。


「ご、誤解なのです、公爵様。私はそちらの……」 


「ほう……そなたは、誤解で公爵に仇なすのか……いい度胸をしているな」


 何を言っても聞きはしないという感じの公爵は、さらに冷たく重く響くような低い声で貴族達に視線を向ける。

 貴族達は公爵のその態度を見て、地面に跪き命乞いをするように許しを乞うていた。


「お父様、もうその辺でよろしいではありませんか……人間誰しも間違いはするのです。それを許すのも目上の者の役目かと……それとお父様の態度に、テンマさんも困惑しているようですし……」


 と公爵を宥めるように口を開いたのはいつもの鎧姿ではなく、青いドレスに身を包んだプリメラであった……言ったセリフが少し棒読みではあったが、必死に許しを乞うている貴族達にはそれに気づく余裕など存在しなかった。


「むぅ……確かにその通りではあるな……そなた達、今回は特別に目を瞑ってやろう……ただし、次があるとは思わない事だ!」


 貴族達は自分の命が助かった事に安堵の表情を浮かべている。

 サンガ公爵は俺に目配せをし、脱力している貴族達を無視してその場から歩き出した。


「俺が原因とは言え……サンガ公爵様も人が悪いですね」


「人が悪いのは当然だよ。何せ私は貴族だからね。それにあの者達には良い勉強になっただろうね……情報収集がいかに大切か、という事の……ところで……」


 公爵は一度視線をプリメラに移した。プリメラは何故か緊張しているようで、公爵の視線には気づいていない。

 俺は公爵に対して軽く頷くと、プリメラの前に移動して挨拶をした。


「お初にお目にかかります、お嬢様。私は過分にもサンガ公爵様に良くしていただいている、冒険者のテンマと申します。以後お見知りおきを……」


 俺は少し気障ったらしくプリメラの前に跪き、手を取って挨拶をした……さすがに手に口づけはしなかったが……


 そんな俺の行動に、プリメラは目を白黒させている。俺が手を取った時に、「ひゃい!」と変な声を上げていたが、そこに突っ込むような真似はしなかった。


「テ、テンマさん!何の冗談ですか!恥ずかしいのでやめてください!」


 顔を真っ赤にして手を振り払い、プリメラは二、三歩後退りをした。どうやら緊張はほぐれたようだが、その代わりに少し怒っているようだ。


「いや、だって初めて会うだろ……お嬢様の格好をしたプリメラとは……だから貴族風(・・・)の挨拶をしてみたんだが……」


 これまで俺は何度もプリメラとは顔を合わせているが、これまでのプリメラはいつも鎧姿なので、『騎士団のプリメラ』といった印象だったのだが、今回は見たことの無いドレス姿であり、『公爵家のプリメラお嬢様』という激レアな出で立ちを見て、俺の悪戯心に少し火が着いてしまった……公爵の後押しもあったからな!

 そんな共犯者の公爵は、プリメラの見えない位置で声を出さずに笑っている。


「確かに私にはこんなドレスは似合いませんけれども……からかわなくてもいいではありませんか……」


 プリメラは、ドレスが自分には似合っていないからからかわれた、と勘違いしているようだが、実際にはかなり似合っていた。

 元々プリメラは、公爵家の娘として貴族の中でもかなり質のいい教育を受けており、生まれつき整った顔立ちをしている。さらに自身が騎士団に所属している関係上、訓練により体は引き締まっており、尚且つプリメラの性格上、健康管理にも気を使っているので肌や髪の状態も非常に良い。

 よって、プリメラに評価を下すとしたら、間違いなく『美人』という事になるだろう……ただし、その中に性格等は含まれていない。


 余談ではあるが、プリメラの友人であるリーナに聞いた話だと、特に気を使っていなくても周りから綺麗だと言われる(プリメラ自身はお世辞だと思っていた)事に、一部の女子がかなり嫉妬していたそうだ。


 俺がプリメラの誤解を解こうとすると、公爵が間に入ってきた。


「プリメラ。テンマ君は決してからかっているのではないぞ!私にはわかる。何せ、先程のテンマ君の行動は、私がお前の母を口説いた時のものとほとんど一緒だからだ!無論、テンマ君は口説いたわけではないが、男とは美しい女性を見た時には、そのような行動を取ることがある生き物なのだ!」


 と、自身の体験談を交えて語りだした公爵……そして、横目で俺に同意を求めている。

 さすがにここで、『そんなつもりは毛頭なく、ただからかっただけ』などと言える訳もなく、俺は曖昧に頷いた。


「そ、そうなのですか……」


 プリメラはそう呟き、先ほどとは違った感じで頬を染めている。

 このまま変な空気の中でいるのは耐えられなかったので、俺は公爵に気になっていた事を聞いてみた。


「公爵様達が俺を迎えに来たのって、王様が考えたことですよね」


「ああ、そうだよ……よくわかったね」


 あっさりと認めた公爵。しかし、それだと新たな疑問が浮上する。それは……


「でも、それだと王様かライル様、もしくは大公様あたりが来たがりませんでしたか?」


 あの三人の性格上、あのような(三人にとって)面白そうな事を見逃すはずはない。そう思い尋ねると、公爵は苦笑いを浮かべた。


「まるで見て来たように言うね……その通りだよ。最初は陛下自身が行こうとしたらしいが、さすがにこの国の王が迎えに行くのはまずい、と少々強引にライル様と大公様が陛下を説得したんだが……王妃様に企みがバレてしまい、急遽面識のあった私とプリメラが行く事になったんだ……陛下とライル様と大公様は、三人揃って王妃様に折檻されたみたいだったね」


 急遽呼ばれた公爵とプリメラは、主にプリメラの着替えの為に少し時間がかかったようだ。


「まあ、これは私からのお礼だとでも思っていてくれ」 


「お礼ですか?」 


 公爵が言うには、どうやら俺の試合で賭けをしていたらしく、かなりの配当が出たらしい。

 本戦出場者を当てる賭けの俺のオッズは最初はおよそ30倍。これは俺の組では最低人気であったのだが、その後直ぐに3倍まで下がったらしく、最終的には組の中で一番人気になっていたそうだ。

 原因はサンガ公爵にサモンス侯爵、そして俺の知り合い達に俺自身だ。

 この大会において、王族は賭けに参加しないのが暗黙の了解となっているそうなので、この倍率に留まったそうだ。


 後で聞いた話によると、公爵・侯爵・俺が100万G、じいちゃんが50万Gと大口で賭けた事が判明した。ちなみに、選手自身が自分を対象にして賭けに参加するのは許可されているが、八百長に関わった場合は基本的に(・・・・)奴隷堕ちと決まっているそうだ。


 その後はトラブルも無く、無事に屋敷に帰り着く事が出来た。



 翌日、今日も闘技場でペアの予選があるのだが、特に興味がある訳でも知り合いが出ている訳でも無いので、今日は明日のチーム戦での連携の確認を中庭に結界を張って軽く行うくらいだ。

 連携の確認と言っても、ナミタロウが加わってどのような感じになるのか、と言うものだったのだが、結論から言うと大した事は出来なかった。

 何せ、ナミタロウが悪乗りする、シロウマルは釣られてふざける、ソロモンも一緒になってはしゃぐ、スラリンが怒る、とループしてしまい、最終的には『臨機応変に戦う』、という名の作戦に決まった。


 なので、早々に切り上げて屋敷でのんびりとする事にした。

 今日の屋敷の中は非常に静かでのんびりするのにはちょうど良かった。

 何せ、三人娘とプリメラとクリスさんのチームは連携確認のため屋敷に来ておらず、その様子見ついでに

ジャンヌとアウラはアイナに連れて行かれしごかれており、じいちゃんはアーネスト様に呼ばれて、嫌々ながらに出向いてから今だに帰ってきていない。


 こういった日はのんびりと散歩するのもいいかもしれないが、王都は祭りのまっ最中で賑やかすぎであるし、先程から屋敷の前を特定の人々(・・・・・)がわざとらしく通り過ぎている。

 

 その通り過ぎている人々とは大きく分けて三種類。

 一つ目は昨日の戦いを見て、俺に好意的な興味を持って屋敷をさりげなく覗いている一般人。

 二つ目はあわよくば俺と面識を持とうとする人物。これには貴族やその使いも含まれている。

 そして、問題なのが三つ目の敵対心を持っている人物達だ。その中には、貴族の使いらしき者や冒険者、一般人に裏稼業の者と思われる奴までいた。


 恐らくだが、冒険者や一般人の殆どは賭けで損をした奴が、通りすがりに俺の住処を知り睨んでいるだけだと思うが、貴族の使いや裏稼業の奴は恐らく改革派と繋がりがあると思われる……と言うか、それしか思いつかない。


 鑑定をして何人かの人物はメモを取っておいて、後でじいちゃんと相談するとしよう。

 この屋敷には、いたる所に防犯の仕掛けをしているのでそう簡単に手を出してこないと思うが、念の為にゴーレムの配置を増やしておこう。


 配置は外には窓やドア付近や屋敷の裏手に集中させておき、屋敷内ではジャンヌやアウラの部屋や客室などに配置を増やした。


 正直言ってやりすぎの感がある。何せ、増やしたゴーレムだけでも100体程であり、以前の物を含めると、およそ150体程になってしまう。それに魔法や魔道具の防犯設備が加わるので、仮に千人規模の騎士団が攻めてきたとしても、そう簡単に落とすことはできないだろう。


 防犯の強化が終わるとそのまま寝てしまった。そして、帰ってきたじいちゃんに速攻で防犯強化がバレて呆れられてしまった。


「テンマよ……お前は何と戦うつもりなんじゃ?これでは屋敷ではなくて、屋敷に偽装した要塞では無いか……」


 やりすぎてしまった感はあるが、これっぽっちも反省はしていない!

 なお、後日遊びに来た王様達もじいちゃんの感想と全く同じ事を言っていた。

 ちなみにだが、ジャンヌとアウラは屋敷の要塞化に全く気づいてはいなかった。



 さらに翌日、大会はチーム戦の予選が行われる。

 今大会の参加チームは136チームであり、歴代3位の参加数だそうだ。それらを16に分けて予選は行われる。

 しかし、流石に全部の予選を闘技場のみで行うことはできないので、朝一で闘技場に集められてから組分けの抽選を行い、その後で王都のいたる所に設けられた臨時の予選会場で戦う事になった。


 このチーム戦で俺の知り合いの参加は、三人娘やプリメラの臨時チーム『グンジョーの華』、ジン率いる『暁の剣』、サモンス侯爵の眷属であるガリバーが主軸の『鬼兵隊』、セイゲンのテイマーズギルドが作った『セイゲンテイマーズA』・『セイゲンテイマーズB』・『セイゲンテイマーズC』、である。


 そして、知り合いのチームはご都合主義のように全て組がバラけた……ら良かったのだが、運の悪い事に、俺と『セイゲンテイマーズB』が、『グンジョーの華』と『鬼兵隊』が、『暁の剣』と『テイマーズギルドC』がそれぞれ同じ組となってしまった。


 テイマーズギルドは、Aがアグリと眷属のグラップラーエイプが3体、Bがライトと眷属のハードリンクス2頭とテッドと眷属のサンダーバード、Cがサカラート兄弟と眷属のフレイムタイガーとマウンテンタートルとなっている。


 この組分けが決まった時のライトとテッドは、かなり落ち込んでいたそうだ。


「「終わった……」」


 そう二人が声を揃えていたと、予選の後でアグリが教えてくれた。


 俺の組は8チームで、会場は王都の外側にある空き地が舞台だった。会場までは昼までに各自で行かなければならないらしく、代わりに会場までのシャトルバスならぬ、『シャトル馬車』を参加選手は優先的に使っていいらしく、俺はテッドとライトと共に馬車に乗った。


「同じ組にテンマがいるなんて、俺達運がないなライト……」

「そうだな……だが仕方がない。俺達の真の目的はテイマーズギルドの認知度を上げる事だ!」

「それもそうだな。寧ろ、テンマがいるから心置きなく負けれるしな!」

「情けないけどな……」


 そんな二人の後ろ向きな発言を聞きながら、俺達の乗る馬車は会場に向かっていった。


 臨時会場はそれほど広くはないが、観客はかなりの数が入っていた。

 その事を不思議に思っていると、係員の一人がこそっと話しかけてきた。


「不思議そうにしていますけど、原因はテンマ選手ですからね」


 との言葉に首をかしげていると、さらに詳しく教えてくれた。係員によると、どうやら俺は『注目選手の一人』として見られているそうで、そんな俺がチーム戦にも参加すると聞いて、俺と組むメンバーはどんな奴らなのかと気になって見に来た客が多いそうだ。

 係員はそう教えてくれると仕事に戻っていった。

 会場には三種の控え室替わりのテントが建てられており、参加チームに一つずつあるようだ。


 テントの周りには、すでにやってきている参加チームが各々準備運動などを行っている。

 観客はその様子を見てどのチームに賭けるのか参考にしているようだ。簡単に言えば競馬のパドックの役目をしているのだろう。

 ただし、これらは係員から言われてやっているのではないので、中にはただ単に自己アピールを行っているだけの目立ちたがり屋なチームも存在している。


 とりあえず先程から観客の視線が俺に集まってきているので、俺のメンバーを一部(・・)紹介する事にした。


「スラリン、シロウマル。出てきていいぞ」


 俺の言葉を聞いて、待ってました!とばかりにシロウマルがバッグより飛び出した。

 事前にシロウマルの首輪は外してあるので、シロウマルの体長は3m程である。

 シロウマルがバッグから飛び出した瞬間、観客席からは大きな歓声や悲鳴が上がった。

 歓声は俺がテイマーだと知っている人々からで、これはチームを登録した時に書いていたのでパンフレットに載っている。

 悲鳴はパンフレットを読んでいない人達からで、突然出てきた魔物を見てパニックを起こしたようだ。


 しかし、悲鳴もすぐに止み、すぐさまシロウマルを称えるような歓声へと変わっていた。

 だが、次の瞬間には大きな歓声がピタリと止んでしまう。原因はスラリンだ。

 なにせ、一般的に見ると(・・・・・・・)スライムとは最弱の魔物と言われる内の一つである。

 そんなスライムが、狼系の魔物の最上位種と言われるフェンリル(シロウマル)の後に出てきたので、シロウマルの登場で観客の急激に上がりテンションと、次は何が飛び出してくるんだ!という期待を裏切る形で最弱の魔物(スライム)が出てきたので、観客のテンションが一気に下がってしまったのだ。

 そして、スラリンの登場は観客のみならず、俺達の一回戦の相手の時も止めてしまった。

 

 俺達の対戦チームは、全員が見るからに『脳筋』といった感じで、5人全員がはち切れんばかりの筋肉を持ち、それぞれ大剣、ハンマー、大斧、棍棒、大盾を装備している。

 そして、対戦相手達は我に返ると、スラリンを指差して笑いだした。どうやらスライムを参加させる事がよほどおかしく思えるらしい。


 そんな相手の態度に俺は腹を立てたが、俺よりも腹を立てていたのはシロウマルだった。

 意外に思っていると、シロウマルは相手に対して唸り声を上げて威嚇を始めた。

 これはまずいかな、と思っているとスラリンがシロウマルの前に立ち塞がり、何度か小刻みに体を震わせて何かを伝えている。

 それを見ていたシロウマルは、ギロリと対戦相手達をひと睨みしてから引き下がった。

 どうやらスラリンはシロウマルが飛びかかりそうなのを見て説得したらしい……どのように説得したのかは不明ではあるのだが……


 その後スラリンは何事もなかったかのようにシロウマルを引き連れて、俺達に用意されたテントへと戻って行った。

 

「なあテンマ……スラリンって本当にスライムか?」 


 様子を伺っていたテッドが、俺も疑問に思っていた事を聞いてくる。

 テッドやライトはいつもと同じ様子だったが、俺達の対戦相手やほとんどの観客達はシロウマルの唸り声と、本気で威嚇をする姿を見て怯えたようで、大声を出さずに静かにしている。


「あ~あ、テンマの対戦相手も可哀想に……シロウマルの怒りを買ってしまった以上、悲惨な戦いになりそうだな……」


 ライトは俺達の対戦相手に向かって同情しながら両手を合わせて合掌していた。

 ライトが合掌している最中に、係員より予選開始時刻が近づいているとの知らせが入り、参加者達はいそいそとテントに戻り準備を開始した。


 一回戦第一試合はテッドとライトのチームと、駆け出しの冒険者チームの対戦だった。

 戦いは終始テッド達のペースで行われた。まずライトとテッドの眷属であるハードリンクスとサンダーバードが冒険者達の背後と上空を抑え、ライトが正面に立ちふさがった。

 テッドはライトの後方より支援をする形で魔法の準備をしている。

 冒険者達がライトに攻撃を仕掛けようとすると、背後のハードリンクスが動き回りライトに向かわせないようにする。

 ならばと背後のハードリンクスに対処しようとすれば、今度はライトとテッドにより隙を突かれそうになる。

 そういったライトとテッド達の連携により、最初の頃は冒険者達は一固まりになって対処していたが、しびれを切らした冒険者の一人が飛び出してハードリンクスに向かっていった。

 しかし、これは最悪の一手であった。冒険者がハードリンクス目掛けて剣を振りかざした時、急に冒険者は空中に連れ去られた。

 サンダーバードの仕業である。先程からこのサンダーバードは、冒険者達に対してろくに牽制もせずに静観していた。

 それは今のように冒険者が飛び出すのを待っていたのであろう。飛び出した冒険者はサンダーバードの太く鋭い爪に掴まれて空を飛んでいる。

 掴まれた冒険者は、なんとかサンダーバードに攻撃を加えようとしているが、掴まれているのは武器を持っていた右手であり、ろくに剣を動かすことができない。

 

 冒険者達も空へと連れ去られた仲間を気にしていたが、ライトとテッドが向かってきていたので助けに動く事ができずにいた。

 ライトが冒険者達に斬りかかる瞬間、冒険者達の頭上から仲間の一人が落ちてきた(・・・・・)

 冒険者はそれほど高い位置から落とされたわけではないので、それほど悲惨な事にはならなかったが、鎧に身を包んだ男が落ちてきた仲間の方はかなりのダメージを食らう事になってしまった。


 仲間が落ちてきた瞬間に、テッドの風魔法、ライトの斬撃、ハードリンクス達の体当たりが襲い掛かり、一気に形勢が傾いてしまった。

 そしてそのまま押し切られる形での決着となった。時間はそれなりにかかったが、結果だけ見ると『セイゲンテイマーズB』の圧勝である。何せ、対戦相手の冒険者達はろくに攻撃をすることができなかったので、ライト達は傷一つ負うことがなかったのだ。


 その結果に会場は大きく盛り上がり、ライト達を褒め讃えた。

 相手の冒険者達も落とされた男が足を骨折したくらいで、他に大きな怪我もなく立ち上がり自分達のテントへと戻っていった。


 会場が盛り上がっている中、すぐに俺達が呼ばれた。

 俺のチームからこの試合に参加するのは、俺とシロウマルとスラリンのみで、ソロモンとナミタロウはお休みだ。

 ソロモンを予選で出すのは少しもったいない気がするし、まだ祭りが続くので今から出したら祭りを楽しむところではなくなるためだ。ナミタロウに関しては……


『流石にわいまで出したら過剰戦力すぎやで』


 と言われたので一回戦の参加を見合わせたのだ。

 対戦相手の冒険者を見る限り、ナミタロウの発言は正しいと感じた。何せ、いかにも『冒険者をやっています』といった装備で身を固めており、その装備には大きな傷などが付いており、いかにも使い込んだ装備(・・・・・・・)に見えるが、俺から言わせれば、傷ついた装備を修復もしないで使い続ける意味がわからない。

 細かい傷はともかくとしても、大きな傷に関しては修復をしないと危なっかしくて、自分の命を預けることなんか出来ないと思うのだが、対戦相手達はその事に気が付いていないようだ。


 対戦相手達はそんな俺の視線には気づいていないようで、観客達へのアピールに力を注いでいる。どうやら金星を狙っているようだ。

 個人の予選で俺の強さを知っているようだが、数で押せばなんとかなるくらいに考えているようで、問題はシロウマルと思っているみたいである。

 先程からチラチラとシロウマルを見ている……スラリンは完全に無視しており、一瞥すらしない。


 そんな中、審判が俺達の間に立ち、簡単なルールの説明をしている。

 ルールは個人戦のものから場外負けを除いたようなもので、今更気にかけるようなものではない。


「では、試合開始っ!」


 宣言と共に審判は十分な距離を取る。それと同時に対戦相手が一斉にシロウマル相手に迫ってきた。

 俺とシロウマルが迎撃をしようと身構えると、その前にスラリンが立ち塞がった。


「一人でやるのかスラリン?」


 俺の言葉にスラリンは頷き?俺とシロウマルは大きく後ろに飛んだ。スラリンの邪魔をしないためだ。

 しかし、観客達や対戦相手は開始早々の強襲に驚き、スライムを囮にして距離を取ったように見えたようだ。


 対戦相手達はうすら笑いを浮かべながらスラリンに攻撃を仕掛けようとしている。

 対戦相手達が武器を振り上げた瞬間、スラリンの体に驚きの変化が起こった。


 その変化は観客に対戦相手はもとより、俺も驚く程のものであった。

シロウマルの順位付けでは、

テンマ≧マーリン=スラリン≧アイナ>自分シロウマル=ジャンヌ=ナミタロウ≧アウラ≧ソロモン

となっています。

スラリンは子供の時からの刷り込みと、テンマがいない時に自分達にご飯を食べさせてくれるのと、怒ったら怖い(シロウマル、ソロモン的に)ので自分より上、アイナは怒ったら怖いのと、やはり自分達にご飯を作ってくれるので上。

ジャンヌとアウラは同僚感覚で基本的に同格ではあるが、アウラはアイナによく怒られたり、ジャンヌとアウラが元主従関係なのをなんとなく理解しているので、自分より若干下。

ソロモンは最年少で自分の弟分なので一番下。


これ以外の人々は基本的にテンマ以下自分以上、もしくは同等、と考えており、主にテンマの接し方で細かく判断しています。


他にも、子供の時に会った王様のメンバーでは、

王様>クライフ≧クリス≧その他(ジャン、エドガー、シグルド)

となっており、王様とクライフはリカルド達の接し方から上位であり、クライフは王様に頭を下げたりしていたので王様の下だと判断し、クリスがジャン達より少し高いのは遊んでもらったからです。

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― 新着の感想 ―
[一言]  マンガから来たが、王都編がつまらな過ぎて辛い・・・ そもそも描写からして書いてる人は決して政に明るいでも無ければそう云った文化が好きでもないのにやたらと長いのは何故・・・? (どうでも良…
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